犬の視覚は人とは違う?犬が見ている世界や視覚機能についてご紹介!
私たち人間は、多くの情報を視覚に頼って生活をしていますが、果たして犬はどうなのでしょうか? 私たち人間の何倍もの能力を持つ犬の嗅覚・聴覚。犬は多くの情報を鼻と耳から得ていると言われています。では、犬は目からどのような情報を受け取っているのでしょうか?今回は、犬が見ている世界・犬の視覚についてご紹介します。
犬の視野は顔の形状によって違う
人間が両目で同時に見える水平方向の範囲は約120度、片目では耳側に約40度と言われています。 犬の視野の範囲は動物に比べると広くはありませんが、視野の重なりが大きい人間は、立体的にモノを捉えることが得意です。 一方、犬は目の付いている場所によっても視野の範囲が異なります。多くの犬種は、片眼で約30~60度・両眼で約135~150度とされています。
瞳が大きくても立体的に見ることが苦手な犬種
チワワ・パグ・ペキニーズなどの犬種は、顔の割合に比して瞳が大きな犬種となります。一見すると人間と同じように立体的にモノが見えているように感じますが、マズルが短い犬種は顔の前面に目が付いているため、全体視野がマズルの長い犬種に比べて狭く、物を立体的に見ることが苦手とされています。
立体的にモノが見えているサイトハウンド
ボルゾイ・グレーハウンド・サルーキといった目を使って獲物を捕らえることが得意な犬種をサイトハウンドと呼びます。 サイトハウンドは、マズルが長く顔の前面に目がつき、左右に分かれています。視野が約270度と広く、背後にいる動物まで見えていると言われており、立体的にモノを見ることが得意です。
犬が見ている世界は、実は白黒じゃない
私たち人間が見える色は光の三原色を基本としています。 三原色とは、赤・緑・青の三色で、人間の視覚はこれらの色の光に反応する色覚の仕組みとなっています。 この色を判別するための細胞を錐体細胞と呼び、人間には赤錐体・緑錐体・青錐体の3種類の細胞があります。
これに対し、犬は2種類の錐体しか持っていない上、人の錐体細胞の1/6程度しかないため、犬の見ている世界は白黒なのではないかと推測されていたのです。
犬が認識できる色は2種類
しかしながら、1989年の研究により、犬は2種類の色を認識できることがわかりました。 犬が認識できる色調は「赤・オレンジ・黄・緑」と「青・紫」の2種類で、どちらの色のグループも一つの色調として認識しています。 つまり、犬にとっては赤も緑も同じ色調に見えるため、緑の芝生で、赤やオレンジ・黄色のボールを探すことは困難なことと言えます。
私たちが見ている景色と犬の見え方は?
犬との生活の中では「アイコンタクトが大切」とよく言われます。アイコンタクトとは、目と目で合図をすること。 そのため、私たち飼い主は犬の目を見つめてコマンドを出していますよね。しかし、実際には残念なことに近眼の犬から見た世界では、飼い主の目はハッキリとは見えていないと考えられています。
人間と比べると犬は一定の距離にしか焦点が合わない
人間の目は、遠くを見るときと近くを見るときではレンズの役割をしている水晶体の厚みが筋肉の収縮によって変わります。
一方で、犬はこの遠近の調節が不得意で、目から1メートル程度の距離にしか焦点を合わせることができません。また、70cm以内にあるものには焦点を合わせることができないのです。
犬の視力はいくつ?
