犬の「本能」と「習慣」を理解して愛犬がとる行動の意味やしつけに役立てる
犬だけではなく動物には「本能」と「習性」があります。これは、生まれつき備わっている能力のことを指します。 例えば、玄関のチャイムが鳴った時に吠える、お散歩の時に引っ張る、サイレンの音に遠吠えする、臭いものにゴロスリするなどの犬の行動は本能や習性に基づいているものです。
犬の本能や習性を知ると、今まで不思議だった犬の行動や悩みの種だったしつけの方法のヒントになるかもしれません。 今回は、犬の本能・習性といった犬を飼う上で知っておいてほしい「犬本来の姿」について解説します。
犬の本能について考えよう
犬と暮らすことは幸せもたくさんある反面、犬がいつまでも吠えていて止まらない、犬がお散歩の時に引っ張るなど、悩む機会も多くありますよね。最近では15歳未満の子供の数より、犬猫の飼育頭数が多いという統計結果も出ていますが、犬は、オオカミを祖先に持つ動物であって人間ではありません。そのため、犬にはオオカミから受け継いだ「本能」と「習性」があります。
まずは、犬の持つ本能と習性について正しい知識を持つことが、犬と暮らしていく上でのヒントとなることを認識しましょう。
犬が持つ本能は大きく分けて6種類
犬を飼う上で理解しておきたい本能は6種類あります。この6種類の本能をさらに8種類の社会本能に分類することができます。 早食い・庭に穴を掘るなどの行動は、犬が持つ習性に基づいたもので、この習性は本能による行動が習慣化されたものになります。
問題行動の基にもなる犬の本能とは
私たち人間が犬を見て「問題行動」と呼ぶ行動があります。咬む、吠えるなどが典型的な問題行動ですが、これは人間側から見た考えで、犬にとっては本能に基づいて行動しているにすぎない可能性があります。
まずは、犬が持つ6種類の本能を理解しましょう。
1.子孫を残すための繁殖本能
動物なら必ず持っているのが繁殖本能です。繁殖本能には、種の保存のための生殖本能と子供を守るための養育本能の2種類があります。
2.犬と暮らしていく上で重要視したい社会的本能
社会的本能は犬が生きていく上で重要な本能です。 この社会的本能は主に8つの種類に分類されます。
・群れを作り上下関係を構築する群棲本能
・群れのリーダーに従う服従本能
・群れの中で主導権を取ろうとする権勢本能
・ファミリーを守る防衛本能
・なわばりを守る警戒本能
・自分が獲得した餌や物を守る監守本能
・戦うための闘争本能
・遠く離れたところまで出かけても巣に戻れる帰巣本能の8種類です。
この社会的本能に基づく行動や習性が、犬と暮らしていく上での問題行動になり得るとされています。
3.遊びながらも優劣関係を作る運動本能
運動本能は遊戯本能とも言われ、群れの中で体力・知力を使いながら優劣をつけ、順位を上げようとする本能です。
4.身の安全を図るための逃走本能
不安やビビリな性格から逃げて身の安全を図ろうとするのが逃走本能です。 保護された犬が保護主の家から脱走するのは、この本能に基づいている可能性があります。
5.自分の身を守るための自衛本能
自分の身を守ろうとするあまり攻撃的な行動に出ることもあるのがこの自衛本能です。
飼い主に対して不信感を強く持っている犬は、この自衛本能から触ろうとすると噛むなどの行動を起こします。
6.生命維持のために欠かせない栄養本能
栄養本能は、猟犬種が得意としている本能で4種類の本能に分類されています。
・持来本能:獲物を巣や漁師のもとに運ぶ本能で、投げたボールを持ってくるのも、この本能からと考えられています。
・捜索本能:嗅覚を利用して獲物を探し出す本能。警察犬の犯人追跡に利用されています。
・追跡本能:逃げる獲物を追う追跡本能を利用して行われているのがドッグレースなどの走るスピードを競う競技です。
・狩猟本能:獲物を狩る狩猟本能は、独立心の強い犬種が得意としている本能です。 お散歩中に、小動物を見つけて突然走り出したり、近くを走っている人に反応をするのは、この狩猟本能のなせる技です。
飼い主として理解しておくべき犬の本能とは
