【獣医師監修】犬の骨折は気づきにくい?愛犬からのサインを見逃さないために
犬の怪我で最も多いと言われているのが「骨折」です。犬は、私たちが思っている以上に骨折しやすい動物で、骨折しないように日頃から注意を払う必要があります。ただし、犬は骨折していても痛がっている様子を見せないこともあり、骨折しているかどうかを見分けるのは難しいこともあります。
ここでは、愛犬の怪我を見逃さないために「犬の骨折」について詳しく解説していきます。
目次
犬が骨折してしまう原因
骨折は、犬で最も多い怪我と言われています。なぜ骨折してしまうのか、どのような犬が骨折しやすいのかを知っておくことで、愛犬の骨折の予防に役立てていきましょう。
骨折の原因の多くは事故によるもの
骨折の原因として多いと言われているのは、予期せぬ事故です。いったいどんな事故が多いのかを見ていきましょう。
落下事故
最も多い骨折の原因は落下事故です。飼い主さんが抱いているところから飛び降りたり、ソファから飛び降りたり、階段で足を踏み外すなどして骨折します。まだ行動に落ち着きのない1歳以下の子犬に起こることが多いです。
交通事故
散歩中に首輪や胴輪が外れてしまったり、飼い主さんがうっかりリードを離してしまうなどして交通事故に遭い、骨折することがあります。
その他の事故
ドッグランで夢中になって遊んでいて他の犬と衝突したり、ドッグスポーツをしている犬では、人間と同じようにスポーツ中に骨折をすることがあります。
他にも、フローリングなどで足を滑らせて転倒する、飼い主さんが足元にいた犬に気付かず踏んでしまう、誤ってドアやケージの扉に挟んでしまうといった事故もあります。
事故以外の原因
栄養の偏りにより骨がもろくなっていたり、骨の腫瘍が原因で骨折するケースもあります。
骨折と年齢の関係
骨折は、1歳以下の子犬期での落下事故が最も多く見られます。これは、成長期でまだ骨が未発達なのにもかかわらず好奇心旺盛で、とても活発に動き回ることが関係しているほか、飼い主さんが子犬の扱いに慣れていないことも関係しているようです。
また、高齢犬は年齢を重ね、身体機能が衰えてくることで、関節や骨、筋力が弱くなり、ちょっとした衝撃で骨折してしまうことがあります。
骨折しやすい犬種はある?
骨折は、どの大きさの犬種にも起こりうる怪我ですが、中でも足が細く長い犬種に多い傾向があります。
小型犬ではミニチュア・ピンシャー、ポメラニアン、チワワ、イタリアン・グレーハウンド、トイ・プードル、マルチーズ、パピヨンなどの犬種に多く見られます。
中・大型犬ではボルゾイ、アイリッシュ・セター、サルーキなどが骨折しやすい犬種として知られています。
犬の骨折の症状と見分け方
骨折をすると、骨が折れた部分の腫れ、熱感、疼痛、歩行困難といった症状が見られるようになります。骨折してしまった足は接地することができず、常に足を挙げたままの状態でいることが多くなります。そのため、抱っこしたり痛みのある部分を触ろうとすると、嫌がったり痛みから攻撃的になることもあります。
また、日常生活の中であれば四肢(足)の骨折がほとんどですが、交通事故や高所から落下してしまった場合には、その他の部位を骨折している可能性があります。この場合、損傷を受けた部位によってさまざまな症状が引き起こされますが、尾の骨折などは症状が出にくく、腫れやその部位を何となく気にするなどの飼い主さんが気づきにくい症状にとどまることもあります。
次に、愛犬が骨折しているかも?と疑われる場合の事例をご紹介します。
犬が骨折したときの見分け方
犬は怪我をしていても、飼い主さんに隠そうとする習性があります。飼い主さんが異変に気付き、病院に連れて行ったときには既に変形した状態で骨がくっついてしまっていたという事例もあります。
愛犬が辛い思いをしないためにも、日頃から愛犬のボディ・行動チェックを欠かさず、以下のような仕草や症状があれば動物病院を受診しましょう。
骨折を疑うときの症状
- 手足を引きずっている
- 手足に力を入れられない
- 手足を完全に浮かせて、プランプランしている
- 関節などが腫れている
- 飛び跳ねたり走ったりしない
- 元気がない、隅の方でじっとしている
- 身体を触ると嫌がる、怒ってうなる
犬が骨折してしまったときの応急処置と運び方
骨折した犬は、適切な処置をして迅速に動物病院に運ぶ必要があります。処置をしたり運ぶとき、犬は強い痛みから咬みついてくることがあります。人が怪我をしないためにも、犬の様子を見て一時的に口輪やエリザベスカラーをつけたり、一人で処置しようとせず他の人に手伝ってもらいましょう。
応急処置と運び方
骨折の疑いがあれば、悪化しないよう骨折した部位を動かさないようにすることが大切です。また、落下や交通事故などの場合、内臓も損傷を受けている可能性があります。バスタオルやふわふわのクッションなどを敷き詰めた丈夫なハードキャリーやクレートに犬を移動させ、骨折した部位に負担をかけない状態で、できるだけ早く病院へ向かいましょう。
また、骨折した部位は、さらなる悪化を防ぐため、飼い主さんご自身が何か応急処置をするのはできるだけ避けて、早めのタイミングで病院での処置を受けるのを優先して行動しましょう。
