【獣医師監修】犬の白内障の初期症状について|進行を遅らせるためにできることと治療費の目安
愛犬が物によくぶつかる、つまずくなどの様子が見られるようになった場合は白内障の可能性があります。白内障は症状が進行すると失明してしまうこともあるので、早期発見・早期治療が非常に重要です。本記事では、白内障の初期症状や進行を緩やかにするためにできること、治療費の目安などを解説していきます。
犬の白内障の初期症状と原因
白内障とは、眼球の中にあるカメラのレンズのような役目を果たす水晶体が白く濁り、視覚障害を引き起こす病気です。発症すると以下のような初期症状が見られます。
白内障の初期症状とその進行
白内障の初期症状としては、暗いときに物にぶつかる、段差につまずく、壁伝いに歩くなどの様子が見られます。初期は水晶体の濁りが少しですが、症状が進行するにつれ、飼い主さんでも分かるぐらいに、水晶体全体が白濁していきます。白内障は、初発白内障、未熟白内障、成熟白内障、過熟白内障と進行していきます。成熟白内障になると視力が消失し、眼底の観察は困難となります。
白内障に伴うリスクとしては、以下の3点があります。
- 緑内障を起こす
- 水晶体起因性ぶどう膜炎を起こす
- 網膜剥離を起こす
この併発疾患はすべて失明に至る病気なので、犬での白内障の進行は人間よりリスクが高いと考えられます。
白内障の原因
白内障の原因は大きく分けて、遺伝性、加齢性、外傷性、代謝性、続発性によるものがあります。
遺伝性によるもの
遺伝による先天的な要因で発症する場合があります。遺伝性による白内障は、2歳以下の若年期にかかることが多い傾向にあります。遺伝性白内障になりやすい犬種は、以下のものが挙げられます。
- シベリアンハスキー
- ビーグル
- ボストンテリア
- ミニチュアシュナウザー
- プードル
- ゴールデンレトリーバー
- コッカースパニエル
- 柴犬
- シーズー など
加齢性によるもの
加齢が原因の老年性白内障は、7~8歳頃から多く見られます。しかし、一見よく似ている「核硬化症」の場合もあり、見た目での区別はなかなか難しいので、目が白濁しているように感じたら、獣医師の診察を受けるようにしましょう。
核硬化症は「内側からもやっと白くなる」見た目で、白内障を伴う場合は「中心部だけではなく、周辺の混濁も見られるようになる」見た目になります。
核硬化症も加齢により目が白くなる症状が見られ、白内障と似ていますが、視力が低下することはないため、通常は治療をする必要はありません。動物病院で眼科検査を受けることで、白内障との鑑別ができます。
外傷性によるもの
怪我や事故などによる目への外傷が原因で白内障を引き起こすこともあります。
代謝性によるもの
糖尿病などの病気が原因となり、水晶体内部の代謝が正常に機能しなくなることで発症を招きます。
続発性によるもの
ブドウ膜炎や緑内障など、別の疾患に伴って発症する場合もあります。
白内障の進行を緩やかにするためにできること
では、白内障の進行を緩やかにするためには、どんなことができるのでしょうか?
点眼薬などを投与する
白内障は内服薬や点眼薬の投与では治すことは難しく、完治させるには手術が必要です。しかし、全ての場合において手術するわけではなく、症状が進行しており手術をしても視力が回復する見込みがないと獣医師が判断した場合は、手術を行いません。
手術をしない場合は、点眼薬などの投与によって白内障の進行を抑え、定期的に眼科検査と診察を継続して、経過を観察していくことになります。
犬の白内障の治療にかかる費用の目安
ここでは、白内障の治療にかかる費用について見ていきましょう。
白内障の手術をした場合の治療費の目安
動物病院によって幅はありますが、白内障の手術の治療費は、片目で20~30万円ほどです。この費用には診察料、精密検査料、入院料、麻酔料、手術料、処方料などが含まれます。
これはあくまでも目安の治療費で、検査項目などによっても変動します。また、もし白内障以外の合併症がある場合は、その治療分の費用も別途かかります。いずれにせよ、高額な治療費がかかることを頭に入れておきましょう。
初期症状を見逃さないことが重要
犬の白内障は、失明してしまう恐れもある病気です。発症したら内科的治療によって進行を緩やかにすることはできますが、完治させるには手術による外科的治療が必要です。とはいえ、病状が既にかなり進行している場合は手術適応となりません。初期症状を見逃さないようにし、早期に治療を開始することが大切です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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