モップのような被毛のコモンドールってどんな犬種?特徴的な被毛の理由は?
コモンドールは、その特徴的な風貌から知る人ぞ知る犬種となり、アメリカのミュージシャンであるベック・ハンセンのアルバム『ODELAY』のジャケットにも登場しています。一方で飼育環境や被毛のケアなど、初心者にとっては育てるのが大変困難な犬種でもあります。
まずはコモンドールが特徴的なドレッドスタイルになった歴史的な背景を見ていくことで、徐々に犬種の特徴・性格・育て方のコツなどの理解を深めていきましょう。
コモンドールの名前の由来
コモンドールという犬種名は、共に生活してきた遊牧民クマン人の犬という言葉に由来するという説や、牧羊犬のリーダーであるという意味のハンガリー語「コマンダー」という説がありますが、いずれもはっきりしたことは分かっていません。
はっきりとした事実として残っているものでいうと、コモンドールという名前が、1544年に書かれたハンガリーの書物に登場していることが有名です。
コモンドールの歴史は?
コモンドールは、ハンガリー原産の犬種で、英語で「Komondor」、ハンガリー語でも「Komondor」と表記します。その特徴や性格から、育てる上では他の犬種と同様に注意すべき点が多くありますが、まずは特徴的な被毛に持つことにもつながった歴史的な背景を追ってしましょう。
遊牧民族と共に西へ西へ
コモンドールの歴史を語る上では、10世紀頃にまで遡る必要があります。
当時、カザフスタン・ウズベキスタンなどの中央アジア地域の家畜を追って生活していたトルコ語を話す遊牧民であるクマン人(古代マジャール人とも言われます)たちは、コモンドールの祖先と共に暮らしを送っていましたが、モンゴル人たちの勢力拡大によって徐々に西へと移動を続けることになりました。
そして、その移動の度に、コモンドールの祖先たちはその土地にいた牧羊犬たちと交雑を繰り返しながら、少しずつ姿形を変え、500年以上もの間、牧羊犬としてクマン人のもとで活躍をしてきたと言い伝えられています。
山脈に定住、身体を守るため逞しい被毛へ
移動を続け、ついに11世紀頃にはハンガリー国境にまでたどり着いたクマン人たちは、13世紀にはチェコ・スロバキア・ルーマニアにまたがるカルパチア山脈エリアに定住するようになりました。そして、山脈の過酷な気候や羊たちを襲う獣から身体も守れるようにと、選択繁殖を繰り返し、その被毛が分厚く固くなるようにと進化を目指していきました。
また、体格に関しても羊の群れに紛れ込ませることを目的に、その土地で飼育されていた「ラッカ羊」に似せられたと考えられており、15世紀頃には現在の風貌に近い形になったとされています。
優秀なガーディアン・ドッグであり国宝
コモンドールは牧羊犬の数ある仕事の中でも羊を追うのではなく警護を任されていたことから、都市は郊外で番犬としても重宝されるようになり、1937年にアメリカケネルクラブ(AKC)によって公認されています。そして2004年にはハンガリーで国宝として指定される等、ヨーロッパで多くの愛好家たちに愛される犬種となっていきます。
日本においては、2006年に1度だけジャパンケネルクラブの発表する犬籍登録頭数でその名をつらねていますが、その後は登録が見られない大変珍しい犬種となっています。
コモンドールの外見の特徴
コモンドールの大きな特徴は、やはり「モップ犬」と呼ばれる理由にもなっている、ドレッドヘアのような被毛ですよね。外見の特徴などを見ていきます。
コモンドールの特徴的な被毛
コモンドールの被毛は二重構造で、羊のようなやわらかい毛(アンダーコート)とフェルトのような粗い毛(オーバーコート)が縄状のようにもつれて「コード」と呼ばれる毛束になります。そのため、毛が抜けても他の毛と束になっているため、抜けていることに気づかないことがほとんどです。
子犬の頃はカールした被毛ですが、2~5年の年月をかけてその風貌を完成させます。カラーはアイボリー1色のみで、モップのような毛質から汚れやホコリなどにより汚れやすいので注意が必要です。なお、水を含むと乾くのに時間がかかるため、海やプールなどの水遊びは不向きと言えます。
【番外編】コモンドールとプーリーの違い
コモンドールとよく似た外見的特徴を持つ、プーリーという中型の犬種がいます。実は犬種としての歴史はほとんど同じで、クマン人がハンガリーに持ち込んだと言われていますが、個体の大きさや毛色によってコモンドールと区別されていた可能性があります。
コモンドールとプーリーの大きな違いは、まず身体の大きさです。コモンドールは羊などをオオカミなどの害獣から警護し、守る役目をしていたことに対し、少し身体の小さい中型犬のプーリーは羊を追い、統率する役目を担っていたと伝えられています。
