犬の視界を知ってみよう!視野や視力、色覚、目の健康について解説
愛犬から見て世界はどうやって見えているのか気になったことはありませんか?
犬の視界は人間にとって未知の世界ですが、研究によって徐々に明らかになってきた部分もあります。
今回は犬の視野や視力、認識できる色や目の健康の保ち方について解説します。
犬の視野
最初に見ていくのは犬の視野についてです。
犬も私たちと同じく顔に2つの目がついていることから、視野は右目と左目の視野を合計した「全体視野」と右目と左目の視野が被る部分である「両眼視野」が存在します。
それぞれの視野について順番に見ていきましょう。
犬の全体視野
犬の両眼視野
犬の両眼視野は80度程度です。
私たち人間の両眼視野が120度程度といわれていることから、意外と狭い範囲だと感じることができるのではないでしょうか。
両眼視野は右目と左目の視野が重なる部分を指し、両眼視野で認識した物にかんする立体感を認識することが可能です。
視界の端に飼い主さんと思われる人物を捉えることはできても、顔を向けて確認しなければはっきりと飼い主さんだと判別できないというわけですね。
この後紹介しますが、犬は両眼視野が狭いだけでなく視力も良いとはいえません。
視力には頼れないもののニオイや音で飼い主さんを瞬時に見分けて駆け寄ってきてくれる愛犬は、本当に愛おしい存在と感じられます。
犬の視野は顔の形状によって異なる
犬の視野について見てきましたが、犬の視野は顔の形状によって異なります。
たとえばアフガンハウンドやウィペット、グレーハウンドなどのマズルが長く顔の側面に目がある犬は全体視野が広く、270度程度見ることが可能です。
反対にペキニーズやパグ、フレンチブルドッグなどマズルが短く目が顔の正面についた犬は全体視野が狭く、220度程度だといわれています。
どちらにしても人間より広い視野を持つため一度に広範囲で物を見ることは可能です。
しかし狩猟犬などで活躍していたアフガンハウンドやウィペットなどの面長い顔の形状を持つ犬の視野が広いということは、獲物を素早く視界に捉えられるため合理的といえるのではないでしょうか。
犬の視力
犬の全体視野は広いものの両眼視野は以外に狭く、また視力もそこまで良くないと前述しました。
ここからは犬の視力はどのくらいか、動体視力はどうか、暗い場所がよく見える犬の目の特徴について見ていきましょう。
犬の視力はどれくらいか
犬の視力は0.3程度といわれています。
私たち人間で視力0.3といえば眼鏡をかける必要がある数値で、視界はぼんやりとぼやけ、はっきりと対象が認識できない程度の視力です。
愛犬に認識してもらうためには、とにかく近づけばいいのかと思うかもしれません。しかし、犬の目は対象が近すぎても見えないのです。
犬は私たち人間よりも水晶体が厚いため、1m以上離れていなければピントを合わせることができないためです。
1m以上離れなければはっきりとピントを合わせて確認できないことから、犬の視力については近視から「少し遠視」との概念に変わりつつあります。
また犬種によっても視力は異なり、ジャーマンシェパードやロットワイラーなどは近視気味、グレーハウンドなどは遠視気味と異なるといわれる研究結果もあるそうです。
人命救助など比較的近くの対象を探すシェパード、遠くの獲物を見つけ出すグレーハウンドなど、犬種の特性によって見える世界が変わってくるというのはとても興味深いですよね。
動体視力は優れている
人間に比べ視力はやや劣るといわざるを得ない犬ですが、動体視力は大変優れています。
動体視力とは人や物との距離感や、その速度などを認識する能力です。
犬の動体視力は人間の4倍ともいわれており、テレビに移る映像もコマ送りに見えているといわれています。
テレビをスロー再生してもらえばわかりますが、テレビの映像は1秒間に60コマの静止画が連続して切り替わりながら表示されています。