ご紹介したように犬には多くの本能がありますが、犬種によっては人間の都合の良い性質に改良されてきた経緯があります。 そういった犬種と暮らしていくためには、元来犬が持っている本能をよく理解することが重要です。ここでは、犬と暮らしていく上で必ず理解しておきたい4つの本能をピックアップしてご紹介します。
1.犬は群れ社会を大切にする:群棲本能
多くの動物は外敵から身を守るために群れを作って行動します。オオカミも例外ではありません。そのオオカミの血を引くと言われている犬も群れ社会を好みます。動物の群れではリーダーが存在し、縦型の社会が形成されています。 家庭で暮らす犬は、その家族を群れとしてみなし、犬自身も群れの一員であると認識します。
2.群れの中では常に順位争いをしている:権勢本能
権勢とは、権力を握り従わせることです。動物の群れでは上下関係が存在し、リーダーが群れを統率します。そのため、強いものには従い、弱いものに対しては従わせようと行動をとるのです。
犬種や犬の性格によっては、先天的に強い気質を持ち、権勢を張ろうとする犬もいます。犬にとって、家族の中のリーダーが誰であるのかをはっきり認識させることができないでいると、自分が主導権を握ろうとし強い態度に出る場合があります。
これを権勢症候群と呼び、犬の問題行動の中でも特に重要視されています。飼い主の言うことを聞かない、飼い主に向かって歯を見せる、唸るなどの行動などを見せる場合は、飼い主を弱いものと見ている可能性が高く、犬がリーダーシップを発揮しようとする権勢症候群となっている可能性が高いと考えられます。
3.遊びの中にも順位付けの行動がある:遊戯本能
犬は、子犬の頃から犬同士で遊ぶことが大好きです。子犬の頃はじゃれあいをしながら、お互いの優劣を決める行動を学んでいます。子犬期に家庭にもらわれてきた犬は、犬の代わりに飼い主とじゃれあいをします。このじゃれあいの時に、甘噛みや引っ張りっこといった犬の闘争本能を刺激するような遊びばかりをしていると、権勢本能が発達してしまう可能性があります。
4.犬はリーダーに従う方が暮らしやすい:服従本能
群れの中で上下関係を作ることで平和な群れを維持している動物は、強いものに対して服従することで自己防衛を図ります。 家庭犬となった犬は、家族の中で自分がどの位置にいるのかを常に意識しています。犬にとって、服従本能と権勢本能は同列にある本能で、群れの中で自分がどのような態度をとれば平和に暮らしていけるのかを考えていると言えるのです。
家族の中にリーダーがいなければ、犬にとっては服従する相手がいないこととなり、自らがリーダーとなろうとする権勢本能が発達していくと言われています。
犬の本能を理解すれば習性がわかる
犬は前述のような本能が先天的に備わっています。その本能から起こす行動が習慣化したものが習性です。 例えば、群れの中で上下関係を決めようとする行動も犬の習性の一つです。マーキングや逃げるものを追いかけるなどの行動も本能からくる習性です。
このような習性を生かして、犬にさまざまな活躍の場が与えられました。また過去には、習性を強化するための育種が行われ、現在では犬種ごとの分類が可能となっています。
大切なことは犬種の本能と習性をよく理解すること
犬の習性を理解すれば、なぜその子がこんな行動をとっているのか?がだんだん理解できるようになってくると思います。 例えば、牧畜犬グループに分類されている犬種は、走っているものを追いかけることが習性にあります。また、猟犬の中でも獲物をしとめる役割を担ってきた犬種は、噛むことが習性として残っています。そのような犬種独自の習性をよく理解した上で、犬と暮らすことで、しつけの方法や互いに心地よい接し方が見えてくると思いますので、ぜひじっくり愛犬の様子を観察してみてくださいね。
この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。
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