犬の血便の特徴や原因は?考えられる病気や対処法についても解説
普段何気なく見ている愛犬の便に血が付いていると不安ですよね。
犬が血便をする原因はさまざまで、色や粘度により深刻度も変わってきます。
今回は血便の原因や考えられる病気、動物病院へ連れて行く際の注意点や家でできる対処法を解説します。
血便の特徴
血便は便に血液が混ざった状態で、下痢とは違う特徴を持っています。
血便の原因を探る前に、まずは愛犬がした便が本当に血便であるのかを確認しておきましょう。
血便の特徴1:色や粘度
ひとことに血便といっても色や粘度は以下のようにさまざまです。
- 便の色が赤い
- 便の色が黒い
- 便に血が付いている
- ゼリー状の粘液と一緒に血が付いている
便の色が赤い場合、肛門から比較的近い場所で出血が起きている可能性が高いといえます。
肛門周りの出血や、肛門から近い大腸や直腸からの出血が考えられるでしょう。
便の色が黒い場合、肛門から遠い場所から出血している可能性が高いと考えられます。
血液は時間が経ったり小腸の消化酵素より黒くなるためです。
肛門から遠い胃や小腸、口の中の出血を飲み込んでしまって便に混ざっていることなどが推測できます。
また血が便に混ざるのではなく表面についている場合、考えられるのは腸の粘膜からの出血です。
血液が便に混ざっていないということは、ある程度便が形になった後に肛門に向かって運ばれる際に付いたものだと推測できます。
真っ赤な便だけが血便ではなく、黒色の便も血便であると知っておきましょう。
血便の特徴2:臭い
血便という名前のとおり、血便は血液独特の鉄のような臭いがします。
特に黒色の便を出した場合、血便かどうか判断に迷う飼い主さんも多いですが、臭いを嗅いでみると、血の臭いがするためわかりやすいでしょう。
ただし赤色の便であっても血便だと判断するのは早計です。
ビーフジャーキーのような赤い色のオヤツには添加物として色素が使われている場合があり、色素が便に混ざると血便のような赤い便を出す場合があります。
愛犬が血便をしたら驚いてしまうとは思いますが、まずは普段と何か違うものを食べさせていないか、香ってくる臭いは血の臭いがするか確認しましょう。
血便の深刻度
血便の深刻度は原因によって異なりますが、まれに血が付く程度であればそれほど心配する必要はないでしょう。
便秘によって出た硬い便が粘膜を傷つけて出血する場合もありますし、ストレスにより一時的に血便を起こした可能性があるためです。
ただし2日以上血便が続いている場合や出血の量が多い場合、嘔吐や元気消失などほかの症状が見られた場合は動物病院を受診しましょう。
体の中に腫瘍ができていたり、重大な病気であったりする可能性も否定できません。
出血量が多い場合、愛犬が貧血になってしまう可能性もあります。
貧血を起こすと舌や歯茎の色が白っぽく変化するため、血便が出始めたら注意して観察してください。
血便を起こしやすい犬種はいるのか
血便を起こしやすい犬種や性別に差はなく、どんな犬でも血便を起こす可能性があります。
ただし年齢差は多少見られ、子犬や高齢犬は注意しなければなりません。
子犬の場合ワクチンプログラムが終わっていなければ重大な感染症にかかってしまう危険があります。
高齢犬は消化機能の衰えで便秘になりやすく、腫瘍もできやすいためです。
子犬や高齢犬を飼っている場合は特に毎日の便の観察をしっかりと行い、異常がないか確認しましょう。
下痢との違い
血便の色や臭いなどの特徴を見てきましたが、血便と下痢は違う症状のため混同しないように注意しましょう。
便の異常といえば形状が異なることだけに注目しがちですが、血便は便に血が混ざった状態で、下痢は便に含まれる水分量が多く、便が軟らかくなってしまう症状です。
特に粘度の高い血便と下痢は間違いやすい部分ではありますが、血が混ざっていない下痢であれば血便とはいいません。
下痢も病気や食事、ストレスなどさまざまな原因で起こります。
愛犬の便を見るときは正常な形か、血は混ざっていないかと一緒に何か環境の変化がなかったかも思い出してみてください。
