ジャーマン・ピンシャーはどんな犬種?ピンシャーの歴史から飼い方・性格の特徴
ピンシャーと聞くと真っ先に思い浮かべるのがミニチュア・ピンシャーではないでしょうか。ミニピンの愛称で親しまれ日本でも人気の高いミニチュア・ピンシャーは、小型ながら活発で気の強さが特徴の犬種です。そんなミニチュアピンシャーのルーツとなっている犬種がジャーマン・ピンシャーです。今回は、日本ではあまり知られていないジャーマンピンシャーのルーツ、外見や性格の特徴からかかりやすい病気までを詳しく解説します。
目次
ジャーマン・ピンシャー誕生の歴史
南ドイツで誕生したジャーマン・ピンシャーは、ドイツに古くから農場の番犬として活躍していた犬種を祖先に持つとされています。1885年にドイツの犬種クラブにスムースコートピンシャーとして登録された歴史ある犬種です。ドイツでは古くからネズミ捕りの犬として活躍していたラットピンシャーが基礎犬となり、19世紀に誕生した犬種がジャーマン・ピンシャーです。
分類される犬種グループ
ジャーマン・ピンシャーは、農場でネズミ捕りや番犬として誕生した犬種のため、JKCでは使役犬グループ、AKCではワーキンググループに属している犬種です。
活躍の歴史
ドイツの農場では、古くからネズミをはじめとした害獣駆除に中型サイズの犬が活躍していました。1780年代に描かれた農場の害獣駆除をする犬の絵にはジャーマン・ピンシャーによく似た犬が登場していることから、この当時から農場でネズミ捕りやネズミ番の作業をしていた犬がジャーマン・ピンシャーの祖先犬だとされています。
名前のルーツ
古代よりドイツでは、ネズミ捕りの犬を「ジャンプしてネズミを激しく噛む」といった犬の動き方を指すドイツ語からピンシャーと名付けていました。ドイツ語のピンシャーは、英語では挟むことを意味する「ピンチ、ピンチャー」と同じ意味となります。
ピンシャー種のルーツ
初代のジャーマン・ピンシャーには、スムースコートとワイヤーヘアードの2タイプがありましたが、1900年代の初めにスムースコートはジャーマン・ピンシャー、ワイヤーヘアードはシュナウザーに正式に改名され、別の犬種となり現在に至っています。
絶滅の危機に瀕したことも
ドイツでは農場で働く犬として活躍していたジャーマン・ピンシャーですが、第一次世界大戦そして第二次世界大戦と戦争が始まると、スタンダードとされていたジャーマン・ピンシャーは姿を消し、絶滅の危機に瀕したのです。大戦後、一人のドイツ人によって、犬種としてのジャーマン・ピンシャーの復活が図られました。
現在のジャーマン・ピンシャーは2頭の犬から誕生
この時に繁殖犬として用いられたのが、東ドイツにいた大きなミニチュアピンシャーとスタンダードに近いピンシャーで、現在のジャーマン・ピンシャーはこの2頭の犬が祖先とされています。1970年代後半にアメリカに渡ったジャーマン・ピンシャーは、熱心なブリーダーによって繁殖が行われ、AKCには2003年に犬種として登録されています。
ジャーマン・ピンシャーの性格の特徴
賢く忍耐強い性質が特徴のジャーマン・ピンシャー。家族に対しても優しく接することがある愛情深い犬種ですが、小さな子供がいる家庭には向かないとされています。また、狩猟本能が強くネズミなどのげっ歯類には敏感に反応することがあるため注意が必要です。
ジャーマン・ピンシャーにはこんなしつけが必要
賢く、学習能力が高い上に運動能力に優れたジャーマン・ピンシャーは、しっかりとしたしつけが必要です。犬を初めて迎える人や犬を甘やかしてしまう人には向かない犬種としても知られています。また、同じことの繰り返しに飽きてしまう性質であることから、しつけには工夫が必要です。
しつけのコツ・注意点①