キャリーやクレートで運ぶ場合
犬が自由に動き回らないよう、キャリーやクレートに入れて運ぶと良いでしょう。ただし、これらに入っていても激しく動いてしまえば状態を悪化させてしまうことも考えられます。視界を遮るようにタオルで覆ったり、飼い主さんが落ち着いたトーンで声をかけてあげるなどして、できる限り犬が安静を保てるようにしましょう。
担架などで運ぶ場合
動けない大型犬などを担架で運びたい場合は、他の人にも手伝ってもらいましょう。怪我をしていない側を下にして犬を毛布に乗せ、担架のように持って運びます。動物病院に到着したらスタッフに声をかけ、運搬を手伝ってもらうと良いでしょう。
大型犬の場合は特に、受診前に骨折したことや運ぶ際に手伝いが必要な旨などを電話で伝えておくと、診察までスムーズにいく可能性が高いです。
骨折の診断方法、治療法
骨折は、早期発見・早期治療することで良い状態での完治率が高まります。そのため、早い段階で動物病院を受診することと、症状にあった治療法を行ってもらうことが大切です。
骨折の診断方法
骨折の可能性があれば、すぐに動物病院に連れて行きましょう。動物病院では、骨折の疑いがあると触診だけでなくレントゲン検査などの画像診断で骨の評価を行うことが一般的です。レントゲンを見れば、骨の状態がすぐに分かるので、骨折した部分がどのような状態になっているかを判断することが可能です。
また、痛み止めや抗生物質の注射などの治療を行う前に、事前検査として血液検査も併せて行うことがあります。
骨折の治療法
人間もそうですが、犬にも自然治癒力というものが存在します。不思議なもので、骨折をすると、自然治癒の力で骨をくっつけようと体内の細胞が働きかけるのです。つまり、そのまま放置していても、骨はくっつくということです。
しかし、元の部位でくっつこうとはしないため、変な角度のまま骨がくっついてしまって、本来あってはならない場所でくっついてしまうといったリスクが大きく、骨が変形する結果となり、今後の日常生活に支障をきたす可能性が高まります。こうした問題を防ぐためにも、その子の症状に合わせたギプスによる固定、プレート固定などの適切な治療が必要になってきます。
ギプス固定
骨折の治療で麻酔をかけずに行える方法として、ギプス固定が挙げられます。ギプス固定は、手術困難な場所や手術までの間などに使用することが多い治療法ですが、症状が軽い場合や骨折部位によってはギブス固定だけで治療することもあります。
プレート固定
骨折の治療で麻酔をかけて行う方法として、プレート固定が挙げられます。全身麻酔下での手術が必要な治療法で、骨と骨を金属製の細いプレートで固定する方法です。手術が必要な骨折で最も多く用いられる治療法で、最近では完治した後にプレートを取り出す再手術が必要ない金属を使用する病院も増えてきました。
骨折を治療した後の生活で気をつけること
骨折した犬のケアは、治療をして退院したら終了、というものではありません。退院した後の生活は、骨折の治り方に影響を与えます。
患部が不衛生にならないよう注意する
ギプスには綿やレーヨン、ポリエステルなどの素材が使用されていますが、排泄物などでギプスが濡れてしまうと、ギプスの中が常時湿った不衛生な状態になってしまいます。そうすると、ギプスが当たっていた部分が皮膚炎になったり、膿んだり、最悪の場合腐ってしまうこともあります。患部はいつも清潔を保つようにしましょう。
運動を制限する
ギプス固定やプレート固定をしていたとしても、骨折部に負担がかかれば治りが悪くなったり再び骨折する可能性もあります。
基本的に退院後、しばらくの間はケージやサークルの中で過ごさせることになりますが、飼い主さんの姿を見てジャンプしたり2本足で立ち上がらないよう、周りを布などで覆って犬の視界を遮ったり、動きの取りにくい狭めのケージにいてもらいましょう。強制的に安静にできる環境を作るなどの工夫が必要です。
獣医師の指示通りに通院する
自宅でのケアやリハビリについては獣医師の指示に従い、指定日には必ず病院を受診するようにしましょう。
もしギプスがずれたり、変な臭いがするなどの異常を感じたら、指定された日を待たずに、まずは動物病院に連絡して下さい。早めの再診を指示される可能性があります。
愛犬の怪我を未然に防ぐために生活環境を整えよう
犬の骨折は、高所からの落下によるものが最も多い原因となります。犬は自分で限度が分からず、ときに無謀な行動を取ろうとします。それが骨折にも繋がってしまうのです。限度が分からないからこそ、飼い主さんが犬の行動をコントロールしてあげる必要があります。
骨折はちょっとした気付きで未然に防ぐことができる怪我ですので、いま一度、ご家庭の生活環境を見回してみてください。危険個所をなくすことで、愛犬にとって怪我のない快適な生活を送れるように整備していきましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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