犬の耳掃除のコツとは?必要な犬種、使う道具、サロンの価格も紹介
犬の耳掃除、大変ですよね。
「掃除に手間取って愛犬から嫌がられてしまった」という悩みを抱える飼い主さんは多いでしょう。
しかし、手順やコツをつかめば、そこまで難しいものではありません。
そこで今回は、適切な頻度や手順、使う道具、サロン価格も含め、犬の耳掃除のコツを徹底解説します。
最初は難しいかもしれませんが、この記事で述べるコツを意識すれば、犬の耳掃除も徐々に慣れ、うまくできるようになるはずですよ!
犬の耳掃除の必要性
そもそも、飼い犬の耳掃除をする必要があるのか疑問に思っている方も少なくないのではないでしょうか。
結論からいうと、実は犬の耳掃除は基本的には不要です。
たとえば、野生の犬が耳かきを使って耳掃除する姿は見たことないですよね。
本来、犬の耳は非常に重要な感覚器となるため、音を拾うのに邪魔になる耳垢は自動的に外に排出されるようになっています。
健康な犬であればこの自浄作用が正常に働いているので、耳掃除は不要なのです。
しかしながら、外耳炎のような耳の病気を抱えている場合は別です。
特に日本のような湿度の高い環境に暮らす犬は、耳の中に雑菌が繁殖しやすくなっています。
そのため、外耳炎や脂漏症などを発症しやすいため、定期的な耳掃除やお手入れが必要です。
必要な犬種
犬種によっては、特に耳掃除が必要な犬もいます。
そのなかでも代表的なのが、ゴールデン・レトリバーやミニチュアダックスフンド、トイプードルといった垂れ耳の犬種です。
こうした犬種は耳が垂れているために、外耳道に空気が通りにくく、湿気が残り蒸れやすくなっています。
湿気は雑菌が好む環境ですから、湿った耳垢が溜まると病気になってしまいます。
また、フレンチ・ブルドッグのように耳道が短く脂漏体質の犬も、耳垢がべたついたり溜まりやすかったりするので耳掃除が必要です。
フレンチ・ブルドッグはそもそも外耳炎になりやすい犬種なので、定期的な耳垢の状態チェックや耳掃除が必要となります。
頻度
犬種によっても耳掃除が必要ですが、外耳炎・脂漏症(皮脂の分泌や皮膚の角化が過剰になりべたつきやフケが起こる病気)・アレルギーなど健康状態によっても耳掃除が必要になる場合があります。
犬の耳掃除の頻度は、月に1~2回がベストです。
健康チェックもかねて行うとよいでしょう。
健康な犬は耳掃除が不要と説明しましたが、健康かどうかを確認するうえで、掃除をしないにしても月に最低1回は、耳の状態チェックをしっかり行うべきです。
そして、耳垢がベタついていたり、湿っていたりする場合は、耳掃除をしてあげましょう。
犬の耳掃除に使う道具と選び方
人間の耳掃除では、耳の穴に綿棒や耳かき棒を差し込み、耳道の中にある垢をこそぎ取ります。
ですが、犬の場合は耳の穴に綿棒を差し込んではいけません。
耳垢が逆に奥に押し込まれてしまったり、綿棒が耳道内部を傷つけることで外耳炎や聴覚障害を引き起こしたりする恐れがあるからです。
どうしても綿棒を使うなら、耳の穴に差し込むのではなく、目に見える範囲の外耳(耳介)のヒダに付着した汚れを取るだけにしましょう。
犬の耳は人間の耳とは構造が違うため、人間の感覚で考えず、犬に適した耳掃除の道具を使うことが大切です。
ここでは、犬の耳掃除に使う道具と、その選び方を簡単に紹介していきます。
洗浄液
犬用のイヤークリーナーは、洗浄液タイプを選ぶとよいでしょう。
メリットはとにかく扱いが簡単なことです。
犬の耳に適量を垂らしマッサージをすることで汚れを取りやすくできるので、耳掃除が苦手な飼い主さんにも耳掃除を嫌がる子にもおすすめできます。
選び方としては、いくつか買ってみて実際に使い、犬が痒がったり嫌がったりしないものを選ぶと安心です。
なお、短頭種のように耳道が短い犬種や、脂漏症を引き起こしやすい犬種(アメリカン・コッカー・スパニエル、ダックスフンド、シー・ズーなど)では何度も耳に液体を入れずに済むプロテクタータイプの方が合うなど、犬種や相性によっても最適なクリーナーは変わります。
コットン
犬用のコットンは、洗浄液を染み込ませて使います。
コットンシートやコットンボールなど色々ありますが、オーガニックコットンだとお肌にも優しいので敏感な子にもおすすめできます。