頭が良く独立心が強いため、子犬期からの社会化が重要で、一貫したトレーニングが必要となります。生後12週齢からの社会化が大切で、この月齢から家族はもちろん、見知らぬ人に慣れる訓練を開始することがポイントです。社会化訓練をされていないジャーマン・ピンシャーは攻撃的になる可能性があるため注意が必要です。
しつけのコツ・注意点②
ジャーマン・ピンシャーは、室内でじっとしていることや留守番が苦手な犬種です。1日2回の十分な運動はもちろん、好奇心を満たすゲームなどを行うことも大切です。また、作業犬であったジャーマン・ピンシャーは、何か仕事を与えられることでストレスを発散することができます。特に、飼い主と一緒にスポーツや作業をすることがジャーマン・ピンシャーにとっては大切となります。ジャーマン・ピンシャーにとって、刺激のない生活は退屈であるばかりではなく、攻撃性などの問題行動の原因となってしまうため注意が必要です。
- 元気いっぱいで運動能力が高い
- 賢く警戒心が強い
ピンシャーの性格①元気いっぱいで運動能力が高い
ジャーマン・ピンシャーは、エネルギー溢れる犬種で運動能力が高いことで知られています。万能犬種との呼び声も高く、一緒にドッグスポーツを楽しみたい、競技会に挑戦してみたいなど、ジャーマンピイシャーと一緒にスポーツなどを楽しみたい飼い主の期待に応えてくれます。ただし、毎日の十分な運動を必要で、運動不足のストレスから破壊活動に出ることがあるため注意が必要です。
ピンシャーの性格②賢く警戒心が強い
知能が高く、好奇心が旺盛なジャーマン・ピンシャーは、訓練が入りやすいことも特徴です。ただし、賢いがために、しっかりとした信頼関係が築かれていないと、人を見下してしまうこともあり攻撃的になることがあります。特に、小さな子供には威圧的な態度をとる可能性があります。また、ネズミ狩りの犬、番犬として作出されたことから、見知らぬ人や小動物に対して本能的に威嚇、攻撃をすることがあります。また、洋服を噛みちぎったり、おもちゃを破壊するなどのいたずらが好きなことでも知られています。
ジャーマン・ピンシャーの外見の特徴
ジャーマン・ピンシャーは、中型サイズの犬で筋肉質の締まった体つきが特徴です。マズル、首、足、尻尾が長くスクエアな体型で、スタンダード・ピンシャーと呼ばれることもあります。また、当時はネズミに噛まれることを防ぐためや噛まれた時の傷口が感染症にかからないために断耳・断尾されることが習慣となっていたことも特徴の一つと言えます。
被毛の特徴
ジャーマン・ピンシャーの被毛は、短いスムースコートが特徴です。艶やかな被毛が美しく、単色またはブラックアンドタンのボディにマーキングが入ります。ただし、原産国ドイツではブラックアンドタンが認められていないことも特徴の一つと言えます。
コートタイプ
艶のある滑らかなスムースコートがジャーマン・ピンシャーの標準のコートタイプです。
代表(標準)毛色
被毛カラーは、ブラックアンドタンの他に単色でディアー・レッド、レディッシュ・ブラウンからダーク・レッド・ブラウンまでの色調がスタンダードとされています。また、マーキングは、できる限りダークで鮮やか、明瞭なものが望ましいとされています。
マーキング
ジャーマン・ピンシャーのマーキングは、鼻先までのタン、鼻と鼻骨部分はブラックが特徴です。また、両ほほ、両目の上、顎の下に小さなタンが入り、喉には、はっきりしたV字型のタンがあります。また、サムマークと呼ばれるブラックのマークやペンシルマークと呼ばれるブラックの線が指先に入っています。
コートタイプ
艶のある滑らかなスムースコートがジャーマン・ピンシャーの標準のコートタイプです。
代表の毛色
被毛カラーは、単色でディアー・レッド、レディッシュ・ブラウンからダーク・レッド・ブラウンまでの色調がスタンダードとされています。また、ドイツ以外ではブラックアンドタンも認められています。
お手入れ方法と注意点