私たちが通常速度で見ているぶんにはコマ送りの様子はわからず滑らかな映像に見えますが、動体視力の優れている犬にとっては静止画が切り替わっているコマ送りの状態になっていると考えるとおもしろいですね。
暗い場所がよく見える
視力が人間よりも低い犬ですが、暗い場所では私たちよりもよく見え、対象を認識することができます。
これは犬が、網膜の下に「タペタム」とよばれる光を反射し増幅させる輝板(きばん)を持っているためです。
タペタムは犬のほかにも猫やアライグマ、狐などにも備わっており、夜間に写真を撮った際に光を反射して赤目になる現象はフラッシュの光を取り入れて反射していることが原因です。
ちなみにシベリアンハスキーなどに代表される目の青い犬の中には、タペタムを持たない犬もいます。
青い目を持つ犬は日照時間が少なく雪が積もる寒い地域で生息していた犬種である場合が多いため、雪が光を反射して増幅するタペタムの役割を果たしていたことが原因ではないかと考えられているためです。
タペタムを持つ犬は私たちが手探りで歩かなければならないような暗い場所でも、何事もなく歩くことができるのですね。
犬は白黒しか判別できないのか
犬の視野や視力について見てきましたが、犬は白黒しか見えないという話を聞いたことがないでしょうか。
ここからは犬の色覚について見ていきましょう。
犬は白黒しか見えない噂は誤解
ひと昔前までは犬は白黒やグレースケールの世界で物を捉えていたと言われていましたがそれは誤解で、研究がすすんだ現代では、犬も色が認識できることが分かってきました。
そもそも色を見分けるには、網膜の中の視細胞に存在する錐体(すいたい)細胞が3種類揃っている条件が必要です。
犬は錐体細胞が2種類しかない上に数も少ないことから白黒しか認識できないといわれていましたが、青と黄色の認識ができることが確認されました。
ただし色が認識されていると分かりはしましたが、錐体細胞が2種類であることは変わらないため、鮮やかな色として見ることはできません。
以下に人間と犬の認識できる色を書きだしてみますので、ぜひ参考にしてみてください。
人が認識している色 | 犬が認識している色 |
---|---|
赤 | 濃いグレー |
黄色やオレンジ、緑 | 黄色っぽい色 |
青、紫 | 青っぽい色 |
上記以外にも、識別できない色は白黒やグレーに見えると言われています。
たとえば緑の萌えるドッグランなどでオレンジ色のボールを投げても、犬は芝生とボールの両方とも黄色っぽい色として捉えてしまうのですね。
愛犬のおもちゃやリード、食器などは色の種類を変えて被らないよう選んでもいいかもしれません。
犬の視力低下のサインと目の健康のためにできること
犬の視界は動体視力に優れ、暗い場所でも容易に動けることが分かりましたね。
嗅覚や聴覚が人間の数倍優れているため視力よりも頼る部分は大きいですが、私たち人間が見て嬉しいものを愛犬とも共有できたら嬉しいですよね。
ここからは愛犬の視力が落ちてきた場合に示すサインと、愛犬の目を健康に保つための方法を紹介します。
愛犬が示す視力低下のサイン
もしも今まで問題のなかった愛犬の視力が低下してきた場合、以下の行動を示すことがあります。
- 物や人によくぶつかる
- においを嗅ぐ仕草が長くなり、物音によく反応する
- 散歩への関心が薄くなる
- 飼い主の傍に居たがる
犬は視覚に頼る部分が多くはないため見分けづらいですが、上記のサインが見られる場合視力が低下している恐れがあります。
普段暮らしている部屋の中ではぶつかることもあまりありませんが、散歩や初めて行った場所などでぶつかることが多いと確認されたら視力低下を疑いましょう。
もしも家の中でもぶつかってしまうことが増えた場合、クッションなどでぶつかる箇所を保護し、犬がケガをしてしまう危険をなくしてください。