なお、すぐに拭いて取り出せるコットンシートは、初心者でも手軽に耳掃除ができるので人気です。
また、元々耳内に湿気がこもりやすい垂れ耳の犬種では、掃除の後で乾いたコットンボールを入れ軽く耳道を拭き取るとよいでしょう。
コットンで拭いてあげる際には、染み込ませる洗浄液を人肌程度に温めておくと、犬がびっくりしないで済みますよ。
ピンセット
犬の耳掃除用のピンセットは、耳垢を取るためではなく、耳の中に生えている毛を抜いたり切ってあげるために使います。
犬のなかには、耳の中に毛が生えている犬種がいて、特にダックスフンド、ポメラニアン、チワワなどが知られています。
耳の中の毛をそのままにしておくと常に通気性が悪い状態になり、耳の病気の原因になるのです。
毛には耳垢もこびりつきますし、多すぎる場合は抜いたり切ってあげないといけません。
犬の耳掃除用のピンセットには、人間が使うピンセットと違い、ハサミのように指が入れられる輪っかが備わっているものがあります。
通常のピンセットだと力を入れないと毛が抜けなかったり、持っているのに疲れてしまったりするので、こうした輪っかがついているものを選びましょう。
タオル
犬の耳掃除にはタオルもあると安心です。
犬は洗浄液のような液体が耳に入ったり、耳周りに汚れや異物を感じたりすると頭や耳をよく振ります。
そうしたときに煩わしいものをタオルで拭き取ってあげれば、犬は安心するでしょう。
しかし、タオルを煩わしいと感じる犬もいます。
掃除用のタオルではありますが、できる限り犬がリラックスできるような、柔らかくふかふかのタオルを選びましょう。
そして、耳周辺についた汚れを拭くときは、声掛けをしながら優しく拭き取ってあげると安心しますよ。
おやつ
犬は基本的には耳掃除を嫌がる生き物だと思ってください。
自分で耳掃除をしないですし、重要な感覚器である耳をいじられることをあまり好まないからです。
そのため、耳掃除をした後にご褒美としておやつをあげると、「耳掃除をさせればおやつが食べられる」と思って徐々に嫌がるそぶりをみせなくなります。
しつけ・調教の際にもこうした作戦を使いますが、このように何かをした・させたときに特別に与えるご褒美を「トリーツ」といいます。
トリーツに何を選ぶかは愛犬の好みによるので一概にはいえませんが、たまにしかあげない特別なおやつを選ぶと、犬も喜んでくれますよ。
犬の耳掃除の具体的な手順
犬の耳掃除に使う道具を揃えたら、いよいよ耳掃除に取り掛かりましょう。
最初は難しく感じるかもしれませんが、実は手順さえ知ってしまえばそう難しいものではありません。
まずは手順を知り、頭の中で何度かイメージトレーニングを繰り返して備えましょう。
普段から愛犬と信頼関係を築いていればきっと大丈夫です。
ここでは、犬の耳掃除の具体的な手順を解説していきます。
何度もいうようですが、飼い主さんが緊張してかしこまってしまっては、犬も警戒してしまいます。
普段行う世話と同じく、リラックスすることを意識するといいですよ。
コットンに洗浄液を染み込ませる
まず、洗浄液をコットンに染み込ませます。
少しひたひたになるくらいまで染み込ませてOKです。
なお、先ほども少し説明しましたが、常温で放置した洗浄液をいきなり入れると冷たさでびっくりしてしまうかもしれません。
あらかじめ人肌くらいまで温めておくとよいでしょう。
初めて耳掃除をする際には、犬が警戒しないよう目の前に洗浄液のボトルや洗浄液を染み込ませたコットンを置いてみてください。
においをかがせたり自由に調べさせたりして、嫌がるそぶりをみせないかを確認するのをおすすめします。
コットンに染み込ませた洗浄液を耳の中に入れる
次は、コットンに染み込ませた洗浄液を耳の中に絞りだすようにして入れます。
その前に愛犬を呼び寄せ、座らせましょう。
警戒しないよう、犬をそばに座らせたら一度トリーツをあげてもよいかもしれません。
落ち着いているようであれば、スキンシップをとったり声掛けをしたりしながら、徐々に洗浄液を耳の中に入れる作業へ移行します。
耳の中の毛を抜く必要がある場合は、この時点で徐々に抜き取っていきます。
後で十分汚れが取れるよう、洗浄液はゆっくりと多めに絞り入れましょう。
耳の付け根をマッサージする
