【獣医師監修】フレーメン反応とは|犬がにおいを嗅いで固まってしまう理由
犬が強いにおいや悪臭を嗅いだ後に、口をパクパクさせたり、目や口を見開いてボーッと固まってしまう姿を見たことはありますか?においに驚いているように見えますが、これには犬の本能的な理由があるのです。
今回は、この「フレーメン反応」の正体と、実際にフレーメン反応を見せている犬や猫、馬の動画をご紹介します。
「フレーメン反応」とは
愛犬が何かのにおいを嗅いだ後、目と口を見開いてボーッとしている様子を見たことはありませんか?
これは「フレーメン反応」と言い、一部の哺乳動物がにおいに反応して起こす生理現象です。犬だけでなく、猫やうさぎ、牛、馬、羊、象などもフレーメン反応を起こします。
動物によって表情はさまざまですが、犬は口をパクパクさせたり、猫はしかめっ面をしたり、馬は笑っているように見えたりします。
フレーメン反応を起こす理由
フレーメン反応は、犬がフェロモンを嗅ぎ分ける時に起こる現象です。
犬は、鼻腔と上顎の間に位置する「ヤコブソン器官」と呼ばれる嗅覚器官へにおいを送り込むことによりフェロモンを感知し、目の前の人や物が安全であるかどうかをチェックします。そのため、嗅いだことのない香りや強いにおいにフレーメン反応を起こすと考えられています。
この時、鼻だけではなく、口からもにおいを吸い込み微細なフェロモンを嗅ぎ分けようとするため、笑っているように見えたり、ポカンと口を開けた状態になってしまうのです。
病気なのではないかと心配してしまう方もいるかもしれませんが、これは犬にとって自然な現象であるため、安心して見守ってあげましょう。
フレーメン反応は人間にも起こる?
フレーメン反応は、犬だけではなくその他の哺乳動物にも起こりますが、人間に起こることはありません。人間のヤコブソン器官については、いまだによく解明されてはおらず、胎児期には存在しますが、出生後には退化してしまいます。そのため、人間はフェロモンを感知する能力がなく、フレーメン反応を起こすことはないのです。
フレーメン反応は犬にとって重要な反応
犬は嗅覚に優れており、フェロモンのようなにおいのほとんどない化学物質でさえも敏感に感じ取ることができます。人間は言葉や表情、ジェスチャーなどでコミュニケーションを取りますが、犬はこの鋭い嗅覚を使い、さまざまな情報伝達をおこなっています。
そのため、フレーメン反応は、犬が生き抜くための重要な反応の一つであると言えます。
犬の嗅覚
犬にとって、嗅覚はとても重要な機能の一つです。犬の視力はもともとそこまで良くありませんが、その代わりに嗅覚で多くの情報を得ています。
さまざまなにおいの中から特定のにおいだけ分析できたり、濡れた鼻先で風向きを感知し、においの方向を特定することもできるのです。また、犬の嗅覚は人間の100万倍とも言われています。
フェロモンの重要性
犬は、相手の尿や皮膚などから放出されるフェロモンを感知することによって、他の動物たちとコミュニケーションを取っています。
犬が、他の犬のおしりをしきりに嗅ごうとするのは、フェロモンを嗅ぎ取り、その犬が魅力的な異性であるかどうか、または危険な相手ではないかを知るための行為なのです。
また、犬は他の動物のフェロモンを感知することで、テリトリーや自分の社会的地位を確立しています。犬が尿や皮膚のにおいを自分のテリトリーに残そうとするのも、相手に自分の情報を伝達するための手段なのです。
【動画】犬や猫、馬のフレーメン反応
犬や猫が、フレーメン反応を起こしているのを見たことがない方もいるかと思います。また、動物によってその表情や仕草は異なるため、それぞれの動物がどのようなフレーメン反応をするのか、実際に見てみましょう。
犬のフレーメン反応
散歩中、歩きながらフレーメン反応を起こす犬の様子です。枯れ草の中から異臭がしたのでしょうか。口をパクパクさせながらフェロモンを感知しています。
猫のフレーメン反応
部屋の床のにおいを嗅いだあとに、フレーメン反応を起こす猫の様子です。目と口を見開いて、しばらく固まっています。においに驚いて、口をあんぐりさせているようにも見えますね。
馬のフレーメン反応
餌を食べた後にフレーメン反応を起こす馬の様子です。嗅ぎ慣れないにおいの食べ物だったのでしょうか。上唇を引き上げてフェロモンを確認しています。なんだか笑っているようにも見えます。
フレーメン反応は本能的な生理現象
フレーメン反応は、犬の本能的行動であるフェロモンを嗅ぎ分ける際に起こる生理現象です。そして、犬にとってフェロモンを感知することは、コミュニケーションや情報を伝達するための手段の一つです。
そのため、フレーメン反応を起こすことは、犬にとって自然なことであると同時に、重要な行為であるとも言えます。
愛犬のフレーメン反応が可愛くて、何度も見たくなってしまうかもしれませんが、あえて強いにおいを嗅がせることは、嗅覚の鋭い犬にとって強いストレスになります。犬の本能を理解し、無理ににおいを嗅がせたりしないようにしましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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