視力が低下するとさらに聴覚や嗅覚に頼る部分が多くなり、においチェックや物音への反応が敏感になります。
ぶつかることが頻繁であれば恐怖心から散歩への関心もなくなり、飼い主さんの傍にいたがる場合も視力低下のサインです。
視力低下が疑われれば動物病院へ連れて行き、瞳孔の動きの確認や目の端から綿を落として反応を見る検査などを行って判断してもらいましょう。
視力低下は糖尿病や白内障とも関係が深いため、病気が隠れている場合早めに発見することで素早い治療が可能にもなりますよ。
目の健康のためにできること
いくら犬が視力にあまり頼らない動物といっても、自分の見る世界を共有できないのは寂しいですよね。
目の健康を保つために愛犬にできることは、以下のものがあります。
- 食事に気を配る
- 目のケアをする
順番に見ていきましょう。
食事に気を配る
目の健康を保つため、食事に気を配りましょう。
バランスの取れたフードを与えることで内臓の負担を取り除き、目だけではなくあらゆる体調不良の原因を予防できます。
目だけに特化した話をすれば、以下のような成分が配合された食べものも有効です。
- ルテイン
- ビタミンE
- アスタキサンチン
- アントシアニン
上記の成分が含まれ、犬も食べられる食材にはブルーベリーや鮭、ブロッコリーなどがあります。
ブルーベリーは特に人間でも目に良いとされ、犬用サプリなども販売されているため試してみてもいいのではないでしょうか。
目のケアをする
目の健康を保つため、ケアを行いましょう。
具体的なケアは目が充血していないか、涙は多くないかなどの異常の確認や涙やけの拭き取り、乾燥を防ぐための目薬を指すことなどです。
目の観察は早期異常の発見に繋がります。
目だけではありませんが、普段から愛犬の身体に触れて異常がないか確認してください。
飼い主さんが目をのぞき込んだり目の周辺を触ることに慣れた犬は、動物病院でもおとなしくできる可能性が高く、スムーズに診察を受けることができますよ。
まとめ
今回は犬の視界について視野や視力、色彩、目の健康のためにできることを紹介しました。
犬の視力は低く色の判別能力も人間と比べて劣りますが、視野は広く暗い中でもしっかりと動ける特徴を持っています。
私たちの見え方とは多少異なりますが、それでも愛犬が自分を見つめてくれる時間は嬉しいですよね。
愛犬にできるフードやケアを参考に、目の健康を保っていきましょう。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
犬の五感に関する記事
犬の生態/気持ち
犬の聴覚のヒミツ|犬に聞こえている音域や周波数を解説
犬は人間の何倍もの音が聞こえている、ということはよく聞く話ですよね。犬の器官の中で、嗅覚の次に...
2022年12月19日
犬の生態/気持ち
【獣医師監修】フレーメン反応とは|犬がにおいを嗅いで固まってしまう理由
犬が強いにおいや悪臭を嗅いだ後に、口をパクパクさせたり、目や口を見開いてボーッと固まってしまう...
2022年12月12日
食べもの
犬が辛いものを食べるとどう感じる?犬の味覚や、犬が苦手と感じる食べ物などご紹介
唐辛子のピリッとした辛味が好きな方は多いですよね。人間でも食べ過ぎは良くないと言われる刺激物で...
2022年12月1日
犬の生態/気持ち
犬が美味しいと感じる味は?人と犬の味覚に違いはある?最新研究から分かった犬の味覚について
私たち人間は、毎日様々な食材を色んな方法で調理し、その味の変化を楽しんで食事しています。一方愛...
2022年11月24日
犬の生態/気持ち
犬の視覚は人間より悪いって本当?犬の視力や視界について理解を深めて愛犬の気持ちに寄り添う
犬の視覚は本当に人間の視覚よりも悪いのかな?と疑問に思っている人はたくさんいるのではないでしょ...
2022年11月6日