また、プーリーは白い羊を追っていて逆に目立つように黒い毛のコが重宝されたと言われており、現在も黒毛のコが多くなっています。
コモンドールの性格
コモンドールは、牧羊犬として生活していたため仕事熱心であり、物静かで優しい性格をしています。一方でリーダー気質であるためか、警戒心が強く攻撃的な一面もあります。もちろん性格は個体により千差万別ですが、トラブルを引き起こさないためにも犬の性格の傾向を理解しておきましょう。
警戒心が強く攻撃的な一面も
番犬として活躍していたため、警戒心が強く、向かってくる人や動物に対し攻撃的になる面もあります。攻撃力が高く、少し目を離しただけで相手に大けがを負わせてしまう可能性がありますので、愛犬の行動には注視しておく必要があります。
また、トラブルを引き起こさないためにも、飼い主がリーダーという上下関係をしっかり築き、コントロールできるようにしつけを行なう必要があります。
物静かで優しい性格
コモンドールは通常、物静かで優しい性格をしています。牧羊犬として羊などの家畜を管理していたため、飼い主に忠実な犬でもあります。しかし支配的な面があるため、飼い主と認めてもらうのが大変で、初心者には不向きな犬種と言われています。
コモンドールの寿命
コモンドールの寿命は、およそ10~12歳と言われています。
特徴的な被毛によって、お手入れが大変難しいため、皮膚疾患を発症するコが多いようです。また、頭の毛が伸びると目に入り眼疾患を引き起こしたり、垂れ耳で耳の中が蒸れることにより外耳炎などを引き起こす場合もあります。
コモンドールの基本的な育て方
コモンドールを飼育する際には、環境や運動、しつけ、ケアなど様々な点で網羅しておく必要があります。ちょっとした不満でもストレスが溜まり反抗的になったり、問題行動を起こしやすくなりますので、快適な生活環境を提供できるよう心がける必要があります。
ケア|手指を使ってやさしくケア
コモンドールの被毛のケアは、一般的な犬と違い、ブラシやコームでのケアができません。日頃のケア方法として、指でブラッシングするように無駄毛などを取り除きます。
コードがもつれていたら直し、汚れた毛などはカットして清潔な被毛を保つようにします。シャンプーは感想まで含めると丸一日かかるといわれており、犬への負担からも臭いや汚れがひどくない限り数か月に1回~1年に1回程度で十分と言われています。
しつけ|飼い主さんがリーダーになれるように
コモンドールはリーダー気質のある犬種ですので、相手を支配しようとする性質があります。上下関係を上手く築けないと飼い主をリーダーと認めてくれない場合があり、指示に従ってもらえません。
賢い犬種ですので、子犬の頃からメリハリのあるコミュニケーションを心がけ、主従関係を築いていく必要があります。運動量の多い犬種ですので、ドッグスポーツなどの運動を利用してしつけを行うのも一つの手段かもしれませんね。
運動|牧羊犬ゆえ運動量は多め
コモンドールは大型の牧羊犬ですので、運動量は多く必要で、毎日の散歩は1日2回、1回1時間程度が目安といわれています。
活発ですので、ドッグランや公園など適度に動き回る事のできるスペースで自由に運動するのも大切です。 運動不足はストレスに直結しやすいので、しっかり運動の時間を取り入れる必要があります。
環境|高温多湿は苦手。涼しさをキープ
コモンドールはハンガリーの山間で生活していた犬種ですので、非常に寒い環境に耐えられる毛質をしています。逆に日本の高温多湿の気候は、コモンドールにとって不向きな環境となりますので、日本での飼育を検討する場合は、しっかりと対策を取る必要があります。室内での飼育は当然のことで、室温を22度以下に保つことが求められます。
コモンドールと過ごす幸せな時間
コモンドールは日本の高温多湿の環境は負担が大きく、飼育をする際には22度以下の室内で飼育することが求められます。また、しつけも愛玩犬として可愛がるだけでなく、上下関係をしっかり築きコントロールできることが重要になります。 独特な被毛ゆえケアが難しいため、愛情をもって生涯育てられるのかをよーく考えてから迎える必要があります。
不適切な飼育環境は愛犬のストレスになったり、病気を引き起こしたりしますので、幸せな時間を過ごすためにも 必ず事前に検討するようにしてくださいね。
この記事のライター
ずーこ
動物全般が大好きで現在は猫を飼ってます!犬もだいすきなのでpetanでは犬に関する様々な情報を発信していきたいと思います!!