【獣医師監修】犬にビオフェルミンを与えてもいいの?量や頻度と注意点について解説します
「ビオフェルミン」は、人間だけでなく犬にもよく使われる整腸剤です。含まれている乳酸菌によって様々なお腹の不調を改善する効果が期待できます。ドラッグストアなどで手軽に入手可能なため、常備薬として自宅に置いている方も多いかもしれません。比較的安全性が高い薬なので飼い主さんの判断で、下痢や便秘気味の愛犬に与えることも可能ですが、その際には注意点があります。今回は、ビオフェルミンが犬にもたらす効果や、与え方・注意点を詳しく解説します。
目次
ビオフェルミンの成分、効果
犬にも人にも使われる整腸剤「ビオフェルミン」。名称を聞いたことがある方も多いと思いますが、そもそもどんな製剤なのでしょうか。まずは、その成分や効果、種類を見ていきましょう。
キーワードは「腸内フローラ」
動物の腸内には、数多くの種類の細菌が生息しています。「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と呼ばれるこの細菌たちは、それぞれ「群れ」を作って集団で生活し互いにバランスを取りながら腸内環境を整えています。
顕微鏡で腸内細菌叢(そう)を観察すると、この細菌集団たちの共同生活の様子がまるで「お花畑(フローラ)」のように見えるため、「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。
腸内フローラは、消化できない食物を身体に良い物質に作り変えたり、身体の免疫力を高めてくれたりと、生き物が健康を維持するための重要な機能を担っています。腸内フローラのバランスを整えることは、身体のバランスを整えることに直結するので大変重要なことなのです。
ここで、上記の腸内細菌を役割別に見ていくと、消化吸収の補助や免疫の刺激など健康維持に良い影響を及ぼす「善玉菌」、腐敗物質の産生や老化などに関わり身体に悪影響を及ぼす「悪玉菌」、身体が弱って免疫機能が低下したときに悪影響を及ぼす「日和見菌」となります。
ビオフェルミンに含まれる乳酸菌は「善玉菌」に分類されています。
ビオフェルミンの有効成分
ビオフェルミン製薬から発売されている「新ビオフェルミンS」には役割の異なる3つの乳酸菌が含まれており、それらが腸内フローラを整えてくれます。
129 BIO 3B フェーカリス菌
小腸にすみつく乳酸菌で、腸内に届くとスピーディーに増殖して腸内フローラを整えます。他の「善玉菌」が増えるのをサポートする役割を果たします。
KS-13 アシドフィルス菌
小腸にすみつく乳酸菌です。乳酸と酢酸を生成して、腸内で有害物質をつくり出す「悪玉菌」の増殖を抑える役割を持っています。「悪玉菌」が増えると、便秘や下痢に繋がることもあります。
G9-1 ビフィズス菌
大腸にすみつく乳酸菌で、健康な人の腸の研究を重ねて発見されたビフィズス菌です。こちらも「悪玉菌」が増えるのを抑制する働きをします。
ビオフェルミンの効果は?
3つの乳酸菌が腸内に届くと、それぞれ小腸や大腸で腸内フローラを整えながら「悪玉菌」が増えるのを抑制します。腸内フローラが整うと、乱れていた便通が整い、軟便・下痢・便秘・ガスの発生(腹部の膨満感)といった症状の改善がみられるとされています。
抗生物質を併用する場合は「ビオフェルミンR錠」
実はビオフェルミンには色んな種類があります。その中でも、「ビオフェルミンR錠」は「耐性乳酸菌製剤」と呼ばれる特殊な製剤です。
抗生物質を服用するとおなかの調子が悪くなることがありますが、これは抗生物質が腸内フローラを崩すためだとされています。「ビオフェルミンR錠」は、抗生物質を服用していても増殖する乳酸菌が含まれているため、抗生物質が原因で腸内フローラが乱れている状況で使うことができます。
医薬品である「ビオフェルミンR錠」は市販されていないので、動物病院で処方してもらう必要があります。
犬に人用のビオフェルミンを与えても問題ないの?
ビオフェルミンには、人用と動物用があります。犬に与える場合、必ずしも動物用でなければいけないというわけではありませんが、与え方には注意が必要です。また、与える際には、かかりつけ医に相談してからにしましょう。
人用と犬用のビオフェルミンの違いって?
犬用のビオフェルミンは、人用のものと比べて以下のような違いがあります。
- 用量が違う
- 配合されている成分が違う
主には、用量と配合成分の違いです。人と犬では身体のサイズ(体重)が異なるため、用量には留意しなければなりません。また、人と比べて犬の場合は胃酸がより強酸なので、胃酸によって死なずに腸まで届くような菌が配合されています。
人と犬では腸内に存在する細菌の種類が異なるので、犬用のビオフェルミンを与えるほうが効果が見込めるでしょう。
ビオフェルミンを与える際の量や頻度は?
