動物福祉の基本理念「5つの自由」について|犬を飼うなら知っておきたい話
犬と暮らし犬を育てるうえで知っておきたいのが、動物福祉の基本理念である「5つの自由」についてです。動物福祉を確保するために、「5つの自由」の理念は各国の法令にも盛り込まれています。この記事では、「5つの自由」が提唱されることになった経緯や「5つの自由」の内容、ガイドラインとして採用している現場についてご紹介します。
「5つの自由」が提唱されるようになった経緯
人間に飼育されている動物にも感覚があり、行動的な要求や生理的な要求などを持っています。しかし、野生動物のように自由に行動ができない飼育動物は、自身で要求を満たせません。そのため、人間がその要求を満たしてあげる必要があり、動物が心身ともに健康で環境と調和して、できるだけ快適に生活できるようにする責務があります。そのための指針となっているのが「5つの自由」です。
まずは、「5つの自由」が提唱されるようになった経緯からご紹介します。
家畜の動物福祉の理念として提起されたのが始まり
「5つの自由とは」、国際的に認知されている動物福祉の基準で、1960年代にイギリスで提唱されたのが始まりです。当時、畜産動物は劣悪な環境で飼育されていました。そして1964年に、その実態を告発した書籍が刊行され、家畜の動物福祉に関する議論が活発になり、家畜の動物福祉を確保させることを目的として「5つの自由」が定められました。
家畜以外に他の動物も含めた動物福祉の基本
「5つの自由」は家畜だけでなく、ペットとしての動物や展示動物、実験動物など、人間によって飼育されている動物の福祉の基本と認知され、各国の法令に組み込まれています。
「5つの自由」で守られる自由の内容について
「5つの自由」で守られている「自由」の内容についてご紹介します。
飢えと喉の渇きからの自由
健康を維持するために必要な栄養が含まれた食事を適切な量や頻度で与える、清潔な水がいつでも飲めるようにしておく必要があります。
不快からの自由
清潔で安全、かつ快適に過ごせるようにしてあげましょう。糞尿が放置されている不潔な場所や狭すぎる休息スペース、雨風や炎天下にさらされ続ける環境などは飼育動物にとってストレスや病気の原因になり好ましくありません。
痛み・怪我・病気からの自由
痛みや怪我、病気を抱えているときは、適切に治療を受けさせる必要があります。
恐怖や抑圧からの自由
動物が不安や恐怖、精神的な苦痛と感じることをしない、させないように努めます。恐怖や苦痛に感じている兆候が見られるときは、その原因を取り除く、または軽減させるための的確な対応をするようにしましょう。
正常な行動を取れる自由
それぞれの動物の習性や生態に応じて、その動物本来の自然な行動が取れるように配慮しましょう。群れで生活する動物は同種の存在が必要、単独で生活する動物には、単独で飼育できる環境が必要です。
動物愛護管理法にも盛り込まれている?
動物愛護管理法の第2条には、人が動物を取り扱う場合の基本的な心構えとして、動物福祉の基本原則が記されています。その中には、言葉を変えて「5つの自由」の一部が盛り込まれていますが、動物保護団体などは「恐怖や抑圧からの自由」と「正常な行動を取れる自由」を加えるように求めていました。しかし、2019年6月の動物保護管理法改正でこれらは一切盛り込まれませんでした。
「5つの自由」をガイドラインとして採用しているのはどこ?
ここでは、「5つの自由」をガイドラインとして採用している現場についてご紹介します。
各国の動物実験の現場
動物実験に関しては賛否両論ありますが、動物実験は医療技術の工場や新薬の開発などに大きく貢献しています。そんな実験動物の現場にも、動物実験の生産供給、輸送、飼育の委託、受託実験などの全ての業務、および施設管理において、「5つの自由」がガイドラインとして採用されており、実験動物の福祉向上に取り組んでいます。
国際機関
「5つの自由」は、以下の国際機関でもガイドラインとして採用されています。
「5つの自由」を守って健康に育てよう
犬にも感覚がありさまざまな要求を持っていますが、制限されている環境にいることから、自分でその要求を満たして行動することができません。そのため、飼い主が「5つの自由」を守りながら健康でできるだけ快適に生活できるように育てる必要があります。ペットを含めた動物の福祉がさらに向上していくといいですね。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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