四字熟語「羊頭狗肉」はどんな意味?故事から読み解く犬と人間の関係性
「羊頭狗肉(ようとうくにく)」という四字熟語の意味を知っていますか?一見、犬とは関係なさそうですが、「狗」とは犬のことで、音読みでは「く」、訓読みでは「いぬ」となります。この四字熟語について、その意味と、語源や由来、類義語や対義語から日常での使用例までをご紹介します。
「羊頭狗肉」ってどんな意味?
「羊頭狗肉」という四字熟語をご存じですか。初めて見た方の多くは、読み方に悩むと思います。さらに、意味となるとまず分からないのではないでしょうか。しかし、四字熟語には歴史や教訓などが4文字の中に凝縮されています。愛犬家なら、犬にまつわる「羊頭狗肉」の読み方や由来や意味を教養として知っておくのもよいでしょう。
読み方
「羊頭狗肉」という四字熟語は、分解すると「羊」「頭」「狗」「肉」の4文字で成り立っています。それぞれの文字は、最初から3文字は「羊/よう」「頭/とう」「狗/く」と音読みで、最後の文字は「肉/にく」と訓読みで読みます。
意味
最初の文字から順番に意味を読み取ると、ヒツジの頭とイヌの肉となります。この単純な解釈では何のことやら、意味が分かりません。しかし、ここには四字熟語らしい歴史的な物語や普遍的な教訓などが含まれているのです。いくつか辞典を調べてみたところ、次のような意味が記されています。
◇見かけや表面と、実際・実質とが一致しないたとえ。良品に見せかけたり、宣伝は立派だが、実際には粗悪な品を売るたとえ(新明解四字熟語辞典/三省堂)
◇見せかけや触れ込みはりっぱでも、実質が伴わないことをいう(日本大百科全書-ニッポニカ/小学館)
◇見かけと実質が伴わないことのたとえ。立派なものをおとりに使い、実際は粗悪なものを売ることのたとえ。(故事ことわざ事典)
これらを見れば意味は明らかですね。この四字熟語は、ヒツジの頭を見せてその肉と思わせ、実際に売るのはイヌの肉ということを意味し、見かけの良さと実質が一致していない場合の比喩として使われます。要するに“見かけ倒し”という意味なのです。
「羊頭狗肉」は中国の故事に由来している
四字熟語に限らず言葉には由来と出自があります。「羊頭狗肉」という四字熟語は、どのような由来があるのでしょうか?
中国の故事「無門関」に由来
由来は、中国の故事です。宋の時代の禅書「無門関・六側」に「無門曰、黄面瞿曇、傍若無人。壓良爲賤、懸羊頭賣狗肉」という記述があります。その中の一文「懸羊頭賣狗肉」が「羊頭を懸けて狗肉を売る」(羊の頭を掲げているのに売るのは犬の肉)ということを意味します。
お釈迦さま批判のところで登場
この記述が見られるのはお釈迦さま批判のところです。「お釈迦さまのやっていることはまやかしだ」という意味で使われ、「懸羊頭賣狗肉」という一節が略されて「羊頭狗肉」という四字熟語として残ったのです。
「羊頭狗肉」の使用例を紹介
「羊頭狗肉」を用いるのは、他者に対する皮肉や愚痴を表現するときが一般的です。自らを表現するときは使用しません。ここでは具体的な使用例を解説していきます。
“羊頭狗肉”
- あそこの店は、蟹を使った料理と言っておきながら実際にはカニカマが入っていただけだった。まさに羊頭狗肉だ。
”羊頭狗肉もいいところ”
- 商品写真を見て通販で購入したが、届いてみると実物は全然違った。羊頭狗肉もいいところだ。
“羊頭狗肉ぶり”
- 聞いていた条件と実際の物件はまったく別物だった。あの不動産屋の羊頭狗肉ぶりにはまいってしまったよ。
「羊頭狗肉」の類義語と対義語にあたる四字熟語
「羊頭狗肉」の類義語には、同じような四字熟語があります。また、四字熟語以外の同じような言葉も合わせてご紹介します。
動物が登場する四字熟語の類義語
四字熟語の類義語には、同じように動物が登場する言葉があります。「羊頭狗肉」のバリエーションとも言えるような言葉となっています。
「牛頭馬肉(ぎゅうとうばにく)」
牛の頭を掲げておきながら、実際には馬の肉を売るという意味です。
「羊頭馬脯(ようとうばほ)」
羊の頭を掲げておきながら、実際には馬の干し肉を売るという意味です。
「羊質虎皮(ようしつこひ)」
実際は羊なのに虎の皮をかぶっている。ここでの羊の立場は「羊頭狗肉」とは逆になります。
動物が登場しない類義語
「羊頭狗肉」の類義語として使用される四字熟語としては「有名無実(ゆうめいむじつ)」や「言行齟齬(げんこうそご)」があります。また、四字熟語ではないものでは、看板倒れ、看板に偽りあり、見掛け倒し、玉を衒いて石を売る、なども類義語となります。
「羊頭狗肉」の対義語と英語での慣用句
「羊頭狗肉」の対義語として挙げられるのは「言行一致」「看板に偽りなし」「看板隠れなし」などです。英語の慣用句では「He cries wine and sells vinegar.(ワインだと叫んで酢を売る)」「sell someone a bill of goods(いかさま品を売る)」などがあります。
なぜかあまりよくない言葉の中での犬の立場
犬が登場する「羊頭狗肉」にも当てはまりますが、熟語や慣用句に犬が登場する場合、「犬死に」「○○の犬」「犬も食わない」「負け犬の遠吠え」など、その立場は決して良いとは言えません。言葉は時代とともに変わります。犬に対する認識が大きく変わりつつある今、言葉の中でも犬の立場向上を願ってやみません。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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