人間は、目の見え方を視力0.5・1.0など数字で表します。普通自動車の運転免許証を取得するにあたって必要な視力は、両目で0.7以上とされていますよね。ここで仮に人間の視力を1.0とした場合、犬の視力は0.4程度と言われています。これは、犬に限らず哺乳類の多くは、人間に比べ水晶体が厚く、また水晶体の調整が苦手なためです。
犬の目がフラッシュで緑色に光る秘密
暗いところでフラッシュをたいて犬の写真を撮ると、目が緑色に光って映ることがありませんか? これは、犬の網膜の裏に光を反射するタペタムと呼ばれる器官があるからです。
このタペタムは緑色をした光に対して敏感な器官で、タペタムが反応することでフラッシュが当たると目が緑色に光って映ります。 また、タペタムによって光を増幅させて見ることができるため、犬は暗い中でも物体を認識することが可能となります。夜行性のオオカミを祖先とする犬が、暗い空間でも自分の身を守るために備わった機能と言えます。
近眼だけど、動くものを見る力には優れている
静止しているものを見る力は人間より劣る犬ですが、動いているものを捉える「動体視力」には優れています。 犬の目は構造的に、光を目の奥にまで通す領域が大きいため、動くものを認識する能力に優れています。ボールやフリスビーを上手にキャッチできるのは、この動体視力が優れているからと言えます。獲物を捕らえることを得意としていた犬ならではの機能ですよね。
犬の視覚を守るための注意点とは
一緒に暮らしている犬が、ある日突然、家具にぶつかるようになったり、散歩に行こうとして玄関ドアにぶつかるようになったら、視力が低下している可能性を疑ってみましょう。 犬にとって、嗅覚・聴覚についで大切な器官である視覚。視覚障害は、犬にとっても間違いなくショックな出来事です。また、生活していく上での安全面においても心配だと思いますので、上記のような症状が見られた場合には、一度動物病院で調べていただくといいでしょう。
眼球が飛び出している犬種は要注意
シーズー・ペキニーズ・パグなど、目が大きくて飛び出している犬種は、目の病気が多いと言われています。 眼球が大きい犬種は、他の犬種に比べて、まばたきの回数が少ないため病気に対する抵抗力が低い傾向があります。 また、眠っている時に瞼が十分に閉じないと、角膜が乾燥し、眼病の原因となることもあります。
外傷による視覚障害に注意
犬は、遊びに夢中になると周りが見えなくなってしまうことがあります。 例えば、ボールを追いかけている時には、そのボールしか目に入っていません。近くに枝などの障害物があってもとっさに避けることができず、目を傷つけてしまうことがあります。
また、ワンプロでついつい熱が入ってしまい、相手の目をひっかいてしまうことも。犬の目の病気で最も多いのが外傷がきっかけと言われているのです。外傷によって角膜や網膜が損傷すると、失明のリスクもありますので、愛犬を遊ばせる際には、周囲に危険なものがないかを確認するようにしましょう。
注意したい視覚障害を引き起こす病気
犬が視覚障害を起こす原因として目の病気があります。目の病気は、遺伝的要因からかかりやすい犬種があるので、該当する犬種と暮らしている場合には、日常から目の病気をチェックしてあげるようにしましょう。
水晶体が白く濁る白内障
人間も老化によって引き起こすことが多い白内障ですが、犬の場合は「先天性」「遺伝的要因で若い年齢で発症する若年性」「加齢による老齢性」の3タイプがあります。また、他の病気から発症することもあります。
白内障にかかりやすい犬種としては、トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー、アメリカン・コッカー、シベリアン・ハスキーなどが挙げられます。
失明する遺伝疾患・進行性網膜萎縮症
遺伝性の病気として知られる進行性網膜萎縮症は、網膜が萎縮し徐々に視力低下、最終的には失明してしまうという恐ろしい病気で、若年で発症することが多くあります。好発犬種としてミニチュア・ダックスフンド、シェットランド・シープドッグ、シーズー、トイ・プードル、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバーが挙げられます。
網膜や視神経が変性する緑内障
緑内障は、先天性・遺伝性から発症する原発性のものと、ぶどう膜炎などの眼疾患を引き金として発症する続発性のものがあります。好発犬種はビーグル、トイプードル、シーズー、マルチーズ、アメリカン・コッカー、シベリアン・ハスキーなどです。
小まめなアイチェックで目を守ってあげて
今回は、犬の視覚機能についてご紹介しました。犬がどのような景色を見ているのか、何色の空を見ているのか、犬の視力や犬が見えている色が分かると、ちょっぴり愛犬の気持ちが分かるような気がしてきませんか?
嗅覚ほどではないにしろ、視覚も犬にとって大切な器官です。目の疾患は、飼い主さんの「気付き」が特に必要な病気ですので、日頃から小まめにチェックして、少しでも異変を感じたらすぐに獣医師の診察を受けるようにして、愛犬の健康を守っていきましょう。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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