鳥猟犬の種類って?4つの役割と代表的な犬種たち
「鳥猟犬(ちょうりょうけん)」という言葉を聞いたことはありますか?多くの狩猟犬の中で、鳥をターゲットにした猟を行う際に活躍する犬たちのことを指し、現在、JKCに登録されている犬種は10のグループに分類されています。その中で、鳥猟犬は第7グループと第8グループに所属し、31犬種が登録されています。ガンドッグ、バードドッグとも呼ばれる鳥猟犬は、人間との共同作業を好む犬種でもあります。今回は、鳥猟犬の性格、役割そして代表的な犬種をご紹介します。
鳥猟犬の起源と歴史
人間は太古の昔から、狩りをして食料を調達してきました。そしてそのパートナーともなるのが犬だったのです。人間が弓と槍で狩りをしていた時代、最も古い猟犬種とされているサイトハウンド種は、視覚と脚力で獲物を捕らえる役割を果たしていました。やがて、銃を狩猟に使うようになると、キジや鴨が狩猟のターゲットに加わります。最も古い記録では、12世紀頃にはすでに犬とともに鳥猟を行っていたようです。
やがて銃を使った猟が定着すると鳥猟は、イギリスの貴族や裕福な階級の人々のスポーツとして広まり、犬はハンターの良きパートナーとして活躍するようになったのです。そして、狩猟のスタイルに合わせて、犬種の品種改良が重ねられ、現在の鳥猟犬が誕生したのです。
人間との関わり
狩猟犬の中でも、追跡し、追い詰め、しとめる役割を果たす獣猟犬やテリアと違い、主役は常にハンターであり、ハンターの指示に従って働くことが求められたのが鳥猟犬です。
鳥猟犬は、ハンターが銃で鳥を撃ってしとめる手伝いをします。その役割は犬種ごとに異なり、ポインターやセッターは、鳥を見つけたら伏せ(セット)をして、鳥がいることをハンターに教えることが仕事で、ポイントドッグとも呼ばれています。また、スパニエル種はフラッシングドッグと呼ばれ、鳥を脅かして飛び立たせ、その居場所をハンターに教える役割を担っています。レトリバーたちは、撃ち落とされた鳥を優しくくわえて持ってくるのが仕事です。
通常は役割分担が決まっている鳥猟犬ですが、ハント、レトリープ、ポイント全てをこなすHRP犬種と呼ばれる万能な鳥猟犬もいます。
鳥猟犬の性格と身体的な特徴
ポインター、セッター、スパニエル、レトリバーと一見すると全く異なる犬種のようですが、すべてハンターのために働くことが大好きな鳥猟犬。そのため、どの犬種も訓練性が高く、人間が大好き、攻撃性の低さが特徴です。
身体的な特徴・得意な分野
キジや鴨、アヒルなどの狩猟が主な目的の鳥猟は、水辺が主な猟場です。水場に隠れている鳥を見つけたり、水辺を走り回って鳥をおびき出したり、水の中に撃ち落とされた鳥を回収したりと、犬たちにとっての仕事場は水場や水中となります。そのため、泳ぎが得意であることが鳥猟犬の大きな特徴です。
狩猟は冬に行われることが多いため、厳しい寒さと冷たい水の中でも耐えられる保温性の高いダブルコートで水を弾く性質の被毛、足先には泳ぎやすいように水かきがついていることが、鳥猟犬の身体的な特徴です。また、レトリバー種は撃ちおとした鳥を噛み砕くことなく優しくそっとくわえられるソフトマウスを持っていることも大きな特徴です。
性格の特徴
鳥猟犬に最も求められる性格は、ハンターとの協調性です。多くの犬がイギリス原産ということもあり、ハンターの求める性格に改良されたことも鳥猟犬の特徴と言えます。犬種は異なりますが、鳥猟犬の代表的な性格は、人間との共同作業が大好き、指示を待つことができる我慢強さ。また、猟犬ながら攻撃性の低さも鳥猟犬の特徴です。
鳥猟犬グループに属する代表的な犬種たち
鳥猟犬はその役割によって、鳥の居場所を教えるポイントドッグ、鳥を飛び立たせるフラッシングドッグ、鳥を回収するレトリバー、1頭で3役をこなすHPRと4種類の犬種がいます。4種類の代表的な各犬種をご紹介します。
ポイントドッグ:イングリッシュ・ポインター