血便の原因
愛犬が出したのが本当に血便だとわかったら、どうして血便を出したのだろうと不安になりますよね。
血便は原因によって治療が必要なものから、飼い主さんの改善によって治まるものまでさまざまです。
- 病気
- 食事
- ストレス
血便の原因として考えられる上記の3つについて、順番に見ていきましょう。
病気
犬の血便の原因として考えられるのが病気です。
愛犬の血便を発見したら飼い主さんもまず病気を考え、不安になるのではないでしょうか。
この後の考えられる病気で詳しく見ていきますが、血便の原因となる病気は体の中に存在する腫瘍や消化管のトラブル、感染症などさまざまです。
また消化管に問題ない場合でも、寄生虫の大量寄生により血便が起こっている場合や血液凝固異常などの遺伝的な疾患についても考えなければなりません。
放置すると重篤な症状になる場合もあるため、血便を見つけたら早めに病院へ行き、検査を受けることが一番の解決法です。
食事
血便の原因のひとつとして考えられるのが食事です。
今までと違うフードに急に切り替えたり、与えすぎたりした後に血便が見られた場合、食事が原因の可能性が高いといえるでしょう。
消化不良を防ぐため、フードは急に切り替えず、今まで使っていたフードと混ぜて与えましょう。
2週間程度かけてゆっくりと切り替えていくようにしてください。
また食物アレルギーの可能性も考えられます。
フードを変えてすぐに血便を起こした場合や皮膚病を伴う場合、食事アレルギーが疑えるため、飼い主さんは愛犬が口にする食事についても把握しておきましょう。
ストレス
血便の原因の一つとしてストレスも考えられます。
犬は環境の変化に敏感で、ストレスを感じやすい動物です。
血便を起こす前、以下のような変化がなかったかどうか確認しましょう。
- 引っ越しや家族の増減があった
- 旅行や遠出をした
- ペットホテルに預けた
- 家周辺での雷や花火、工事があった など
腸内環境を正常に戻すために動物病院を受診する必要はありますが、ストレスであれば原因を取り除いてあげることで回復する可能性が高いといえます。
考えられる病気
ストレスの原因のひとつとして病気を挙げましたが、考えられる病気はさまざまです。
- 食物性アレルギー
- 胃潰瘍
- 犬パルボウイルス
- 慢性腸炎
- 腸閉塞
- リンパ腫
血便を起こす病気は上記だけではありませんが、それぞれの病気について概要を見ていきましょう。
食物性アレルギー
食物性アレルギーは特定の食材を食べることによりアレルギー反応が起こる病気です。
血便のほか、以下の症状を示します。
- 皮膚の痒み
- 嘔吐
- 下痢
食物アレルギーの原因となる食べ物は犬によって異なり、鶏や豚、牛、羊だけではなく大豆や小麦、大麦、白米などさまざまです。
食物性アレルギーを疑った場合動物病院で相談し、低アレルギー食を使いつつ血液検査をして確定診断をしていきましょう。
胃潰瘍
胃潰瘍は胃の粘膜や内壁が荒れてただれてしまう病気です。
原因としては胃酸の過剰分泌や、胃の血流が少なくなることが考えられます。
血便のほかに、以下の症状を示します。
- 嘔吐
- 貧血
- 食欲不振
- 元気消失
- 脱水 など
胃潰瘍の原因は、内科的なものから腫瘍までさまざまです。
検査を行い、胃潰瘍の原因となる病気の治療と胃潰瘍で出てきた症状への対症療法を行います。
犬パルボウイルス
犬パルボウイルスは重度の胃腸炎を引き起こす感染症で、パルボウイルスの感染によって発症します。
ワクチンによって防げる病気ではあるものの、ワクチンプログラムが終わらず免疫がしっかりと付いていない子犬では重症化して命を失う可能性もあるため注意が必要です。
犬パルボウイルスは血便のほかに以下の症状を示します。
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 重度の胃腸炎
犬パルボウイルスは発症した場合、早く治療を行わなければ命にかかわることもある恐ろしい病気です。
