犬のマズルコントロールは本当に必要なしつけ?手順や注意点を解説!
愛犬と快適に暮らすには、きちんとしたしつけが必要です。
マズルコントロールは効果的なしつけ方法のひとつですが、犬種や性格によってはマズルコントロールに向いていない場合があるのはご存知でしょうか?
この記事では、マズルコントロールのメリットやしつけ方、注意点などについて詳しく解説します。
マズルコントロールの必要性について正しく理解し、愛犬との仲をより深めていきましょう。
マズルは犬のどの部分?
マズルとは、犬の鼻先から口まわりの部分のことです。
犬にとっての急所であり、感覚器官が集中している繊細な部位でもあります。
マズルは口吻(こうふん)ともよばれ、その長さによって長頭種、中頭種、短頭種の3種類に分けられます。
犬種で分けると以下のようになるので、愛犬がどの種類に該当するのか確認してみてください。
- 長頭種:ダックスフンド、ボルゾイ、ウィペット、イタリアングレーハウンドなど
- 中頭種:柴犬、ラブラドールレトリバー、トイプードル、コーギーなど
- 短頭種:ブルドッグ、パグ、ボストンテリア、フレンチブルドッグなど
犬のマズルコントロールとは?
マズルコントロールとは、急所であるマズルに触れたり握ったりすることで、犬に対して優位性を示すしつけ方法です。
親犬が子犬を叱るときの、マズルに顎を乗せたり口で覆ったりする習性が由来とされています。
効果的なしつけ方法としてよく用いられ、愛犬と飼い主の上下関係を構築する手段として使われています。
しかし、先ほども述べたとおりマズルは犬にとっては急所です。
マズルを力強く握ったり覆ったりすることは、犬にとって苦痛や恐怖を与える恐れがあります。
そのため、「マズルコントロールは犬に負担をかけるので、しつけに用いるべきではない」という考え方があることも理解しておきましょう。
また、ブルドックのような短頭種はマズルが短いため、しつけとしてマズルコントロールをするのは困難です。
短頭種に対してマズルコントロールをしたい場合は、代わりに口元を触る訓練をするとよいでしょう。
マズルコントロールのメリット
強い力でのマズルコントロールは推奨できませんが、適切に行うのであれば以下のようなメリットが期待できます。
- 吠え癖や噛み癖の矯正ができる
- 歯の手入れがしやすくなる
- マズル周辺の異変に気づきやすくなる
- 興奮状態を落ち着かせられる
- 落ち着いて病院の診察を受けられる
それぞれ詳しく解説していきます。
吠え癖や噛み癖の矯正ができる
しつけがうまくいっていない犬は、自分の要求をとおすために吠えたり噛んだりとわがままになることがあります。
このような状態を改善するには、愛犬と飼い主の上下関係をしっかりと理解させる必要があります。
このときにマズルコントロールをうまく利用すると、吠え癖や噛み癖の矯正につながるでしょう。
歯の手入れがしやすくなる
マズルは犬にとって鼻や口といった感覚器官が集中する場所なので、触られるのを嫌がることが多いです。
マズルコントロールによってマズルに触られるのに慣れた状態にしておくと、歯の手入れがしやすくなります。
歯の手入れは定期的に必要なことなので、マズルコントロールによってこの手間が減ることは大きなメリットといえます。
マズル周辺の異変に気づきやすくなる
マズルは目や鼻といった重要器官に近いので、異常があったときに早期発見しやすくなるというメリットもあります。
また、パグやブルドックといった短頭種は、その短いマズルのために「短頭種症候群」という病気にかかりやすい特徴があります。
主に呼吸がしづらくなる症状ですが、普段からマズルを意識することでこのような異常にも気づきやすくなるでしょう。
マズルコントロール中に何か異常を感じたら、すぐにかかりつけの動物病院へ相談してください。
興奮状態を落ち着かせられる
犬によって性格はさまざまなので、なかには興奮しやすい犬もいます。
特に子犬のときは興奮しやすく、力を抑えられずに思わぬ事故に繋がってしまうこともあります。
おすわりやお手といった一般的なしつけで落ち着かせるのが理想ですが、それでもおさまらないときにはマズルコントロールが有効です。
マズルを抑えられることで犬は本能的に叱られていることを理解し、落ち着いてくれるでしょう。
落ち着いて病院の診察を受けられる
多くの犬は病院の診察が苦手です。
病院では口まわりに触られることも多いので、慣れていない犬だと暴れまわってしまうこともあります。
マズルコントロールをしている犬であれば、このような環境でも落ち着いて診察を受けられるでしょう。
動物病院は何かと利用することが多いので、落ち着いて診察が受けられる点もマズルコントロールのメリットといえます。
マズルコントロールを行う時期
マズルコントロールは親犬が子犬にするしつけ方法がもとになっているので、子犬の時期から始めるのがよいです。
成犬になってから始めても、マズルに触られるのを嫌がったり、思ったほどの効果が得られなかったりする場合があります。
また、犬が飼われている環境に慣れていないうちから、マズルコントロールをするのもおすすめできません。
マズルに触れられることは犬にとってはストレスとなるので、警戒心を植え付けてしまう危険性があります。
マズルコントロールのやり方
マズルコントロールといっても、急に愛犬のマズルを掴んだりするのはやめましょう。
マズルは犬にとって繊細な部位なので、少しずつ慣らしていく必要があります。
マズルを触ることは、愛犬との信頼関係を悪化させる危険性があるので注意しましょう。
基本の4ステップ
マズルコントロールのやり方は、以下の4ステップが基本となります。
- マズルを触られることに慣れさせる
- マズルを触る時間を伸ばす
- マズルを掴まれることに慣れさせる
- 掴む時間を伸ばす
それぞれ詳しく見ていきましょう。
