警察犬になるまでの道のり│向いている犬種と性格、訓練方法・試験項目まで
事件や事故などで現場に駆けつけ、鋭い嗅覚で犯人の痕跡やにおいをたどり、解決の糸口を見つける手助けをしている警察犬。日本にも厳しい訓練・試練を乗り越えた警察犬が数多くおり、日々その力は解決の一助を担っています。そんな警察犬の9割が実は一般のご家庭で暮らす「家庭犬」であることはご存知でしょうか? 今回は家庭で暮らす犬=家庭犬が警察犬になるために必要なトレーニング・試験に加え、警察犬に向いている犬種・性格などをご紹介します。
目次
個々の得意なことを活かした4つの仕事
警察犬の仕事内容は大きく分けて4種類あり、その犬が得意な分野を活かした仕事につき、警察を助けてくれています。まずは、警察犬がどんな仕事をしているのか見ていきましょう。
- 麻薬探知犬
- 気選別犬
- 跡追求犬
- 威警犬
1.麻薬探知犬
麻薬探知犬とは、空港や港の税関などで麻薬の密輸を阻止するために荷物をチェックする仕事をしています。麻薬を見つけるとその場に座って知らせるよう訓練されています。
2.気選別犬
気選別犬は、現場の証拠品の匂いと逮捕された犯人の匂いが一致するかどうかを確認し、犯人を特定する仕事をしています。気選別犬により匂いが一致したという情報は、裁判においても認められる立派な証拠になります。
3.跡追求犬
跡追求犬は、犯人が事件現場に残した遺留品の匂いから犯人の居場所を辿る仕事をしています。犯人だけでなく、行方不明者の持ち物の匂いを嗅いで、捜索活動も行います。
4.威警犬
威警犬は、警察と一緒にパトロールを行って犯罪者に威嚇し、犯罪を未然に防ぐ仕事をします。時には犯人の足に噛み付いたりして、逮捕を手伝うこともありますが、日本の警察犬では逮捕活動に従事することはほとんどありません。
家庭犬が警察犬になるには?
日本の警察犬には2種類あり、警察が管理する「直轄警察犬」と、家庭で育てている犬が嘱託警察犬審査会で合格することで警察犬として認定される「嘱託警察犬」がいます。ここでは「嘱託警察犬」になるまでの道のりをご紹介します。
訓練から認定試験まで
一般家庭で育てられている家庭犬が警察犬になるのは、簡単ではありません。約1年から1年半の訓練期間を終えて、認定試験に合格しなければならないため、長い道のりになります。また、この嘱託犬の認定試験は一回きりではなく、警察犬を引退するまで毎年受けて合格し続ける必要があるのです。
難しい試験に合格すると晴れて警察犬に
嘱託警察犬審査会では、複数の科目が準備されています。まずひとつ目に「座れ」や「待て」の基本的なコマンドのほか、銃声が鳴っても姿勢を崩さずにいなければならない等の「服従試験」です。続いて、犯人や行方不明者の残した足跡を追及する「足跡追及試験」、現場の遺留品のにおいと犯人のにおいが一致するかを調べる「臭気選別試験」が行われます。
嘱託警察犬審査会の審査基準を満たし合格すると、晴れて「嘱託警察犬」として認定されることになります。
警察犬になるためにはどんな訓練が必要なの?
上述の試験をクリアし、一人前の警察犬になるためには、様々なトレーニングを行う必要があります。 なかなか普段の生活の中だけでトレーニングを行なうことは難しいため、一般的には民間の警察犬訓練所などに入所し、しっかりトレーニングを行なう場合が多いようです。それでは、警察犬になるために必要なトレーニングとは、どんなものなのでしょうか?
最初は信頼関係を深めることから
犬との信頼関係ができていなければ、どれだけトレーニングをしても一定以上の上達は見込めません。そのため、最初の2週間程は一緒に長時間の散歩やボール遊びなどをして、犬との信頼関係を築いていくことから始めます。 その後、信頼関係がある程度できてきてから、「座れ」や「伏せ」の簡単な服従訓練を通して、集中力や持来欲をつけていきます。
徐々に本格的な服従訓練へ
初歩的なトレーニングを終えると、次は警察犬に必要な障害物を乗り越えるトレーニングをスタートします。 それからは足跡追及や臭気選別ができるようになるための第一歩として、強くにおいのついた足跡の先におやつを置き、においを嗅がせます。においを嗅いだ先にご褒美があり褒めてもらえる、という認識をさせるようにしていきます。
足跡追及、臭気選別の精度を高める
足跡追及や臭気選別の精度を高めるためのトレーニングをします。犬は基本的に飼い主に褒めてもらうことを喜びとするため、トレーニングを楽しんでくれます。そのため、犬が上達するためには、その都度大きく褒めてあげることが大切です。
警察犬になることができる犬種
日本では、警察犬として指定されている犬種がいます。一般的にジャーマンシェパードが警察犬として有名ですが、一部の地域では認定されていない犬種でも警察犬になることができます。 まずは警察犬として認定される犬種、そして、それ以外のちょっぴり珍しい犬種についてもご紹介します。
警察犬として指定されている犬種
日本で正式に警察犬として指定されている犬種は、ジャーマンシェパード、エアデールテリア、ボクサー、コリー、ドーベルマン、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーの計7犬種です。
トイプードルやミニチュアダックスフンドが警察犬になったことも
一部の地域では試験内容や受験資格が異なり、上記7犬種以外の犬種でも警察犬として認定されることがあります。 過去にはトイプードルやミニチュアダックスフンド、ミニチュアシュナウザーなどの小型犬が警察犬として認定された実績もあります。
警察犬になるにはどんな性格が望ましい?
小型犬から大型犬まで様々な犬種が警察犬として活躍していますが、すべての犬が警察犬に向いているかと言えば、そうではありません。 ここでは警察犬に向いている性格について解説します。
集中力がある
犬によっては飽きっぽい性格の子もいますが、警察犬は長時間の足跡追及や臭気選別をすることもあり、長く集中力を保てる犬が向いている、と言えます。
物怖じしない
やはり警察犬になるには、物怖じしない性格が必要です。 臆病な性格の犬であれば、現場で様々な人や音がする中で集中して作業を行うことができません。
そのため、どんな環境でもいつもと変わらずに堂々と行動できる性格の犬が警察犬に向いていると言えます。
厳しい訓練を乗り越えた犬だけがなれる警察犬
私たち人間では分からない匂いを嗅ぎ分けることができる警察犬は、選ばれしものだけがなれる、とても貴重な存在と言えます。 ぜひとも我が子を「嘱託警察犬」に!と思う方は、まずは家族で話し合うことから始めてみていただけたらと思います。 またそうではない方も、テレビや新聞・街中などで警察犬の姿を見かけたら、心の中でそっと応援してあげてくださいね。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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