犬の避妊手術の費用はいくらかかる?メリット・デメリットも紹介
メス犬を飼っていると「避妊手術」について悩む飼い主さんは多いです。
「手術を受ける時期はいつがいいの?」「費用はどれくらい?」「そもそも本当に避妊手術はするべき?」と不安だらけでなかなか行動に移せない飼い主さんも多いでしょう。
この記事では、避妊手術に関するメリット・デメリットや手術を受ける適切な時期、費用について解説します。
犬の避妊手術とは
犬の避妊手術とは、メス犬の子宮や卵巣を取る手術です。
避妊手術を受けることで多くのメリットやデメリットがあります。
飼い主さんとしては、まず避妊手術を受けるか受けないかを考えなければいけません。
しかし、飼い主さんのなかには「手術内容がわからず不安」「本当に卵巣や子宮を取ってもいいの?」と避妊手術に不安を抱いている方もいるでしょう。
そんな不安を解決するために、避妊手術のメリットやデメリット、時期や手術方法、費用などについて詳しく解説していきます。
ただし、必ず避妊手術をしたほうがいいというわけではありません。
飼い主さんと愛犬それぞれにとってのメリット・デメリットを比較しながら読み進めてみてくださいね。
犬の避妊手術のメリット
犬の避妊手術のメリットは、以下の4つです。
- 発情のストレスを軽減できる
- 生理トラブルに悩まなくなる
- 望まない妊娠を防げる
- 病気を予防できる
順番に見ていきましょう。
発情のストレスを軽減できる
避妊手術をすることにより、発情のストレスを軽減できます。
発情サイクルは生後6,7カ月から始まり、その後6~10カ月ごとに発情を繰り返します。
犬は人間と違って閉経がないため、発情は一生涯続きます。
発情中のメス犬はホルモンバランスが変化するためストレスを感じますが、避妊手術をおこなうと発情がなくなるため、ストレスの軽減になります。
生理トラブルに悩まなくなる
避妊手術をすると、発情中のトラブルに悩まなくなります。
発情中のメス犬には以下のような症状が出ます。
- 落ち着きがなくなる
- 元気や食欲がなくなる
- ほかの犬やぬいぐるみにマウンティングする
上記のほかにも発情前期に起こる発情出血や、発情中の免疫力低下による細菌感染のリスクがあります。
避妊手術をすれば、これらのトラブルの心配から解放されるでしょう。
望まない妊娠を防げる
避妊手術をすることで、望まない妊娠を防げます。
発情中のメス犬はオスを引きつけるフェロモンを発します。
そのため、散歩やドッグランなどで飼い主さんが気がつかないうちに、オスと交配して望まない妊娠をしてしまうケースも少なくありません。
愛犬が妊娠し子犬を産むことは想像すると可愛いですが、その後の里親捜しや子犬育ては大変です。
愛犬に子供を産ませるつもりがないのであれば、避妊手術を検討しましょう。
病気を予防できる
避妊手術は卵巣や子宮を摘出する手術のため、卵巣や子宮に関わる以下の病気を予防できます。
- 卵巣腫瘍
- 子宮腫瘍
- 子宮蓄膿症
- 乳腺腫瘍 など
ただし、この後の適切な時期でも解説していますが、乳腺腫瘍に関しては予防効果のある時期がデータとして示されています。
乳腺腫瘍の予防として避妊手術を考えている飼い主さんは、早めの検討が必要です。
犬の避妊手術のデメリット
メリットが多い避妊手術ですが、もちろん以下のようにデメリットも存在します。
- 体型・体質が変化する
- 子供が作れなくなる
- 全身麻酔や糸アレルギーのリスクがある
- ドッグショーへの出場資格がなくなる
順番に紹介します。
体型・体質が変化する
避妊手術を受けることで、以下のように体型が変わったり体質が変化したりする場合があります。
- 太りやすくなる
- 毛艶が悪くなる
- 尿失禁が起こりやすくなる
避妊手術によりホルモンバランスが変化するため、避妊手術を受けたメス犬は太りやすくなる傾向にあります。
餌の量を3割程度減らす必要があるともいわれているので、餌のカロリーや量の見直しが必要です。
また、同じくホルモンバランスの変化により、毛艶が悪くなる犬もいます。
特にダックスフンドは毛艶が悪くなりやすい傾向にあるため、手術を検討する際に考慮すべきポイントでしょう。
大型犬は避妊手術により、尿失禁が起こりやすくなる場合があります。
原因ははっきりと解明されていませんが、避妊手術により性ホルモンの分泌が止まるので、尿道の筋肉が弱くなってしまうためだと推測されています。