マズルを触られることに慣れさせる
いきなりマズルに触るのではなく、まずは体や頭から触るようにしましょう。
そこから少しずつマズルに触れていきます。
マズルは繊細な部分なので最初は嫌がるかもしれませんが、飼い主からのスキンシップであることが伝われば少しずつ慣れていってくれるでしょう。
普段から愛犬との信頼関係を築けていれば、徐々に触ることを許してくれるはずです。
マズルを触る時間を伸ばす
マズルに触ることを許してくれるようになったら、少しずつ触る時間を伸ばしていきます。
飼い主に触られることは嫌なことではない、ということを愛犬に覚えてもらうようにします。
数秒触っていても嫌がらなくなってきたら、次の段階へ進みます。
マズルを掴まれることに慣れさせる
愛犬がマズルに触られることに慣れてきたら、軽く掴んでみます。
掴むといっても力を入れずに、マズルを覆うようなイメージで行うのがよいでしょう。
興奮しているときではなく、愛犬がリラックスしているときに行うのがポイントです。
掴まれているときに抵抗したり噛み付いたりしなければ、たくさん褒めてあげることも忘れないでください。
ずっと掴んでいるのではなく、短い間隔で何度も繰り返すことによって少しずつ慣れていってくれます。
掴む時間を伸ばす
軽く掴んでも落ち着いてきたら、掴む時間を伸ばしたり優しく上下左右に振ってみてください。
マズルを掴んでぐるっと1周できるようになったら、マズルコントロールをマスターしたといってもよいでしょう。
このときも力加減には注意してください。
力を入れすぎると、愛犬に恐怖心や警戒心を植え付けてしまうことがあります。
悪いことをしたときはマズルを掴む
マズルを掴んでも落ち着いている状態になったら、しつけとしてマズルを掴むのが有効になります。
マズルコントロールは親犬が子犬を叱るときに行う習性がもとになっているので、本能的に叱られていることを理解してくれます。
愛犬が悪いことをしたときには、マズルを掴むというしつけも実践してみましょう。
マズルコントロールの注意点
マズルコントロールは有効なしつけ方法ですが、以下のような注意点もあります。
- 必ず必要なしつけではない
- 無理矢理過ぎるマズルコントロールはしない
- 人間に不信感を抱いている犬にはやらない
これらを理解しておかないと、愛犬との信頼関係が崩れてしまう恐れがあるので注意してください。
必ず必要なしつけではない
マズルコントロールは必ずしも必要なしつけではありません。
犬種や愛犬の性格によっては触られるのを極端に嫌がる場合もあります。
無理にマズルコントロールをすることによって、愛犬が攻撃的になってしまうこともあるかもしれません。
マズルコントロールをする際には、愛犬との信頼関係を一番に考えて過度なストレスを与えないようにしましょう。
無理矢理過ぎるマズルコントロールはしない
マズルコントロールがしつけに有効だからといって、無理に行うのはよくありません。
急所であるマズルを触られることがストレスになる犬にとって、無理なマズルコントロールは生活に悪い影響を与えます。
飼い主との信頼関係が崩れる恐れもありますし、愛犬がストレスにより体調を崩してしまうこともあります。
マズルコントロールをするときにはゆっくりと時間をかけて少しずつ慣らしていってください。
人間に不信感を抱いている犬にはやらない
人間に不信感を抱いている犬に対してマズルコントロールをすると、ときには噛みつかれてしまう危険性もあります。
口元を触るときには、このような怪我にも注意が必要です。
まだ人間に慣れていない犬に対しては、マズルコントロールより先にまずは信頼関係を築くことから始めましょう。
まとめ
マズルコントロールのメリットや、やり方について紹介しました。
マズルコントロールはメリットも多く有効なしつけ方法ですが、やり方を間違えると愛犬との信頼関係を崩すことになりかねません。
また、犬種や性格によっては、大きなストレスを感じてしまうこともあります。
愛犬にマズルコントロールが必要かどうかをしっかりと見極めて、しつけに取り入れるかを検討してみてください。
この記事のライター
nana
泳ぎも走りも得意な運動神経抜群のゴールデンレトリバーと暮らしています!今は愛犬とタンデムサーフィンの練習中。いつまでもアクティブに楽しく過ごせるような情報を発信していきます。
飼育に関する知識に関する記事
健康管理/病気
【獣医師監修】愛犬が交通事故に遭ってしまったらどうしたらいい?もしもの時のために知っておきたい対処法や法律上の対応
犬は屋外での散歩を必要とする以上、交通事故の危険性と常に隣り合わせです。しかし、万が一交通事故...
2024年3月26日
健康管理/病気
【獣医師監修】知っておきたい犬の熱中症に関する基礎知識|初期症状や見分け方、予防法などを紹介します
汗をかいて体温調節ができない犬にとって、高温多湿になる夏(6~9月)は特に気をつけたい季節です...
2024年3月22日
健康管理/病気
【獣医師監修】犬の高脂血症とは?症状はある?発症の原因や治療法、予防法なども解説
自覚症状がほとんどなく進行し、命に関わる病気を引き起こす生活習慣病は「サイレントキラー(沈黙の...
2024年3月21日
健康管理/病気
【獣医師監修】老犬にとって気をつけたい病気を知りたい|かかりやすい理由と対処法もあわせて解説します
一見元気そうに見えても、犬の身体は人間と同じで年齢と共に少しずつ衰えていくもの。老化に伴う、犬...
2024年3月14日
健康管理/病気
【獣医師監修】犬の貧血について|免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の症状・原因と治療法を解説します
人間と同じように、犬も貧血になることがあります。犬の貧血の原因はさまざまで、治療により回復する...
2023年11月29日