洗浄液を入れ終えたら、洗浄液がなるべくこぼれ落ちないように注意しながら、耳の付け根を持って優しくマッサージしてあげましょう。
マッサージをすることで耳垢や汚れが浮き上がってきます。
嫌がる可能性もあるので、嫌がるようなら最初のうちはマッサージせず、次の手順に進んでしまって大丈夫です。
耳から手を離し、犬に好きなように頭を振らせる
マッサージをしたら手を離しましょう。
すると、犬は耳に違和感をおぼえて頭や耳を振るはずです。
そうしたら洗浄液に混ざった耳垢が出てきて、耳の周りにくっつくことがあります。
そうしたものがあまり飛び散らないよう、犬とスキンシップをとってあんまり動かないようにするのがおすすめです。
汚れが出てきたときに拭き取る
頭を振ることで、汚れはかなり浮き出てくるはずです。
そうしたら、いよいよ汚れを拭き取ります。
コットンシートを使って、外耳(耳介)の溝周りからゆっくり、優しく拭き取っていきます。
溝が細かくて汚れが取れないといった場合があり得ますが、コットンシートを人差し指に巻き付けると、より細かいところまで拭えます。
犬用綿棒も使えますが、重ねて説明するように耳穴の中には入れず、目に見える範囲の溝に入った汚れを拭い取るときだけに使ってください。
洗浄液を入れた耳の中は湿っているので、乾燥したコットンボールを入れ、湿気も汚れと一緒に拭き取ってあげましょうね。
片耳の掃除が終わったら、犬を安心させるために一度トリーツを与えましょう。
その後で、もう片方の耳の掃除に取り掛かってください。
犬の耳掃除の注意点
犬の耳掃除の詳細な手順を紹介しました。
難しそうに思っていたけれど、意外とシンプルな手順だと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際にやるとなると意外と手間取ってしまうものです。
愛犬に初めて耳掃除をしてあげる場合には、いくつか注意点があります。
耳を掃除するときに力を入れすぎない
犬の耳は非常にデリケートです。
アニコム損害保険株式会社が発表している「家庭どうぶつ白書2021」の統計「犬の疾患(大分類単位)の請求割合」によれば、犬の疾患のなかで「耳の疾患」は3番目に多い(16.1%)と判明しています。
外耳炎を中心に、耳の病気は多く発生しているのです。
飼い主さんが耳掃除をしようとして綿棒を耳の中に突っ込んだり、耳掃除のときにゴシゴシと強めに拭くことも、外耳炎の原因のひとつといわれています。
耳掃除のときに力を入れすぎると、皮膚に傷がついて雑菌が繁殖し炎症を起こす、つまり外耳炎になる可能性があります。
耳の汚れは、なるべく優しく拭いてあげましょう。
犬の耳掃除に最適な洗浄液は、肌質・体質や好みにより変わる
先ほど、犬用のイヤークリーナーとして洗浄液タイプを進めましたが、洗浄液なら何でもいいわけではありません。
特に皮脂の分泌が多い子や肌質が弱く敏感な子の場合、低刺激・非アルコールのものを選んであげるとよいでしょう。
また、犬は元々嗅覚が鋭いこともあり、においが原因で耳掃除を嫌う子もいますので、においを嫌がる場合は無臭(無香料)の洗浄液を選びましょう。
老犬や病気の犬など、「頭を振る」のが難しい子もいる
犬は耳に違和感をおぼえるとよく頭を振りますが、それは健康で体に問題がない犬の話です。
病気や怪我の関係で頭や首をうまく動かせない子もいれば、老犬で体を動かすこと自体がおっくうになっている子もいます。
そうした子はなかなか自然には頭を振ってくれません。
そうした子は、それこそマッサージで汚れを浮かせてあげることが重要です。
老犬は若くて血気盛んな犬ほどは嫌がるそぶりは見せないので、おとなしくしているはずです。
ゆっくり、優しく耳の根元からマッサージしてあげて、徐々に汚れを取っていきましょう。
嫌がる耳掃除を成功させるためのポイント
以上のような注意を守っても、「そもそも犬が耳掃除を嫌がってしまって、耳に触ることすらできない」と悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
ここでは、そうした嫌がる犬の耳掃除を成功させるためのポイントを解説していきます。
まずは「耳を触られること」自体に慣れてもらう
いくら人間に懐きやすい犬であっても、触られるのが苦手な場所はあるものです。
