マスティフとブルマスティフの違いって分かる?見分け方のポイントや共通点などを解説
マスティフという犬種を知っていますか?巨大な身体とちょっと怖そうにも見える愛嬌のある顔が特徴のマスティフは、日本では実際にお目にかかることが少ない犬種ですが、セントバーナードやアイリッシュウルフハウンド、グレートデンなどと同じ世界最大犬種の仲間です。
今回は、そんなマスティフ(イングリッシュ・マスティフ)とそっくりなブルマスティフを例に挙げ、2犬種の共通点や違いと性格を踏まえた見分け方をご紹介します。
目次
はじめに知っておきたい「マスティフ」の歴史
見た目がそっくりなマスティフとブルマスティフですが、なぜこの2犬種はそっくりなのでしょうか?その理由を知るためにもまず理解しておきたいのは、「マスティフ」に対する知識です。
実はマスティフは、欧米ではその歴史的背景や特徴から、マスティフという単体の犬種ではなくマスティフタイプまたはマスティフグループとして分類されています。
そのため、もっとも著名なイングリッシュマスティフ以外にも、チベタンマスティフやナポリタンマスティフなど「マスティフ」と名のつく犬種は多く存在します。
この記事でご紹介するマスティフは、正式にはイングリッシュマスティフという犬種です。
マスティフグループとは
まずは、マスティフグループ全体の歴史的背景からみていきましょう。
マスティフグループの歴史的背景
ラテン語で「巨大」「力強い」「飼い犬」などの意味があるマスティフは、数千年の歴史を持つ犬種で古代犬種モロッサスを祖先に持つとされています。
マスティフが犬種として確立された起源は諸説あり、古くは、チベットなどの中央アジアに暮らす遊牧民の狩猟犬、番犬、軍用犬としてと生活を共にしていた大きな山犬であるという説や、古代エジプトの壁画に描かれている巨大な犬、ギリシア神話に出てくる犬がマスティフの祖先犬だとする説もあります。
そのため、巨大な身体と大きな犬歯を持つ犬がマスティフタイプとして分類されるようになりました。
マスティフグループに属する犬種
古代のマスティフタイプが基礎犬となっている犬種は、チベタンマスティフ、ナポリタンマスティフをはじめ、ブルドッグ、グレートデン、ボクサー、ロットワイラーなど31犬種、モロッサスをはじめ絶滅した9犬種を加えると実に40犬種にも及びます。
闘犬として知られる土佐犬も、マスティフタイプが育種に使用されたことからジャパニーズマスティフとも呼ばれています。実は、パグもダッチマスティフと呼ばれるマスティフグループの一員です。そう考えると、どの犬種も同じような顔立ちや体つきをしていると思いませんか?
数多くいるマスティフタイプの中でもマスティフとブルマスティフは、どちらもイギリスで番犬として作出された犬種です。見た目がそっくりなこの2犬種の大きな共通点は、被毛カラーとマズルカラーと言えます。
イングリッシュマスティフの生い立ち
一般にマスティフと呼ばれているイングリッシュ・マスティフは、古代のマスティフタイプの犬を基礎犬としてイギリスで作出された犬種です。
中世のイギリスでは広大な領地の番犬として活躍し、地主から大きな信頼を得ている犬種でした。
また、古来より軍用犬としても活躍し、ジュリアス・シーザー率いるローマ軍がイギリスに侵攻した際に、マスティフの勇敢な行動に感銘を受け、マスティフをローマに連れて帰ったことでも知られています。
ブルマスティフの生い立ち
ブルマスティフは、イングリッシュマスティフの基礎犬でもあるオールドイングリッシュマスティフとイングリッシュブルドッグを掛け合わせ、番犬として作出されたイギリス原産の犬種です。
イングリッシュブルドッグより大きく、マスティフより敏捷な番犬を求めていた地主の要望に応え、マスティフ60%ブルドッグ40%の割合で作出された犬種がブルマスティフなのです。
マスティフとブルマスティフの共通点とは?
日本ではあまり見かけることのないマスティフとブルマスティフ。そのため、写真や動画などで見る限り、見分けがつかない方も多いのではないでしょうか。
この2犬種の共通点は、被毛とマズルのカラーです。
マスティフとブルマスティフのマーキング
マスティフは、顔まわりにブラックのマーキングがあることが特徴で、マズル、耳、鼻、目の周り、両耳の間部分も上に向かってブラックであることが標準とされています。
一方、ブルマスティフはマスティフほど顔まわりのマーキングが多くはありませんが、ブラックのマズルは必須で、目に向かって薄くなり、目の周りにダークなマーキングがあることが特徴です。
マスティフとブルマスティフの被毛カラー
マスティフのスタンダードカラーは、アプリコット・フォーン、シルバー・フォーンの他に、フォーン、ダーク・フォーン・ブリンドルとフォーンが主体となっていることが特徴です。
一方、ブルマスティフの場合は、ブリンドル、フォーンまたは赤で、混じり気がなく鮮明な被毛カラーが特徴です。
マスティフとブルマスティフを見分けるポイントは?