ワクチンを打ち忘れている成犬は今からでも遅くありません。
しっかりとワクチンを接種しましょう。
慢性腸炎
慢性腸炎とは慢性的に腸に炎症が起きている状態です。
原因は遺伝やストレス、寄生虫によるなどさまざまで、大きな病気が隠れていることも否定できません。
慢性腸炎は血便のほか、以下の症状を示します。
- 下痢
- 嘔吐
- 食欲不振
- 体重減少
- 元気消失
慢性腸炎は出ている症状を抑えるための治療と、原因に対する的確な治療が必要です。
症状が緩やかであって緊急性がない場合でも早めに病院に連れて行き、原因を特定しましょう。
腸閉塞
腸閉塞は異物や腫瘍、炎症などにより内容物の流れが止まってしまう疾患です。
原因としては異物の誤飲や腸重積、寄生虫の大量寄生、腫瘍、ヘルニアなどが考えられ、血便のほかに以下の症状を示します。
- 嘔吐
- 腹痛
- 腹部膨満
腸の流れが止まったり滞ったりしてしまうと嘔吐や腹痛が起こり、行き場のないガスが溜まるとお腹が膨らんで見えるのが特徴です。
完全な閉塞を起こしている場合や腸粘膜が損傷している場合、毒素が体に回りショック状態を発症することも考えられ、非常に緊急性の高い病気といえます。
犬も苦しそうな様子が見られるため、様子見せずにすぐに動物病院を受診しましょう。
リンパ腫
リンパ腫は血液細胞の一つである白血球が腫瘍性に増殖するタイプの血液のガンです。
原因ははっきりと解明されていませんが、症状の進行に伴い血便のほかにも以下の症状が見られます。
- リンパ節の腫れ
- 食欲低下
- 元気消失
- 嘔吐
- 呼吸困難
- 体重減少
リンパ節の腫れ以外、特別リンパ腫だけに出る症状はありません。
予防法もないため、早期発見と早期治療を行うことが重要です。
普段から愛犬の体をよく触り、リンパ節の腫れがないか、普段と比べて変わった部分はないかなど変化に気付けるようにしておきましょう。
血便の対処法
血便の対処法としてまず挙げられるのは、早急な動物病院の受診です。
見てきたとおり血便の原因はさまざまであるため、原因にはっきりとした心当たりがない場合は血便をした時点で様子を見ず、病院に連れて行きましょう。
病院に連れて行く際の注意点と家でできる生活環境の見直しについて解説します。
病院に連れて行く際の注意点
病院に行く際は直前に出た血便を持っていって獣医師に見せると、診察がスムーズになります。
血便をティッシュに包んでしまうと水分が吸い取られてしまうため、ラップやビニール袋に入れて持っていくとよいでしょう。
また前述したとおり血便の原因として寄生虫も考えられるため、飼い主さんが便を取る際はビニール手袋や割り箸などを利用して取ってください。
直前に便をしなかった場合、スマートフォンのカメラを利用して写真を撮り、獣医師に見せましょう。
受付では血便の特徴と排泄時間、回数、便の硬さ、ほかの症状があるかないかなどを伝えて診察を受けてくださいね。
食事を中心に犬の生活環境を見直す
血便の対処法として、犬の生活環境の見直しも挙げられます。
食べ過ぎや体に合わないものを食べたことにより血便が出てしまう場合もあるため、血便が出る直前に普段と違うフードやオヤツを食べた場合は元のものに戻すなど、対策をしましょう。
また愛犬にストレスがかかっていないか環境を見直すことも大切です。
犬にとってリラックスできる環境かどうかしっかり観察し、対策できる部分は工夫するとストレスの軽減につながります。
まとめ
今回は血便の特徴や原因、考えられる病気や対処法について解説しました。
血便は多くの病気に現われる症状のひとつで、はっきりと思い当たることがなければすぐに原因の特定はできません。
愛犬に血便が見られたら、長く様子を見ずに動物病院へ連れて行きましょう。
生活環境の見直しを定期的に行い、血便を出さない環境作りも必要です。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
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