滑らかな短毛のジャーマン・ピンシャーは、比較的抜け毛も少ないため、お手入れは難しくありません。週に1度程度のブラッシングと月に1回程度のシャンプーをすることで、艶のある被毛をキープすることができます。
ピンシャーのココがクール
ジャーマン・ピンシャーの魅力はなんといってもその賢さとその運動能力の高さです。賢いがために、トレーニングには一貫性とリーダーシップが必要ですが、信頼関係が構築できれば素晴らしいパートナーとなる犬種です。また、敏捷でエネルギー溢れる背質であることから、ドッグスポーツを楽しむ上でも最高のパフォーマンスを見せてくれます。
適正体重・標準体高
ジャーマン・ピンシャーの体高は25~32cm、体重は3.6~4.5kgが標準とされています。
ジャーマン・ピンシャーの平均寿命と気をつけたい病気
ドイツでは古くから活躍してきたジャーマン・ピンシャーは、比較的健康な犬種です。ただし、いくつかの遺伝疾患が報告されているため、信頼出来るブリーダーから迎えることが大切です。
平均寿命
ジャーマン・ピンシャーの平均寿命は12~14歳と、中型犬の中では平均的です。
気をつけたい病気
絶滅の危機に瀕したことから、種の保存のための繁殖が繰り返されてきたジャーマン・ピンシャーは、いくつかの遺伝疾患を発症する可能性があります。
- フォンウイルブランド病
- 白内障
- 肘異形成
- 股関節形成不全
病気①フォンウイルブランド病
これは血液が固まらなくなる病気で、ピンシャー種の中でもジャーマン・ピンシャー、ドーベルマンピンシャーに多く見られます。この病気を発症すると、鼻血、歯茎からの出血、血便をはじめとする血液障害が現れます。3歳から5さいの間に発症するとされ、治癒することがないため、投薬などの治療を続ける必要があります。
病気②白内障
ジャーマン・ピンシャーはハウな衣装の発症率が高い犬種とされています。白内障は、シニアの犬が発症しやすい病気で、水晶体の損傷や糖尿病などの代謝疾患が原因とされています。重度の場合は資格障害を引き起こしますが、手術によって回復する可能性もあります。
病気③肘異形成
多くの純血種に発症が見られる肘異関節形成は、肘関節の発達異常によって発症する遺伝疾患です。ジャーマン・ピンシャーの場合は、生後6~12ヶ月の子犬から発症する可能性があり、発症すると前足の跛行が見られるようになります。悪化した場合は、重度の関節炎や激しい関節痛があるため、手術が必要となります。
病気④股関節形成不全
遺伝疾患であるこの病気は、成長過程のジャーマン・ピンシャーに発症が多い病気です。悪化すると歩行障害を発症することもあり、重篤な場合は手術が必要になります。しかし近年、ブリーダーの意識向上によって、ジャーマン・ピンシャーの股関節形成不全発症率が減少していると言われています。
ジャーマン・ピンシャーは知的で万能な犬種!
日本ではあまり見かけないジャーマン・ピンシャーですが、その賢さと運動能力の高さからアメリカやオーストラリアで注目されている犬種です。また、アメリカでは断耳、断尾されますが、断耳、断尾が禁止されているヨーロッパではスタンダードな古来の外観を残しているそうです。外観こそ違え、ジャーマン・ピンシャーの性質は変わりません。学習能力、運動能力ともに高く、また知性もあります。そのため、初めての犬として迎えるにはハードルが高い犬種ですが、犬のことをよく理解でき、トレーニング経験豊富な人にとってはパートナーとして最高の犬種となるようです。
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この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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