腸内環境を整える効果が期待できるビオフェルミンは、副作用が少ないことから犬にも使用しやすい薬として有名です。実際に愛犬に使用する場合の与え方を見ていきましょう。
犬に使いやすい与え方
錠剤で1錠の中にどれだけ成分が入っているかを調べて換算する方法もありますが、用量が少なくなる可能性の高い小型犬などは粉薬のタイプを選ぶと、計算したグラム数を与えるだけなので便利です。
与える量と頻度
通常のビオフェルミン錠剤を犬に与える場合の量と頻度の目安は以下の通りです。
量 | 回数 | |
---|---|---|
小型犬 | 1/4錠 | 2回 / 1日 |
中型犬 | 1/2錠 | 2回 / 1日 |
大型犬 | 1錠 | 2回 / 1日 |
耐性乳酸菌製剤のビオフェルミンRについても同様です。
愛犬にビオフェルミンを与える際の注意点
愛犬にビオフェルミンを与えることについては特に問題はありませんが、自己判断で与える際は以下のような点に注意が必要です。
ビオフェルミンのアレルギーに注意
乳製品に対する食物アレルギーを持っている子の場合は、乳酸菌製剤であるビオフェルミンを与えることでさらに調子が悪くなってしまうことが考えられます。アレルギーによって引き起こされる症状には痒みを伴う皮膚炎や下痢や嘔吐などの消化器症状、鼻炎、目の炎症などがあり、特に皮膚症状を起こすケースが多いようです。
愛犬がこれまでビオフェルミンを飲んだことがないのであれば、まずは動物病院に相談した方がよいでしょう。
用法、用量を守ること
ビオフェルミンは規定量よりも用量が多すぎる場合、効果が上がる性質のものではありません。また反対に、用量が少なすぎる場合も期待する効果は得られません。
また、抗生物質を飲んでいる場合は通常の「ビオフェルミンS」では効果が十分に得られないことが考えられます。しっかりとビオフェルミンの効果を得るには、まず用量、用法を守って与えることが大切です。
何らかの病気の疑いがあるなら、まずは動物病院へ
ビオフェルミンはあくまで整腸剤なので、軟便、下痢などの消化器症状以外に嘔吐、食欲不振、腹痛、発熱などの症状もみられる、ビオフェルミンを1〜2日与えても軟便、下痢が改善されないなどの場合には、なるべく早くかかりつけの動物病院を受診しましょう。
その際、愛犬の調子が悪くなる前の様子や生活を詳しく伝えられるように日記を付けたり、便の状態を写真に撮っておくと診察の助けになります。
ビオフェルミンを与えても症状が改善されない場合に疑われる病気は以下のようなものがあります。
食物アレルギーが引き起こす腸炎
食物アレルギーにより、腸が反応してしまい軟便、下痢を起こすことがあります。アレルギー検査を受けて原因を特定し、食事の改善をする必要があるので、消化器症状が続くようであればかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)は慢性的に腸が炎症を起こす病気で、原因は明らかになっていませんが、腸粘膜が異常な免疫反応を起こすことが関係していると考えられています。
発症すると慢性的な下痢や嘔吐、食欲不振、体重減少などの症状が現れます。子犬や高齢犬、病気により体力が落ちている犬などは、下痢や嘔吐が続くことにより脱水症状を引き起こしてしまう危険性があります。
炎症性腸疾患は予防が困難な病気であるため、早期発見、早期治療が大切です。
ウイルスや寄生虫などの感染症
ウイルスや寄生虫などの感染性の病原体により、腸が炎症を起こして下痢を引き起こします。
下痢を引き起こすウイルス性の感染症には、犬パルボウイルス感染症や犬コロナウイルス感染症、犬ジステンパーウイルス感染症などが挙げられます。これらの病気は混合ワクチンによる予防が可能です。獣医師の指示に従い、病気になる前の健康な時に混合ワクチンを接種しておくことが重要です。
腸炎を起こす、消化管に寄生する寄生虫の種類は、回虫(かいちゅう)、鉤虫(こうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)、瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)などが挙げられます。また、寄生虫の種類によっては定期的な駆虫薬の投与を行うことで、感染の予防が可能です。寄生虫の感染が心配な場合は、種類によっては人に感染することも考えられるので、早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。また、受診する際になるべく新鮮な便を持参して糞便検査を行ってもらうと良いでしょう。
ビオフェルミン以外に犬に使用できる整腸剤
ビオフェルミン以外にも、愛犬に与えることができる整腸剤はいくつかあります。これらの製剤も、獣医師の指導のもとで使用しましょう。
ミヤリサン
「ミヤリサン」は日本で開発された医薬品で、動物用の製剤も存在します。
整腸生菌成分の1つであり、生物でもっとも耐久性があると言われている芽胞を形成する「酪酸菌(宮入菌)」を主成分とした整腸剤であり、ビオフェルミンとは作用機序が異なるため、犬での併用による相乗効果なども期待されています。
ビオイムバスター
犬猫用整腸剤「ビオイムバスター錠」には、整腸作用のある有胞子性乳酸菌と総合消化酵素パンクレアチンが配合されています。嗜好性が高く、片面に1/4錠割線があるので、小型犬や猫にも比較的容易に投与できるでしょう。
投与は1日2回、5kg未満の犬は1回1錠、5~20kg未満の犬は1回2錠となっています。
ビオフェルミンを与える際は用法、用量を守りましょう
今回は愛犬にビオフェルミンを与える場合の効果や方法、注意点をご紹介しました。
軟便、下痢などの消化器症状に対しての対症療法として比較的用いられやすいビオフェルミンではありますが、消化器症状を引き起こす原因は様々であるため、必ずしも治るとは限りません。長期にわたって続く下痢や、下痢以外に嘔吐や元気消失、食欲不振、腹痛、発熱などがみられる場合には要注意です。何らかの重い病気の可能性があり、安易にビオフェルミンを使用して様子を見ていると病気が進行したり、治療が長引いてしまうことも考えられます。
原因がわからない場合や重い症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診し獣医師に相談しましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!