イギリスが生んだ傑作犬種のひとつと言われるイングリッシュ・ポインターは、しなやかで引き締まった筋肉質の体と抜群の運動能力、耐久力が特徴です。鳥を見つけると、片足を上げてここにいる(ポイント)とハンターに教えることから、この名称がつけられました。世界各国で人気の鳥猟犬です。
ポイントドッグ:イングリッシュ・セッター
銃を使った猟が普及したことからブームとなったイギリス原産の犬種で、15世紀にはすでに猟犬として活躍していたという歴史がある鳥猟犬の中で最も古い犬種です。優雅な外見と狩猟欲が強く、子犬の頃から鳥を見ると興味を示す性質が特徴です。鳥の居場所を伏せ(セット)して教えることから、セッターと名前がついています。
フラッシングドッグ:イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
中世の英語でスペインという意味を持つスペイン系の鳥猟犬がスパニエル種です。イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、そんなスパニエル種の中で最も足が長く、バネのある脚力とスピードの速さからスプリンガーと名付けられました。狩猟能力が高く水辺の草むらに隠れている鳥を飛び立たせ、ハンターに居場所を教えるだけではなく、撃ち落とした鳥の回収までをこなす有能な鳥猟犬です。
レトリバー:ラブラドール・レトリバー
レトリバーは、撃ち落とされた鳥を優しくくわえて回収してくる役目を持つ鳥猟犬です。6犬種あるレトリバー種の中で、類まれな知能を持つ犬種がイギリス原産のラブラドール・レトリバーです。オン・オフのスイッチの切り替えが自らできる知能の高さとウォータードッグとしての運動能力の高さ、優しく温和で従順な性格から鳥猟犬としてだけではなく、盲導犬、麻薬探知犬などあらゆる使役犬として活躍しています。
HPR:ワイマラナー
1830年代にドイツのワイマール宮廷で飼育されていたことから名がついたドイツ原産のワイマラナー。このワイマラナーをはじめとするHPR犬種はポインター・セッターグループに分類されている犬種です。HPR犬種とは、ハント(狩る)、ポイント(鳥を見つけハンターに教える)レトリーブ(回収)の3役をこなせる犬種のことで、ワイマラナーは特に嗅覚に優れ、水中での作業能力も得意、訓練性が高いことが特徴です。
鳥猟犬グループの犬たちは家庭犬としてもおすすめ
鳥猟犬は、獲物をしとめるのではなく、ハンターのパートナーとして仕事をする犬種です。また、それぞれの猟場に合う能力やハンターの求める体型や性質など、さまざまな要求に合わせて品種改良を重ねられた犬種も多くいることも鳥猟犬グループの特徴です。
そのため、人間が大好きで争いごとは好まない、協調性に富み、訓練性能も高いと家庭犬に向いている性質を持つ犬種が属しているのがこの鳥猟犬グループだと言えます。犬種によって異なりますが、多くの鳥猟犬たちは、家族に優しく温和なため、小さな子供がいる家庭にもおすすめです。
鳥猟犬は優しいけれどたくさん運動させてあげることが大切
家庭犬として最適な性質を持つ鳥猟犬たちですが、どの犬種も高い運動能力を兼ね備えています。そのため、運動不足による肥満や病気などを発症することが多いのもこのグループの犬たちなのです。特に、レトリバー種は、食欲の点でも勝っているため、運動不足による肥満が大きな問題となっています。温和で協調性が高くがまん強い鳥猟犬たちですが、運動不足は大きなストレスとなります。鳥猟犬と暮らすことを考えている場合は、彼らに見合っただけの運動ができる環境を整えてあげることがとても大切です。
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この記事のライター
nao
「愛犬の気持ちを理解したい」「寄り添ったコミュニケーションを取りたい」という思いからドッグライターとして犬に関する知識を学び、発信しています。愛犬の笑顔を守るために、そして同じ思いを抱く飼い主さんのために、有益な情報を発信していけたらと思っています。
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