抜け毛が少ない犬種は?被毛や抜け毛の仕組みとお手入れのコツ
犬と暮らす上で避けては通れないのが「愛犬の抜け毛問題」。部屋に抜け毛が散乱したり、抜け毛の手入れ不足で愛犬の皮膚病を招いてしまうこともあります。これから犬を飼いたいと考えている人の中には、なるべく抜け毛が少ない犬を迎えたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、抜け毛が少ないからと言って皮膚・被毛のお手入れをしなくていい訳ではないのです。ここでは、抜け毛が少ない犬の種類や抜け毛の仕組みをご紹介すると共に、皮膚・被毛を健康にするためのお手入れ方法をご紹介します。
人間の髪の毛と犬の被毛の違い
犬の被毛は、タンパク質が主成分となっており、猫の毛や人間の髪の毛と全体の構造・性質といった点でほぼ同じであることが分かっています。しかしながら、犬種によっては毛が伸びなかったり、手触りも人間の髪の毛とは異なる気がしますよね。一体、犬の被毛と人間の髪の毛にはどのような違いがあるのでしょうか?
1.毛穴1本から生える毛の本数が違う
人間の場合、1つの毛穴からは基本的に1本の毛しか生えていませんが、犬の場合は一次毛・ニ次毛と呼ばれる全ての毛が1つの毛穴から生えています。犬の毛のうち、一次毛は2〜5本の太くて長い毛、二次毛は複数の細くて柔らかい毛で構成されており、1つの毛穴から平均して7〜15本の毛が生えています。
太い毛である一次毛(上毛)のことをオーバーコート・トップコート、細い二次毛(下毛)のことをアンダーコートと呼ぶこともあります。また、暖かい気候が原産の犬種には、二次毛がない犬種も多くいます。いずれにせよ犬の毛は、人間の髪の毛よりも密集して生えていることが多いため、シャンプーやブラッシングは毛を掻き分けるようにするのがコツです。
オーバーコートとアンダーコートの役割
犬の体を覆う被毛のうち、オーバーコートは主に皮膚を保護する役割があり、アンダーコートには保温や保湿といった役割があります。一般的に「冬毛」と呼ばれる毛はアンダーコートに当たります。
2.キューティクルの層が違う
人間の髪の毛はキューティクルが3〜4層にも重なり、とても丈夫な構造になっています。一方で、犬の被毛はキューティクルが1〜2層で被毛も細いため、手触りはパサパサしており、水分も十分に蓄えることができません。キューティクルが少なくても外部の刺激から被毛を守るために犬の毛穴からは適度な脂が分泌され、被毛をコーティングしていると考えられています。
そのため、犬用シャンプーは人間用シャンプーよりも脂を取りすぎない処方で作られています。また毎日のシャンプーでは逆に脂を取りすぎてしまう可能性があるので、3週間〜1ヶ月に1度の頻度でのシャンプーが推奨されています。
毛周期と抜け毛の関係性
犬の被毛は、春と秋にいわゆる「換毛期」と呼ばれる大量に毛が抜ける時期があります。しかし、実際には換毛期だけでなく、日々の生活の中でも毛は抜けています。
換毛期に毛が抜けるのはダブルコートの犬種
犬はアンダーコートを持たない「シングルコート」とアンダーコートが密生する「ダブルコート」の犬種がいます。このダブルコートを持つ犬種は、春・秋の年に2回のタイミングで換毛期が訪れ、通常時よりも毛が大量に生え変わります。つまり、シングルコートの犬種は目立った換毛期はありませんが、ダブルコートの犬種は分かりやすく換毛期があり、この時期の抜け毛が非常に多くなります。
生活環境によっては明確な換毛期が無い犬もいる
最近では温度が一定に保たれた室内で過ごす犬が増えているため、毛が生え変わる必要があまりなく、ダブルコートであっても分かりやすく毛が生え変わらない犬もいます。中には、夏場にエアコンが効きすぎた部屋で生活していたために体が寒い季節と判断し、冬毛が生えてきてしまうようなケースもあります。
毛周期の違いが日々の抜け毛量を左右する
犬の被毛は、一定の周期で発育と脱毛を繰り返しており、この被毛の発育周期のことを「毛周期」と呼びます。毛周期は、成長期・退行期・休止期の3つの期間に分類することができますが、一般的に、ラブラドールレトリバーやパグ・ブルドッグ等の毛の長さが短い短毛犬種は、毛周期の3つのサイクル期間が短く、短期間で毛が抜け変わるため、抜け毛の量が多い傾向があります。
逆にマルチーズやキャバリア等の毛が長い長毛犬種は毛が伸び続ける期間「成長期」が長く続くため、毛周期がゆっくりで抜け毛は少なめと言えます。
また、柴犬やハスキー等の毛の長さが中間くらいの犬種(最近は中毛種と呼ばれることもあります)もいますが、毛周期の考え方はどちらかと言えば短毛種に近く、日々の生活の中でもよく毛が抜け落ちています。
抜け毛が少ない犬種・多い犬種
これまでの解説により、日常的に抜け毛が少ないのは長毛種、換毛期に抜け毛が少ないのはシングルコートの犬種ということが分かりました。では実際にはどのような犬種が該当するのでしょうか?
