【獣医師監修】犬の巨大食道症とは?先天的に発症しやすい犬種や対症療法についてご紹介します
犬の巨大食道症という病気をご存知でしょうか?
巨大食道症を患っている犬は繰り返し吐くので、食べ物を消化できず栄養失調になって痩せてしまったり、誤嚥により肺炎を引き起こします。放っておくと命に関わることもあるので、早期に動物病院を受診することが大切です。
ここでは、犬の巨大食道症とはどのような病気なのか、原因や治療法もあわせてご紹介します。
犬の巨大食道症について
犬の巨大食道症は、何らかの理由で犬の食道が拡張してしまい、食道の働きが低下することにより食べ物や水、唾液などが胃まで運ばれずに食道にたまってしまう病気です。
人間の場合は直立すると口から食道、胃が地面に対して垂直ですが、犬の場合は四肢歩行で食道が地面に対して平行になっているため、この病気の症状が強く現れて問題になりやすいと考えられます。
初期症状とチェック項目
食道内の未消化物を吐き出す吐出(としゅつ)が見られるのが特徴です。食後、比較的短時間で吐き出しますが、数時間で吐出することもあり、その頻度は犬によってさまざまです。吐出と嘔吐は異なる症状ですが、自宅で飼い主さんがどちらなのか判断するのは難しいかもしれません。食餌を摂らせた時間、吐いた時間、吐いたものがどんな形状だったのか、などを詳細に記録して診察の際に伝えるようにすると良いかと思います。
とにかく、吐き続けると栄養が取れず衰弱し、体重減少や脱水状態が引き起こされます。また、吐いたものが誤って肺の方に入ってしまい、誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こすことがあります。誤嚥性肺炎になると呼吸困難や咳、発熱などの症状が起きて、命に関わることもあります。
他の犬や人間にうつる?
犬の巨大食道症は、食道が拡張し運動性が低下する病気であり、感染症ではないので他の犬や人間にうつる心配はありません。
犬が巨大食道症になる原因として考えられるものは
犬が巨大食道症になる原因は、生まれつき異常な構造を有する先天性のものと、生まれた後に何らかの原因によって巨大食道症を発症する後天性のものに分けられます。
原因【1】先天性のもの
先天性の巨大食道症の原因は、いまだ完全には解明されていませんが、食道周辺にある神経の欠損や異常により発症するとされています。先天性のものでは自然に回復する例もあるようですが、長引くこともあるので怪しい症状があれば、早めに病院で診察を受けておきましょう。
原因【2】後天性のもの
後天性の巨大食道症の原因としては、神経や筋肉の疾患やホルモン異常、食道部分の腫瘍によるものなどが考えられています。
具体的な病名としては重症筋無力症、多発性筋炎、全身性紅斑性狼瘡(ぜんしんせいこうはんせいろうそう)、全身性エリテマトーデス、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能低下症、胸腺腫、鉛中毒といったさまざまな病気が基礎疾患として挙げられます。実際には多くが原因不明の特発性であると言われています。
かかりやすい犬種や年齢は?
先天性巨大食道症は1歳頃までに診断されることが多く、後天性の場合はさまざまな年齢で発症します。
先天性の巨大食道症が疑われる犬種の例として、ジャーマン・シェパードやミニチュア・シュナウザー、ワイヤーヘアード・フォックステリア、アイリッシュ・セッター、グレート・デーン、ラブラドール・レトリーバーなどが挙げられます。
犬の巨大食道症の治療方法
原因となる病気が特定できている場合には、その治療を行うことで改善が期待できます。しかし、犬の巨大食道症の多くは特発性であり、現在のところ食道拡張を改善させるために有効な治療法が見つかっていないため、症状を緩和するための対症療法が行われます。
食餌は立位の姿勢で食べさせ、食後その姿勢を30分くらい保持します。食餌の内容は、柔らかくしたフードや流動食などその犬の体質に合った最適なものを探して与える工夫が必要です。
その他、食道炎や肺炎を併発している場合には、その症状に対して抗生物質の投与などの内科的治療が行われます。
治療にかかる費用
犬の巨大食道症の検査では一般的に、レントゲン検査(造影検査を含む)をはじめ、超音波検査や内視鏡検査、血液検査などが行われます。
検査にかかる費用は数万円くらいと考えられますが、治療費は原因や症状の程度などにより治療方法も異なるため変わってきます。病院によって費用は異なるため、かかりつけの動物病院で確認しましょう。
犬の巨大食道症は予防できる?
巨大食道症は予防が困難な病気です。日頃から食後に吐出する様子が見られないか観察し、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
再発する可能性
巨大食道症は有効な治療法が見つかっていないため、一度改善しても再発することがあります。再発の兆候が見られたら、早急に動物病院を受診しましょう。
日頃から愛犬の体調をよく観察しましょう
犬の巨大食道症は、予防や治療が難しい病気です。しかし、飼い主さんが食餌を適切に管理したり、誤嚥性肺炎を発症しないようにうまくケアできれば、長生きすることも可能と言えます。愛犬の体調に異変を感じたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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