犬にとって大切な栄養素「タンパク質」にはどんな役割がある?必要摂取量や過剰摂取の危険性を解説
タンパク質、脂質、炭水化物を三大栄養素と呼びます。中でもタンパク質は、人間や犬など動物の生命維持に欠かせないエネルギー源となり、特に犬の食事で最も大切な栄養素なのです。
そこで今回は、ドッグフード/手作り食どちらにしても重要視したい栄養素であるタンパク質の働きや、どんなタンパク質をあげればいいのか、また過剰摂取や不足した場合にどんな問題が起こるのか、必要な摂取量、食材の選び方までを順を追って解説していきます。
目次
犬にとってタンパク質はどんな役割を果たす?
タンパク質は、私たち人間や犬の体の約20%を占めている体の構成成分の一つです。筋肉、骨、臓器、爪、皮膚、被毛などを構成している他に、酵素として体の調子を整えたり、血液を作ったり、ホルモンの元ともなっている生きていく上で必要不可欠な栄養素がタンパク質なのです。
タンパク質が犬の体内に取り込まれるとアミノ酸として消化・吸収されて、再度特有のタンパク質に合成されます。
アミノ酸とは
タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類あり、「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」の2種類に分けられます。必須アミノ酸は体内で作ることができないアミノ酸で、非必須アミノ酸は体内で作ることができる成分です。
犬にとって必要な必須アミノ酸は10種類あり、これは食事から摂取する必要があります。この必須アミノ酸がバランスよく食事に含まれていることがとても重要で、必須アミノ酸とタンパク質がバランスよく含まれている食品を「アミノ酸スコア」と呼ばれる数字で表すことができます。
動物性タンパク質と植物性たんぱく質の違いとは
タンパク質は細かく分けると5種類のタイプがあり、これを5大タンパク質と呼びます。
5種類のタンパク質とは、ホエイ、カゼイン、卵白、大豆タンパク、小麦タンパクの5つです。このうちのホエイ、カゼイン、卵白が動物性蛋白質に分類され、大豆タンパクと、小麦タンパクが植物性タンパク質になります。
動物性タンパク質と植物性タンパク質の最も大きな違いは、必須アミノ酸のバランスです。
低脂肪の植物性タンパク質
植物性タンパク質には、「大豆タンパク」と「小麦タンパク」の2種類があります。大豆タンパクは大豆に含まれるタンパク質で、このことから大豆は「畑の肉」と呼ばれています。また、小麦タンパクは小麦に含まれるタンパク質で、その一部のタンパク質が小麦アレルギーの元となることでも知られています。
植物性タンパク質は野菜などの植物に含まれるタンパク質で、脂質が少ないためダイエットには最適と言われますが、必須アミノ酸が少なくこれだけでは犬の健康を損ねる可能性があります。
必須アミノ酸が豊富な動物性タンパク質
動物性タンパク質には、必須アミノ酸がバランスよく含まれています。よく耳にする「良質なタンパク質」とは、動物性タンパク質の中でもアミノ酸スコアが100またはそれに近いものを指します。
動物性タンパク質が多く含まれている食材として、肉、魚、卵、乳製品が挙げられます。肉類や魚類にはこのアミノ酸スコア100のものが多く、犬が消化を得意とする食材が多いことが特徴です。
犬のタンパク質の必要摂取量
タンパク質は、「良質」なものを「適量」摂取することが大切です。前述したように、良質なタンパク質とはアミノ酸のバランスが良いものを指します。
また、犬の年齢や生活環境によってもタンパク質の必要摂取量は変わってきます。例えば、成長期の子犬は特に多くのタンパク質を必要とします。犬種にもよりますが、成犬の4倍程度のタンパク質が必要とされ、妊娠期や授乳期の犬にも多くのタンパク質が必要となります。
必要なタンパク質の目安
アメリカのペットフードの栄養基準などを定めている団体AAFCO(米国資料検査官協会)では、ドッグフードの基準として子犬や母犬(妊娠時、授乳時)の健康を維持するために必要なタンパク質の必要量を22.5%以上、成犬では18%以上としています。手作り食の場合は、体重の2~3%程度、全カロリーの20~30%程度と言われていますが、犬種、ライフステージ、生活環境によって数値は大きく異なります。
以下の獣医師広報板で犬のカロリー計算ができるので、参考にしてみてください。
犬がタンパク質を過剰摂取することで起こる問題
タンパク質は犬の生命維持に大切な栄養ですが、だからといって過剰に与えることはおすすめできません。
タンパク質を必要以上に与えると、肥満を招く可能性があります。タンパク質を過剰に摂取すると、消化するために腎臓や肝臓に負担がかかります。また、ストルバイト結石症を発症する可能性が高まるとされています。特に、消化機能が弱っているシニアは注意が必要です。
植物性タンパク質の中でも気をつけたいのは、小麦タンパクです。小麦はドッグフードにも使われていることもあり、摂取のしすぎから小麦アレルギーを起こす可能性があります。アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎は、小麦アレルギーが引き金となることがあるため注意が必要です。
では、欠如すると起こる問題とは?
タンパク質は、動物にとっていわば生命維持装置のようなものです。タンパク質が不足すると、成長期の子犬は骨格をはじめ筋肉など体のあらゆるところに発育不全が起こります。
成犬では、体力が落ちてしまったり、抜け毛、被毛のパサつき、皮膚の乾燥など体に症状が現れることがあります。また、タンパク質不足から免疫が落ちてしまい、病気にかかりやすくなるというリスクもあります。
犬がタンパク質を摂取する際の注意点
犬の健康維持に必要なタンパク質ですが、与えるときにはバランスが大切です。動物性タンパク質に含まれているアミノ酸スコアは、参考にはなりますが、それが全てではありません。
また、植物性タンパク質ばかりでは、栄養が偏ってしまいます。近年では、高タンパク低カロリーの食事が推奨されている傾向にありますが、手作り食の場合、タンパク質量にこだわるあまり高タンパクに傾きがちです。
ドッグフードの場合は、フードローテションを組むなどして、たんぱく質の内容を変えたり、手作り食の場合は、できるだけたくさんの食材を使ってバランスの良いメニュー作りを心がけることが大切です。
犬にはアミノ酸スコアの高いタンパク質を与えよう
犬は、元来肉食の動物です。人間と共生するようになり雑食へと進化しましたが、アミノ酸スコアの高い肉や魚は犬が消化吸収を得意とする食材です。
手作り食がブームとなっている現在では、タンパク質量が足りず栄養不良になる犬が増えてきていることも事実です。散歩に行きたがらない、だるそうにしている、毛艶が悪いなど、栄養バランスの乱れが疑われる行動はいくつかあります。もし、愛犬にそのような兆候が見られたら、タンパク質が不足しているのかもしれません。
健康のためには、良質な動物性タンパク質を主軸において、そこにいろいろな食材(栄養素)をバランスよく付け加えることがポイントです。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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