超大型犬で強面の顔立ちを持ち、同じような被毛カラーでマズルはブラックと一見しただけでは見分けがつかないほどそっくりなマスティフとブルマスティフ。特に、ブルマスティフはマスティフを基礎犬としているため、マスティフの特徴を多く受け継いでいます。
しかし、よく観察するとブルドッグの血を受け継ぐブルマスティフは、マスティフと比べると身体の大きさ、顔の形など異なる特徴があることに気がつきます。
ここでは、マスティフとブルマスティフの見分けるポイントをご紹介します。
マスティフの特徴
出会った人を圧倒するジャイアントサイズのマスティフは、体高、体重ともに世界で最大の犬種です。体が大きければ大きいほど良いとされていることもマスティフならではの特徴です。
また、古くは、ライオンやクマとも戦った闘犬としての歴史を持ち、マスティフ自身も猛獣として扱われたことがあることも特徴と言えます。
マスティフの顔まわり
真っ黒なマズル以外に、耳や鼻、目の周りにもブラックのマーキングがあるマスティフは、スクエアなアウトラインの頭部が特徴です。
顔まわりの特徴として、頭蓋骨が広く、耳の間はやや丸く、額は平らで中心から頭部の中間まで深いしわが伸びています。
小さなV字型の垂れ耳は、先端が丸く、色が濃いブラックであることが望ましいとされています。
マスティフのサイズ
マスティフのサイズは、オスで体高約76cm以上、体重は、約72.5〜104kgがスタンダードとされています。また、メスでは約69cm以上、体重は約54〜77kgがスタンダードとされています。
頑強で幅の広い体つきで、筋肉がしっかりついていることがマスティフの特徴です。
また、単に大きいだけではなく、体高と体重・体つきのバランスが取れていることが重要であるとされています。
ブルマスティフの特徴
ブルマスティフは、領土を守るガードドッグとしてイングリッシュマスティフとイングリッシュブルドッグの掛け合わせて1860年代に作出された犬種です。
ブルドッグの血を受け継いでいることから、マズルや顎の特徴はブルドッグに似ていることが特徴です。
また、マスティフより小さく機敏であることが作出の目的の一つであったことから、体の大きさは、マスティフより一回り小さいことが見分けるポイントとなります。
ブルマスティフの顔まわり
ブルマスティフは、ブルドッグの血を受け継いでいるためブルドッグほどではありませんが、アンダーショットの顎が特徴です。
また、マスティフが少しカーブした額であるのに対し、ブルマスティフの額は平らです。耳はマスティフに比べると小さく、正三角形に近い形をしています。
ブルマスティフのサイズ
マスティフより少しだけ小さなブルマスティフ。オスのサイズは、体高約63.5〜68.5cm、体重は約49.8〜60kgがスタンダードとされています。また、メスでは体高が約61〜66cm、体重は45〜54.5kgがスタンダードとされています。
マスティフの場合は、体高・体重ともに設定された体高、体重以上が認められているのに対して、ブルマスティフの場合は体高・体重ともに標準の数値範囲が決められていることが、マスティフとの大きな違いです。
マスティフとブルマスティフの性格に違いはある?
「穏やかな巨人」と呼ばれるマスティフと「ゲームキーパーのナイトドッグ」と呼ばれているブルマスティフ、どちらも有能な番犬として作出された犬種です。
マスティフが、古代からその役割を果たしていた犬種であるのに対し、ブルマスティフはより番犬として扱いやすいサイズと高い能力を求めてマスティフに改良を加えた犬種です。
どちらの犬種も、飼い主に忠実で愛情深い性格で、見知らぬ人には警戒心を強く表し、防衛本能が高い番犬としての性格を持っています。
また、頑固な面があることもマスティフとブルマスティフに共通する性格です。
マスティフの性格
すべての犬種の中で最も大きいマスティフは、中世の時代から狩猟犬、番犬、軍用犬として活躍してきた歴史があります。
その大きさや勇敢な性格、そして力強さから、闘犬が大流行していた中世のイギリスでは、大型動物と戦う犬として活躍していました。
しかし、闘犬が法律で禁止されると、獰猛な犬としてマスティフの人気は急速に衰え、絶滅の危機に瀕したのです。
そんなマスティフを絶滅から救うために、1835年に入るとイギリスでは、温和で穏やかなマスティフの作出が始まり、19世紀末には現在の「穏やかな巨人」であるマスティフが完成したとされています。
「穏やかな巨人」と呼ばれる通り、強面の容姿からは想像がつきにくいほどおっとりした性格のマスティフは、忍耐強く飼い主に忠実なことが特徴です。
ブルマスティフの性格
ブルマスティフは、1860年代に作出された犬種です。
19世紀半ば、イギリスには広大な領地を持つ貴族や狩猟動物保護区があり、土地の管理者(ゲームキーパー)は密漁者や野生動物に悩まされていたのです。
そんな密猟者を取り締まるために作出されたのがブルマスティフです。マスティフの勇敢さとイングリッシュブルドッグの俊敏さを併せ持つ犬種を作出するために、マスティフ60%ブルドッグ40%の比率を見つけ出し、新しい犬種としてブルマスティフを作出したのです。
現在は、絶滅しているイングリッシュブルドッグですが、現在のブルドッグに比べ攻撃性が高く、闘犬として活躍していた犬種のため、ブルマスティフにもその性格が反映されています。
おっとりしているマスティフに比べると、攻撃性はありませんが、アクティブで大胆不敵な性格が特徴です。
見分けるコツは身体の大きさと顔!
一見すると違いがわかりにくいマスティフとブルマスティフですが、比較してみると異なる点があることに気がつきます。
最も大きな違いは、その体の大きさ。マスティフはグレートデンやアイリッシュウルフドッグと肩を並べる体高や体重が特徴です。一方、ブルマスティフは秋田犬やロットワイラーと同程度のサイズで、マスティフと比べると一回り小さいところが、見分けるポイント。
また、アンダーショットと呼ばれる顎が前方に出ているブルドッグ型の顔つきもブルマスティフの特徴で、マスティフと見分けるポイントとなります。
どちらの犬種も、日本では出会う機会があまりありませんが、見かけることがあったら是非この記事を参考にしてみてくださいね。
この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。
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