子供がつくれなくなる
避妊手術を受けると卵巣や子宮を摘出してしまうため、子供が作れなくなります。
一度摘出した臓器は元には戻りません。
将来愛犬に子供を産ませたいのかどうか飼い主さんと家族でしっかりと話し合い、手術を受ける前に結論を出しておきましょう。
全身麻酔や糸アレルギーのリスクがある
避妊手術は全身麻酔下でおこなうため、麻酔によって死亡してしまう場合や、糸アレルギーが出てしまうリスクがあります。
全身麻酔のリスクとは、全身麻酔をかけることによって起こる副作用をさします。
代表的な症状は内蔵機能の低下や血圧の低下、心不全、呼吸困難などです。
避妊手術は比較的短時間で済むうえ、健康体の若い犬に対し行います。
そのため、麻酔によって死亡する確率はかなり低いといえますが、0%ではありません。
どうしても不安が残る場合はかかりつけの獣医師と話し合い、納得したうえで手術へと進みましょう。
また手術で使用する糸に反応し、肉芽腫とよばれるしこりが発生するアレルギーが出る場合もあります。
糸アレルギーに関しても、現在は糸が身体に残らない手術方法やアレルギー反応の少ない糸が使われることが多いです。
そのため、発生確率は高くありませんが、納得いくまで獣医師の意見を聞いて判断しましょう。
ドッグショーへの出場資格がなくなる
避妊手術をするとドッグショーへの出場資格がなくなります。
ドッグショーはその犬種の標準にいかに近いかを競う競技のためです。
ドッグショーに出るためにはさまざまな条件があり、そのなかの一つに繁殖能力があることも含まれます。
ドッグショーへ出場を考えている飼い主さんは、避妊手術を受けると出場できなくなることを事前に知っておきましょう。
犬の避妊手術の時期
続いて避妊手術を受ける適切な時期について紹介します。
適切な時期
避妊手術を受けるのに適切な時期は、7カ月から2才半です。
時期については獣医師や飼い主さんの考え方に違いはありますが、手術に耐えることができるくらいしっかり成長してから行う場合が多いでしょう。
また避妊手術のメリットである病気、特に乳腺腫瘍の予防を目的に行う場合は、2才半までに受けておくのがおすすめです。
避妊手術を受けた年齢と乳腺腫瘍の発生確率に関してはは以下のようなデータがあります。
時期 | 乳腺腫瘍の発生率 |
初回発情前 | 0.08% |
1回目発情後 | 8% |
2回目発情後 | 26% |
3回目発情以降 | ほとんど予防効果なし |
必要なワクチンや狂犬病注射を済ませた後は避妊手術と流れを組む動物病院も多いです。
そのため、犬を飼い始めたらすぐに避妊手術の時期についても家族で話し合っておくとよいでしょう。
発情期間中は手術できない
適切な時期について述べましたが、発情期間中は手術ができません。
発情により子宮が大きくなることで手術の傷が大きくなり、子宮も腫れているため出血が多くなってしまうためです。
獣医師によっては発情中でも避妊手術をするところがありますが、発情がきたら手術の日程が決まっていたとしても無理して行う必要はありません。
延期して1カ月程度は様子を見て、再度手術日を設定しましょう。
犬の避妊手術の方法・手順
犬の避妊手術は「卵巣摘出術」「卵巣子宮摘出術」があります。
それぞれの方法と手術前から手術後までの流れについて順番に見ていきましょう。
手術方法
犬の避妊手術は大きく分けて「卵巣摘出術」と「卵巣子宮摘出術」の2つに分類できます。
卵巣摘出術
卵巣摘出術とは卵巣のみを取り出す手術方法です。
卵巣摘出術の場合、腹腔鏡手術を行うことが多く卵巣子宮摘出術よりも傷が小さく手術時間が短い傾向にあり、愛犬への負担を減らせます。
子宮に関する病気予防も、卵巣子宮摘出術で子宮を一緒に取りだした場合と病気の発生率はほとんど差がないとされ、現在注目されている方法です。
卵巣子宮摘出術
卵巣子宮摘出術とは、卵巣と子宮をすべて取り除く手術方法です。
以前は避妊手術といえば卵巣子宮を取り除くこちらの方法が主流でしたが、開腹手術が必要で犬に大きな負担をかけてしまいます。
そのため現在は卵巣摘出術をメインに行い、飼い主さんの希望によって子宮も取るという病院も少なくありません。
上記の方法と比べて子宮に関する病気は必ず予防できるため、どちらがよいかよく検討しましょう。
犬の避妊手術の手順
手術手順は以下の流れで行われます。
- 予約
