【獣医師監修】犬の甲状腺機能低下症とは?早期発見するには定期的な健康診断を
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが減少することで発症する病気です。中〜高齢の犬に多く見られ、一度発症すると生涯に渡り薬を飲み続けなければなりません。 初期症状が分かりにくく、老化かと見過ごされがちな甲状腺機能低下症ですが、決して珍しい病気ではないので高齢期を迎える犬の飼い主さんは、普段から注意して愛犬の体調を観察しましょう。
今回は、犬の甲状腺機能低下症の原因や症状、治療法や予防法を解説します。
犬の甲状腺機能低下症という病気について
甲状腺ホルモンの分泌の減少によって引き起こされる病気が、甲状腺機能低下症です。 甲状腺は身体の代謝を活発にする役割を担うホルモンなので、甲状腺機能低下症になると、元気がなくなる、顔つきがぼんやりとする(悲しそうな表情になる)、寒がりになる、毛づやが悪くなる、脱毛、肥満などのさまざまな症状が見られます。
甲状腺機能低下症の特徴1. 初期症状
甲状腺機能低下症の初期段階では、以前に比べて疲れやすくなったり、皮膚が黒ずんだり(色素沈着)、毛が薄くなるまたは脱毛するなどの身体的変化が起こります。しかし、これらの症状を飼い主さんは単なる老年性変化と考えてしまうことも少なくありません。そのため、病気が見落とされたり、気付かないうちに悪化してしまうことがあります。
甲状腺機能低下症の特徴2. 他の犬や人間にうつる?
甲状腺機能低下症はホルモンの異常によって発症する病気であり、感染症ではないので他の犬や人間にうつる心配はありません。
犬の甲状腺機能低下症の原因は?
犬の甲状腺機能低下症の原因には、次のようなものがあります。
甲状腺自体の異常
甲状腺機能低下症の原因の95%以上は、甲状腺そのものに異常があることで甲状腺ホルモンの分泌が減少するものとされています。甲状腺の異常には、自己免疫疾患が疑われる「リンパ球性甲状腺炎」や、原因不明の「特発性甲状腺萎縮」があります。
他の病気により引き起こされる
甲状腺腫瘍や下垂体腫瘍、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)など、他の病気から二次的に甲状腺機能低下症を発症することもあります。
かかりやすい犬種や年齢
甲状腺機能低下症は中型犬から大型犬で多く、コッカースパニエル、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ボクサー、シェットランド・シープドッグなどが発症しやすい犬種と言われています。中年齢〜高齢の犬が発症しやすい病気です。
犬の甲状腺機能低下症の治療方法
体内で不足している甲状腺ホルモンを補うため、人工の甲状腺ホルモン製剤を投与します。基本的には、生涯にわたり投薬を続ける必要があります。治療の効果が得られれば、だんだんと元気が回復する、適正体重に戻るなどの変化が見られます。脱毛や皮膚炎などが見られている場合、発毛するまでに少し時間がかかります。
副腎皮質機亢進症など、ほかの基礎疾患があり甲状腺機能低下症になっている場合にはその治療も行う必要があります。
治療にかかる費用
治療を受ける病院によって異なりますが、甲状腺機能低下症を確定診断するためには、院内で行う一般的な血液検査や、院内または外部検査機関に依頼して行う「甲状腺ホルモン濃度測定」などに1.5〜2万円くらいかかります。その後、投薬しながら定期的なスクリーニング検査を継続していきます。
途中で体重の大きな変化や、血中の甲状腺ホルモンの数値が高すぎたり低かったりした場合は、それを調整するために通院頻度が増える可能性もあります。
犬の甲状腺機能低下症は予防できる?
犬の甲状腺機能低下症は予防が困難な病気であり、更に初期の段階では気付かれないことも多く、知らぬ間に病気が進行してしまう場合があります。そのため、早期発見・早期治療が重要になります。 中年齢~高齢になったら、定期的な健康診断で甲状腺ホルモン濃度を測定すると良いでしょう。
再発する可能性
体内で不足しているホルモンを補うための投薬治療を行うので、投薬を中断すると甲状腺機能低下症に戻ってしまいます。獣医師の指示に従い、治療を続けることが大切です。
定期的な健康診断で早期発見に努めましょう
甲状腺機能低下症は、症状だけでは発見しにくい病気と言えます。中年齢〜高齢になったら、定期的な健康診断で病気の早期発見に努めましょう。もちろん、元気がなく動きたがらない、食餌の給与量は変えていないのに太るなど、いつもと違う様子が見られる場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!