頭・あごの下・背中などは撫でて喜ぶものの、尻尾や足の先をいきなりつかんだり触ったりすると怒ったり、避けたり、甘噛みしようとしたりする…というのはよくあります。
それと同様に、耳や耳の周りを触られるのが苦手な子もいます。
耳は今まで意識して触ってこなかった、という飼い主さんも多いでしょう。
犬も、あまり触られていない場所を触られようとすると警戒しますので、いざ耳掃除をしようとしても嫌がってしまいます。
そうした場合、まずは「耳に触られる」こと自体に慣れてもらわないといけません。
そのためには、普段から意識して耳を触るようにしましょう。
ただし、「徐々に・優しく」を意識してください。
おやつをあげているときのように機嫌がいいタイミングで、背中や頭など触られ慣れている場所から徐々に耳の近くへ手を持っていくように撫でていきます。
そして、あまりずっとは触らずに、耳周りから手を離して、おとなしくしていることをほめましょう。
これを根気強く繰り返すことで、犬も耳に触られることに慣れてくれます。
耳掃除をするときは、ほかのことに意識を向けさせる
耳掃除をするとき、犬とコミュニケーションをとることも大事ですが、犬は気まぐれですから、細かい掃除をしていると途端に警戒しだすことがあります。
犬におやつやおもちゃなどをあげてほかのことに意識を向けさせましょう。
動くタイプのおもちゃではなく、手で押さえて噛んで遊ぶタイプのおもちゃだと動かずにその場で集中して遊んでくれます。
なお、犬の耳掃除の際に安心してもらうためには、「耳掃除は怖いものではない」ことを態度で教えてあげられるのが理想です。
たとえば、優しく声掛けをしたり、スキンシップをしたりしながら徐々に耳掃除に移行するなど、自然なコミュニケーションを保ちつつ耳掃除を始めるとよいでしょう。
こうした犬が安心するスキンシップも、実はトリーツの一種です。
耳の病気が疑われる場合はまず動物病院で検査・治療を
「耳に触られるのには慣れている子のはずなのに、どうしても嫌がってしまう…」
そうしたときは、耳に不快感や痛みを抱えていて触られたくない気持ちになっているのかもしれません。
特に高い声で「キャン!」と鳴くのは、強い拒否や痛みの表れです。
普段から頭をよく振っているとか、耳をよく掻いたり、頭を傾けたりといった行動をしているとき、耳の違和感を犬が自覚している可能性があります。
また、耳の様子をチェックしてみて、耳垢が異様に多かったり、耳が臭かったりする場合には耳の病気を疑いましょう。
そうした症状がある場合には、耳掃除を無理にしようとはせず、かかりつけの動物病院で検査・治療を受けることをおすすめします。
ペットサロンの耳掃除価格
これまでは、飼い主さんが自力で愛犬の耳掃除をすることを前提に、色々と解説を行いました。
しかし、どうしても初めての耳掃除は不安という飼い主さんもいらっしゃるはずです。
不安なのに無理して耳掃除をしてもうまくいくわけがありませんし、最初は不安に思うのが普通です。
自分でやるのが不安であれば、ペットサロンや動物病院など専門の施設で、プロに耳掃除をしてもらいましょう。
料金に関しては、犬種や状態によってまちまちですが、動物病院では診療費込みで1,500円~2,000円ほどが相場です。
また、プロのトリマーさんが経営するペットサロンでは、耳掃除代金の相場は500円~1,000円程度です。
ただし、サロンによってはコースやプランの料金に耳掃除が含まれていることもありますので、確認してみましょう。
まとめ
以上、犬の耳掃除に必要な道具の選び方から耳掃除の具体的手順、成功させるポイントやプロに任せる際の価格相場などを解説しました。
記事内でも解説したとおり、健康な犬には耳掃除は不要です。
そのため、最初から無理して耳掃除しようとか、自分でやろうと思わず、「そもそも耳掃除が必要なのか」から考えてみてくださいね。
そのうえで耳掃除の必要を感じたら、初めてで不安な場合はペットサロンや動物病院などに連れて行って、プロに耳掃除をやってもらいましょう。
もし自分でやる場合は、この記事を参考に、できる範囲で愛犬の耳掃除をやってみてください。
この記事のライター
Tommy
2匹と1人で田舎暮らし。犬と暮らす中で出てくる疑問を解消できるような記事をお届けします。