犬のマイクロチップ装着が義務化。かかる費用やメリット・デメリットを解説します
2019年6月に改正動物愛護法が可決され、犬・猫へのマイクロチップの装着が義務付けられました。すでに犬と暮らしている場合は努力義務となっていますが、愛犬の体への負担や費用のことなどを考えると、気になる部分もあるのではないでしょうか。
そこで今回は、新しく家族を迎えようとしている方や、愛犬にマイクロチップを装着するか悩んでいる方のため、マイクロチップを装着する方法やかかる費用、マイクロチップを装着するメリットとデメリットを解説していきます。
マイクロチップの装着にかかる費用や装着方法
犬や猫に埋め込むマイクロチップは、長さ1cm程度・幅2mm程度の円筒形をしています。それぞれ15桁の識別番号が記録されており、その識別番号は複数の民間組織で管理されています。
専用のリーダーさえあれば、マイクロチップに記録されているその犬の識別番号を読み取ることができ、犬の住所や飼い主などの個体情報を取得することが可能です。
まずは、マイクロチップの装着にかかる費用や装着できる場所をご紹介します。
マイクロチップ装着にかかる費用
動物病院によって犬のマイクロチップの装着にかかる費用は異なりますが、数千円から1万円程度です。これにプラスして、犬や飼い主の情報の登録に1,000円程度かかりますが、動物病院の費用に登録料も含まれている場合が多いです。
自治体や獣医師会から犬のマイクロチップの装着に助成金が出る場合もあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
マイクロチップは動物病院で装着
マイクロチップの装着は、動物病院で獣医師が専用の注射器を用いて犬の体内に埋め込みます。マイクロチップを埋め込む場所は皮膚の下の皮下組織ならどこにでも可能ですが、犬の首の付け根の背中側に埋め込むことが多いです。
基本的には、マイクロチップの装着は注射だけなので麻酔はせずに行いますが、犬が暴れてしまう場合には、全身麻酔や鎮静をすることもあります。また、犬の避妊手術や去勢手術と一緒に行うことも可能です。
マイクロチップに情報を登録する方法と装着するメリット
マイクロチップには、識別番号しか記録されていないので、データベースに愛犬の身元についての登録をする必要があります。
情報の登録はマイクロチップ装着後に行う
情報の登録は犬がマイクロチップ装着後に飼い主が行います。
日本獣医師会に氏名や住所、電話番号などを記載した登録用紙を送ることで、情報が日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会、日本獣医師会によって構成される「動物ID普及推進会議(AIPO)」のデータベースに登録されます。
この情報は、動物病院や動物愛護センターから照会できるので、マイクロチップを装着した犬が動物病院や警察署、動物愛護センターで保護されると、マイクロチップの情報から飼い主の情報にたどり着くことが可能となるのです。
マイクロチップを装着するメリット3つ
犬にマイクロチップを装着することで、以下の3つのメリットが得られます。
1.連れ去られたときに身元証明ができる
万が一、愛犬が誰かに連れ去られた場合、愛犬と思われる特徴があり自分の犬だと主張しても、その根拠を証明できず取り戻せないといったことがあるかもしれません。
しかし、マイクロチップを装着していれば、警察署で愛犬の身元証明ができるので連れ戻すことができます。
2.殺処分を免れる確率が高くなる
もし散歩のときにリードが外れたりなどして、犬が迷子になってしまったとき、誰かが保護して動物愛護センターに収容されていることも考えられます。
動物愛護センターでは、犬を殺処分が前提の一時的な保護しかしないことから、収容期間内に飼い主が見つからなければ殺処分になってしまいます。
犬の身元が証明できるようにしておくと殺処分になるのを防げるので、マイクロチップを装着するメリットは大きいといえるでしょう。
3.災害などではぐれてしまった際に見つけやすくなる
マイクロチップが装着されていると、災害時や不慮の事故などの時に家族とはぐれてしまった愛犬を見つけやすくする、というメリットがあります。
2017年の環境省の報告によると、熊本県地震の際に保護された犬は1,094頭で、このうち飼い主の元へ無事に帰れた犬は400頭でした。そのうち、迷子札やマイクロチップを装着していた犬は368頭です。
身元を証明できるものがないと、混乱の状況下では犬の飼い主がなかなか見つからないケースが多いということが分かっています。(※1)
犬にマイクロチップを装着するデメリットは?
マイクロチップにはデメリットがあるのか、マイクロチップ装着後に取り出すことができるのかについても知っておきましょう。
デメリットも存在する
現在までのところ、マイクロチップが犬の体に対して何らかの悪影響を及ぼした事例は報告されていません。
しかし、犬が病気になった場合、CT検査やMRI検査を行う際に問題が生じる可能性があります。背中に埋め込むことが多いマイクロチップですが、犬の皮下組織はルーズで空間があり、当初の場所と異なる部位にマイクロチップが移動することがあります。
マイクロチップの中には金属が入っているので、CT検査やMRI検査をした際にCT画像では「ハレーション」といって、マイクロチップを埋め込んだ部分が光って見えたり、MRI検査でもその領域はブラックホールのように黒く抜けた画像になったりします。
また、全体的な画像も少しぶれ、診断がやや難しくなる場合があります。
マイクロチップを取り出すことは可能
獣医師の先生によると、日常の診療の中で犬にCT検査やMRI検査を行なう際、特にMRI検査のときはマイクロチップを取り出すことがあるとのことです。
MRIによって検査をする領域は背骨の中の脊髄が含まれていることも多く、正しい診断を下すために犬からマイクロチップを取り出さなければならないときがあるからです。
MRI検査自体にも全身麻酔が必要となるので、取り出しは全身麻酔下で行うことになります。触診あるいはX線透視画像を見ながらマイクロチップの位置を確認して、その上の部分だけを切開し、マイクロチップを取り出して縫合します。
それほど大変な処置ではありませんが、多少の痛みは伴うので、万が一取り出すことになった際は愛犬のケアをしてあげてくださいね。
マイクロチップの装着は有用性が高い
マイクロチップには、デメリットがまったく存在しないわけではありません。しかし、デメリットを考慮してもマイクロチップの有用性は非常に高く、災害時にマイクロチップを装着していたおかげで、飼い主さんの元に戻れた犬が多くいたことも事実です。
マイクロチップへの理解を深め、努力義務の対象となっている飼い主さんも、愛犬のために装着すべきかどうか検討してみてください。
参考文献
この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。
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