- 術前検査
- 手術
- 手術後
①予約
手術には必ず予約が必要です。
多くの動物病院では一度動物病院へ行き、犬の体調や様子を見てから予約を入れます。
まずは病院へ電話し、避妊手術を考えている旨を伝えましょう。
術前検査
術前検査は手術をするにあたって体調は悪くないか、麻酔に耐えられるかを判断するため行います。
問診や医師の診察、血液検査、レントゲン、エコーなどの検査があります。
まだ若い犬の場合は問診と診察で健康と考え、血液検査のような一部の検査を省略する病院も多いです。
飼い主さんの希望次第で詳しい検査を行う場合もあるので、受けたい検査がある場合や不安なことがあれば、獣医師に相談してください。
手術
手術当日は絶食をして、胃の中を空にした状態で連れて行きます。
前日の夕食を食べた後は絶食、手術時間の4時間前から絶水など、事前に獣医師によく確認しておきましょう。
もし食べてしまった場合、麻酔の覚め際に胃の中の食べものが逆流して肺に入り、細菌が繁殖してしまう誤嚥性肺炎を起こす危険があります。
愛犬がなにも食べないように気をつけてください。
手術後
術後は安静を保ち、ほかのペットや子供との触れ合いも極力少なくなるよう工夫しましょう。
傷口に包帯を巻いたりエリザベスカラーを付けたりして傷口を保護してくれる病院もありますが、なにもしない病院もあります。
麻酔の覚醒状態や傷口確認のため、手術後に一泊するところが多いでしょう。
少しの変化でも連絡してくれる病院もあるため、手術当日から翌日まで飼い主さんはすぐに連絡を取れるようにしてください。
また、手術は犬に負担をかけるため、術後に食欲や元気が落ちてしまう犬もいます。
定期的に傷口のチェックがあるので、気になることがあれば相談しましょう。
犬の避妊手術にかかる費用
最後は犬の避妊手術の費用についてです。
犬の大きさによって麻酔の量が変わってくるため、犬種や体重で費用が変わってくる病院もあります。
ここでは大型犬と小型犬に分けて解説します。
大型犬
大型犬の避妊手術の相場は3~5万円です。
大抵は術前検査は別料金となる場合が多いですが、手術日の診察や術後一泊する場合の料金、術後に付ける包帯やエリザベスカラーは手術の料金に含まれているか確認しておきましょう。
小型犬
小型犬の避妊手術の相場は2~3万円です。
動物病院は獣医師が自由に診察や手術費用の決められる自由診療制をとっているため、相場はかなり広いものとなります。
ワクチン時や電話などで、あらかじめ手術費用を聞いておくといいでしょう。
ペット保険は適用されない
避妊手術にペット保険は適用されません。
ペット保険は病気やケガをした場合などの治療費に使われることを目的としているためです。
避妊手術と同じく予防目的のワクチンや狂犬病注射もペット保険の適用とはならないため、注意しましょう。
助成金・補助金
ペット保険は適用されないものの、住んでいる地域によって助成金や補助金の制度がある場合があります。
例として京都府京都市を見てみましょう。
例:京都府京都市
京都府京都市では飼い犬、飼い猫の避妊手術や去勢手術を行う飼い主さんに対し、手術費用の補助金が交付されます。
金額は京都市から2,500円、京都市獣医師会から2,500円の計5,000円です。
補助金を利用するには京都市内で犬の登録と狂犬病注射を済ませている条件を満たし、京都市獣医師会会員の動物病院窓口で申請する必要があります。
詳しくは京都市のホームページを見てみてください。
上記のように申請すれば補助金が出る地域も多いので、お住まいの地域のホームページを見て確認してくださいね。
まとめ
今回は犬の避妊手術についてメリットやデメリット、手術方法や費用を紹介しました。
避妊手術は体型・体質の変化、麻酔や糸アレルギーのリスクもあり、飼い主さんとしては受けるべきか受けないべきか悩んでしまいますよね。
リスクはありますが、望まない妊娠を防いだり病気の予防ができたりと、メリットが大きいのも事実です。
納得できるまで獣医師とよく話し合い、受けると決めたら体調を万全にして臨みましょう。
助成金を利用して、費用負担が減らせるかどうかも調べてみてくださいね。
この記事のライター
nana
泳ぎも走りも得意な運動神経抜群のゴールデンレトリバーと暮らしています!今は愛犬とタンデムサーフィンの練習中。いつまでもアクティブに楽しく過ごせるような情報を発信していきます。