積極的に摂り入れたい!犬の身体機能維持に大切なタウリンの栄養素
タウリンと聞くと、栄養補給のドリンク剤を連想しませんか?肝臓の働きを助ける=タウリンのイメージが強いですが、実はタウリンの働きはそれだけではありません。体内の状態を常に一定に維持できるように調節してくれる働きがタウリンにはあります。今回は、手作りごはん派はもちろん、ドッグフード派の方にも知っておいて欲しいタウリンの必要性と、タウリンの果たす役割、望ましい摂取量から過剰摂取・不足で発症する病気のことまで、詳しく解説します。
タウリンが果たす役割とは
2018年、タウリン不足から拡張型心筋症を発症する犬が増えているという報告がアメリカの獣医栄養学会から発表されたことをご存知の方も多いのではないでしょうか?タウリンには疲労回復効果の印象が強くありますが、タウリン不足は心臓病だけではなく免疫不全なども引き起こす犬の体にとって必要不可欠な栄養素なのです。
猫とは異なり、犬の場合はタウリンは必須アミノ酸ではありませんが、心臓を中心に病気を発症しやすい犬種には積極的に与えたい栄養素です。
タウリンの働きとは
生命維持に欠かせない成分と考えられているタウリンには、ホメオスタシスと呼ばれる体の細胞を常に正常な状態に維持しようとする働きがあります。主な働きとして、胆汁酸の分泌を高める、肝細胞の再生を促進する、細胞膜を安定化する、血圧を下げる、インスリンの分泌を促進する、心筋を強化する、血管を強化する、網膜の修復、視力の回復などがあります。
アメリカで発表された拡張型心筋症の犬にタウリン欠乏症が見られ、タウリンを投与すると回復に向かったことから、タウリンが犬の心臓の働きに関係していることが分かったのです。それ以来、犬の心臓病とタウリンの関連性についての研究が進められています。この研究が進むと近い将来、犬の拡張型心筋症や心臓病治療に新しい道が拓けるかもしれません。
犬の体内で合成されるタウリン
タウリンは、タンパク質が分解される過程で作られるアミノ酸の一種で、犬の心臓や肝臓などの臓器や網膜、脳、骨髄などに含まれている成分です。犬は、魚介類などに含まれているアミノ酸であるシステイン、メチオニンという物質からタウリンを肝臓内で作ることができますが、心臓を中心に様々な病気を予防するために、タウリンを食事から摂取することが大切です。
タウリンはどのぐらい摂取するのが望ましい?
犬の体内で合成されるタウリンですが、健康維持や病気の予防のために食事で摂取することが大切です。タウリンが多く含まれている食材で代表的なのは、イカ、エビ、カニなどの甲殻類やカキ、サザエ、ハマグリ、シジミ、ホタテなどの貝類です。また、肉類、海藻類、アジやサバといった近海魚、ブリやカツオの血合いにも多く含まれています。
ただし、犬の場合は消化機能が人と異なるので、甲殻類や貝類を与える場合に注意しなければいけない点が多くあります。タウリンに関しては犬用サプリメントでの補給がおすすめです。
必要なタウリンの摂取量とは
タウリンは犬の体内で合成できるため、AAFCO(全米飼料検査官協会)では必要な基準値を定めていません。しかし、犬がタウリンを体内で合成できる量は個体差があり犬種によっても異なります。そのため、愛犬がしっかりとタウリンが摂取できているかは、血液検査によってタウリン濃度を計測しないとわかりませんが、過剰に摂取しても問題のない栄養成分であるため、少し多めに与えるようにすることがおすすめです。
タウリンが欠如すると発症する病気
肉や魚類に含まれ犬の体内で合成できるタウリンですが、犬種や年齢などによって生産量には個体差があります。最近では、タウリンを配合したドッグフードも販売され、タウリンへの関心が高まっています。タウリンが足りているかどうかは血液検査で判断できますが、なんとなく元気がない、散歩に行きたがらないなどの初期症状を見逃しがちですので注意が必要です。
- 進行性網膜萎縮症
- 拡張型心筋症
1.進行性網膜萎縮症
進行性網膜萎縮症は、網膜が何らかの原因で変性、萎縮し、次第に視力が低下、最終的には失明してしまう病気です。これまでは、遺伝疾患として知られていましたが、近年の研究によってタウリン欠乏から起こる可能性があることが報告されています。
2.拡張型心筋症
豆類や芋類が多く含まれるグレインフリーのドッグフードを食べている犬に拡張型心筋症が増加していると発表されたことから研究が進み、これらの症状を見せた犬がタウリン欠乏であったことがわかりました。そのため、タウリン欠乏と心筋症になんらかの関連性があるのでは、と言われています。
特に、遺伝的にタウリン欠乏症がよく見られるアメリカンコッカー・スパニエルやニューファンドランドには注意が必要です。また、拡張型心筋症の好発犬種であるゴールデンレトリバー、セントバーナード、ドーベルマン、バーニーズマウンテンドッグ、ダルメシアンなども注意が必要です。
過剰摂取で起こる問題
タウリンは過剰に摂取しても余分なものは尿として排出されるため、極端に多く与えない限り、過剰摂取に関してはそれ程心配する必要はありません。
タウリンを摂取する際の注意点
魚介類や肉類などの動物性タンパク質に含まれているタウリンですが、野菜や果物などの植物性タンパク質には含まれていない栄養素です。最近では、タウリン配合のドッグフードも数多く販売されていますが、手作り派の場合はタウリンが多く含まれている魚介類やサプリメントで補うことがおすすめです。なお、たくさんの食物繊維と一緒に摂取することでタウリンが排泄されてしまう可能性があるとも言われているため、食物繊維が多いグレインフリーのドッグフードや野菜中心の手作りご飯の場合は注意が必要です。
手作りごはん派はタウリン不足に注意して!
犬にとって大切な栄養素であるタウリン。最近では、ドッグフードにタウリン配合をうたっているブランドも多く、ペットフード業界からもタウリンに注目が集まっています。しかし、タウリンは合成できる量や必要量に個体差があるため、犬によっては日常的に不足しがちな栄養成分とも言えます。
そんなタウリンを手軽に効率よく摂取できるおすすめメニューは、しじみスープ。しじみを自らに出すだけの簡単調理なので、多めに作って製氷皿で冷凍しておけば、保存も可能です。ドッグフードのトッピングにはもちろん、しじみスープで鶏肉や野菜を煮てあげれば美味しさも倍増です。疲労回復や夏の暑さ負けにも効果のあるタウリン、ぜひ積極的に食事に取り入れてあげてくださいね。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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