シングルコートの犬種
シングルコートを持ち、抜け毛が少ないと言われている犬種にはプードル、ダックスフンド、パピヨン、ヨークシャー・テリア、マルチーズなどが挙げられます。ダブルコートの犬種のようにごっそりとした抜け毛はありませんが、ブラッシングによる被毛のお手入れは欠かせません。
ダブルコートの犬種
ダブルコートの犬種には柴犬、コーギー、ゴールデン・レトリーバー、ポメラニアンなどが挙げられます。アンダーコートは濡れると乾きにくいので、シャンプーする際には事前にブラッシングで不要な毛を除去し、蒸れないようドライヤーで完全に乾かしましょう。
長毛種の犬の種類
毛周期が長く、比較的日常的な抜け毛が少ない長毛種の犬種と言えば、マルチーズ、シーズー、キャバリア、プードルなどが挙げられます。しかし長毛種の中にはゴールデンレトリーバーのように換毛期にはがっつり毛が抜けるダブルコートの犬種もいます。
どんな犬にも必要な抜け毛対策
犬の抜け毛対策にはブラッシングが重要です。特にアンダーコートの生えている犬種では、表面だけ撫でるようにブラッシングしても毛は抜けないので、オーバーコートだけでなくアンダーコートから抜け毛を除去するイメージを持ってブラッシングをします。あまり強くやりすぎるのではなく、ブラシを持たない方の手で毛をかき分けながら行うのが上手なブラッシングのコツです。
スリッカーブラシの使用方法と注意点
犬のブラッシングに使用するブラシの種類にはピンブラシやラバーブラシ、獣毛ブラシなどがありますが、抜け毛を除去する目的で最も一般的に選択されるブラシはスリッカーブラシです。スリッカーブラシは目が細かいので、抜け毛を効率的に除去することができます。
使用方法
手のひらで握るようにして持つと、力が入りすぎてしまい犬の皮膚を傷つけてしまいます。親指と人差し指、中指で鉛筆を持つように軽く持ちましょう。毛をかき分け、根元からかけていきます。
使用上の注意点
力を入れてブラッシングすると犬は擦過傷を起こしたり、痛い思いをすることでブラッシング=嫌なものと記憶し、次からブラシを見ると逃げ回ったりブラシに咬みつくようになることがあります。自分の腕をブラシで撫でてみて、痛くない力加減で優しく丁寧にブラッシングしましょう。
公共の場では抜け毛を落とさないような配慮も
ドッグカフェや犬連れOKのショッピングモール、友人の自宅に犬連れで遊びに行った際など、出来るだけ抜け毛は減らしたいものですよね。もしも犬が嫌がらなければ服を着用させ、散乱する毛を減らすという手もあります。完全に抜け毛をゼロにすることはできませんが、外出前にブラッシングやシャンプーをしてなるべく抜け落ちる被毛を減らしておくことも可能です。
抜け毛が少なくても被毛のお手入れは大切
シングルコートの犬は抜け毛が少なく、ダブルコートの犬と比べると掃除やお手入れが楽かもしれません。しかし、個体によっては抜け毛が多い場合もあり、抜け毛が少ないと言われている犬種であってもブラッシングを怠ると毛玉になってしまうことがあります。どの犬種であっても、日頃の皮膚・被毛のお手入れは欠かさないようにしましょう。
この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。