繁殖犬が存在する日本の実情について。海外での取り組みなどご紹介
ペットショップのショーケースの中には、いつ行っても可愛らしい子犬がいますが、その裏側では頻繁に子犬を産まされている“繁殖犬”と呼ばれる犬が存在します。そこで繁殖犬の実情や、海外では繁殖犬をなくすために、どのような取り組みを行っているのかなどについてまとめました。
繁殖犬とは?
繁殖犬とは、お金儲けのためだけに悪質な繁殖業者(パピーミル)に子犬を生まされている犬のことです。繁殖犬は「子犬を生む道具」として扱われており、十分な食事も与えられず、糞尿が放置された不衛生な狭いケージに閉じ込められ、繁殖期を迎えるたびに繁殖をさせられています。そのため体はやせ細り、なんとかギリギリ生きているといった悲惨な状態です。
繁殖犬が存在してしまう日本の実情
劣悪な環境下で、繁殖を繰り返しさせられている繁殖犬がいるのは大きな問題ですが、そうなってしまうのには、ペットの流通システムや生体販売のあり方、ブリーダーの規制が不十分など、さまざまな要因が関係しています。
ブリーダーの規制が緩く誰でも簡単に繁殖ができてしまう
繁殖業を始めるには、行政に必要書類を提出して登録する必要がありますが、特別な試験などは必要ないことから簡単にブリーダーになれてしまいます。
また、1匹あたりの飼育スペースの広さや繁殖可能回数など、具体的な数値規制がありません。そのため、狭いケージの中に何匹もの犬を押し込め、繁殖期のたびにどんどん子犬を生ませていても罰することができません。このように規制がとても緩いことから、悪質な繁殖業者が後を絶たないのが現状です。
ペットが大量生産・大量消費されている
繁殖犬が犠牲になるのは、ペットがまるで「品物」のように扱われ、大量生産・大量消費されているからです。繁殖犬が生んだ子犬のほとんどが、ペットオークションで競りにかけられます。人気犬種の子犬は高値がつき、ペットショップのバイヤーに競り落とされていきます。バイヤーがチェックするのは犬種・性別・見た目ぐらいで、1匹競り落とすのにかかる時間は数秒~数分程度です。
そして、ペットショップに並んだ子犬の売れどきは生後2~3ヶ月頃までと非常に短く、売れ残った子犬の多くは、「引き取り屋」と呼ばれる引き取り業者に引き渡され、また新たにペットオークションで競り落とされた子犬が補充されます。
このような大量生産・大量消費のペットの流通システムであることから、無理な繁殖を強いられる犬が存在してしまうのです。
海外では繁殖犬をなくすためにどんな取り組みをしている?
繁殖犬をなくすために、海外ではどんな取り組みをしているのかご紹介していきます。
生体販売が禁止されたアメリカ カリフォルニア州
2019年1月からアメリカのカリフォルニア州では、繁殖業者から買い付けた動物をペットショップで販売することが禁止され、販売できるのは動物保護施設が保護した動物だけになりました。アメリカでもパピーミルは非難されており、閉鎖に追い込む狙いでこのような州法が定められたのです。
日本でも繁殖犬の根本的な解決には、法改正が求められると言えるでしょう。
繁殖に関して細かな規定が設けられている
海外では犬の乱繁殖を防ぐために、繁殖業に関して以下のような規定を設けている国もあります。
・繁殖免許の取得義務
・メス犬1匹あたりの出産回数
・犬の繁殖開始年齢
・飼育スペースの数値基準
こうして見ると、日本がいかに後れを取っているのかが、よく分かるのではないでしょうか。
目を背けてはならない繁殖犬の実情
適切な飼育環境で、犬の特性や遺伝的な疾患などを考慮し、犬を大切にしながら繁殖をしている優良なブリーダーもいますが、残念なことにそのようなブリーダーはごくわずかです。ペットの繁殖や販売のあり方は、すぐに変えられるようなことではありませんが、体がボロボロになるまで子犬を生まされている繁殖犬について、多くの人に伝えて広めていくことも、何かが変わる一歩になるのではないでしょうか。
この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。
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