「おかげ犬」って何をした犬?心温まるエピソードをご紹介
日本には海外の国々にはないような独特の文化や歴史がありますよね。三重県にある伊勢神宮には毎日多くの参拝者が訪れますが、その中には外国の方もたくさん訪れており、日本の文化に触れている様子が伺えます。そんな伊勢神宮には「おかげ犬」というエピソードがありますが、一体なにをした犬なのでしょうか?今回は、知っておくとちょっとお伊勢参りが楽しくなるかもしれない豆知識をご紹介します。
ご主人の代わりにお伊勢参りした犬がいた?
現代でも参拝者の絶えない伊勢神宮。パワースポットとしても人気ですよね。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)が祀られている内宮と、豊受大御神(とようけのおおみかみ)が祀られている外宮をはじめ、大小125から成る宮社すべてを含め、神宮と呼ばれています。
この令和の時代でも、連日溢れんばかりの人でにぎわう伊勢神宮ですが、江戸時代も同様に多くの人が参拝に訪れる憧れの地でした。
お伊勢参りは庶民の憧れ!
「一生に一度はお伊勢参り」という言葉があるほど、伊勢神宮への参拝は庶民の憧れでした。 特に江戸時代にはブームと呼べるほどの現象になり、数百万人規模の群衆が伊勢神宮へお参りに押し寄せました。これを伊勢の豊作と商売繁盛の神である「おかげ」にちなんで“おかげ参り”と呼びます。
約60年周期で訪れる「おかげ年」と呼ばれる年があり、そのタイミングで参拝者が圧倒的に増えるため、江戸時代では全部で3回のブームが巻き起こったと言われています。
さらに文政13年に起こったおかげ参りでは、なんと500万人が伊勢へと押し寄せたというのですから驚きですよね。中には、奉公先のご主人や親に内密で抜け出す方も多く、おかげ参りは「抜け参り」とも呼ばれていました。
伊勢に行けない人の「代参」という制度
このように、老若男女・貧富や身分の差がなく、誰でも一度は伊勢参りという慣習が起こりましたが、中には身体が弱い・病気などが理由で、行きたくても自分の力では伊勢まで行けないという方もいらっしゃいました。
そして、そういった方の代わりに、伊勢神宮まで行ってお参りをする風習「代参(代理参拝)」が各地で行われるようになりました。
そしてついには、ご主人の代わりに代参をする犬まで現れたのです。
実在した「おかげ犬」のエピソード
“犬がご主人の代わりに伊勢までお参りに行く”なんて、今ではとても考えられないことですが、江戸時代には実際にあったようです。
ご主人ではなく、家の近所の方に連れられて伊勢まで行く犬や、同じくお伊勢参りに行く見知らぬ人たちの手を借りながら、たった1匹で伊勢まで行って家へ戻ってきた犬もいました。
その代参をする犬を「おかげ犬」と呼び、その目印として首にはしめ縄をつけ、そこへ道中に必要なお金や伊勢参りに行く旨の書き付けを巻き付けていたため、誰が見ても「おかげ犬」だと分かるようになっていました。
そして、そのおかげ犬を見かけた人たちは、率先して犬のお世話をしたそうです。食事や寝床を用意し、伊勢までの道のりのサポート役を買って出たわけです。そうすることで徳が積めると考えられていました。
福島県のおかげ犬「シロ」
福島県の庄屋の家で飼われていた秋田犬の「シロ」はとても頭がよく、人の言葉を理解し買い物などの用事もこなす、町で評判の利口な犬でした。
ある年、シロの飼い主である庄屋の当主が病気を患い、毎年行っていた伊勢参りができなくなってしまいました。
そこで代参者に選ばれたのが、シロです。シロのお家の人たちは、首にお金と書き付けをつけたシロを、町のはずれまで見送り、朝晩も神棚に灯明をあげ、シロの無事を祈っていたと言われています。
無事に代参を終え、家に帰ったシロ
家族に毎日無事を祈られながら、伊勢へと向かったシロですが、約2か月後に見事伊勢神宮のお札を携えて家へ戻ってきました!
街道沿いの人々や、同じく伊勢神宮へ向かう人たちの手を借りながら、無事に代参を果たしたシロ。 町ではその武勇伝が瞬く間に広がり、とても可愛がられたそうです。
そのシロの犬塚(墓碑)が、福島県にある来迎山白道院十念寺に建てられています。
伊勢神宮にお参りする際には「おかげ犬」に思いを馳せてみては?
おかげ犬の心温まるエピソード、いかがでしたか? 江戸時代のおおらかで温かな時代風景が伝わってきますよね。それと同時に犬と人との深い絆と信頼関係が、こんなにも古くから変わらずにあったことに胸が打たれました。伊勢神宮に参拝に行く際には、おかげ犬のことに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
1つ注意点として、現在は残念ながら愛犬と一緒に神宮に入ることはできません。犬連れの場合は、入り口の預かり所で預かってもらうことになるので、我が家のおかげ犬にはいいコでお留守番していてもらいましょう。
▼下記の情報を一部参考にしております。
(1)伊勢神宮公式サイト
(2)三重県ホームページ
(3)おかげ横丁ホームページ
この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。
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