犬の唾液には重要な役割がある!犬の唾液の機能や、病気、唾液が多く出る犬種などご紹介
美味しいものを目の前に置かれるとポタポタ、ママ大好きだよと顔をペロペロ、ある時にはよだれともなる犬の唾液。その昔、傷の治癒に役立つとされた犬の唾液ですが、本当に犬からペロペロ舐められても大丈夫なのでしょうか?今回は、犬にとっても人間にとっても、健康のバロメータとも言われる唾液についてその役割、機能から多い時に考えられる病気や犬種による違いなどをご紹介します。
犬の唾液の役割は?
犬の唾液には、犬の健康を維持するためのさまざまな役割があります。犬の唾液には、虫歯予防や傷を治すホルモンなど、12種類のホルモンと20種類の酵素があるとされています。まだ未解明の部分もありますが、身近な役割からご紹介します。
犬の唾液は虫歯を防ぐアルカリ性
私たち人間の唾液は、ph6.8~7.0で中性?弱酸性をキープしていますが、糖分を摂取することで酸性に傾きます。そのため、直後の歯磨き位よって酸を中和し、虫歯を予防しています。
これに対して、犬の唾液は約ph8.5とアルカリ性。口の中が酸性に傾くと歯のエナメル質を溶かしてしまうため、虫歯になりやすいのですが、犬の唾液はアルカリ性のため、口の中が酸性に傾くことを防いでいます。そのため、犬は虫歯になりにくいのですが、このアルカリ性の唾液は、石灰化を起こしやすく、歯垢がたまりやすいのです。歯垢がたまりやすい事は歯肉炎や歯周病の原因ともなります。犬にも歯磨きなどの口腔ケアが必要だということがわかりますね。
傷を治す物質が含まれている
犬が傷口をペロペロと舐めているのを見たことはありませんか?自分の傷口だけではなく、他の犬の傷口や飼い主の傷口まで、ペロペロしようとします。犬の唾液には、タンパク質の一種であるヒスタチンという物質が含まれています。このヒスタチンは、抗真菌活性・抗菌活性を持ち、傷をふさぐ役割があることが、細菌の研究で明らかになっています。この成分は、人間の唾液にも含まれているもので、傷口を無意識に舐める事は理にかなっていることになるのです。
犬の唾液は清潔?感染は大丈夫?
犬が私たちの顔や手をペロペロと舐めるのは、愛情表現であると言われています。犬に舐められるのは、あまり気持ちのいいものではありませんが、愛情表現と言われるとついつい許してしまいがち。しかし、犬に舐められたことによって感染症を引き起こしたケースもあるので注意が必要です。
犬の唾液は細菌の巣窟
愛犬になめられたことが原因で重度の感染症を発症し、手足を失った男性や女性が死亡したというショッキングなニュースがアメリカで報じられたことをご存知ですか?犬の唾液には、人間にも感染する細菌や寄生虫が多く含まれていることを認識しておく必要があります。
人獣共通感染症を引き起こす細菌とは
犬に噛まれた経験がある方ならご存知だと思いますが、犬に噛まれて病院へ行くと破傷風の注射を打つように医師から勧められます。これは、土の中にいる破傷風菌への感染を防ぐために行われます。このほかにも、犬の唾液には人間に悪影響を及ぼす菌がたくさん存在しています。
アメリカで死者まで出した細菌とは
アメリカで話題となった細菌はカプノサイトファーガ・カニモルサスというものです。これは、犬や猫の唾液に常に存在している細菌で、多くの場合は重症化しませんが、高齢者や基礎疾患がある場合は注意が必要です。
人間がお腹を壊す細菌サルモネラ菌、カンピロバクター、大腸菌なども
犬は、人が感染すると下痢などの腸疾患を発症する腸内細菌を持っています。通常では唾液に存在しない細菌ですが、犬が自分のお尻を舐めることで唾液に腸内細菌が移り、舐められることによって感染する場合もあります。
パスツレラ菌も犬の唾液の常在菌
感染すると皮膚症状、呼吸器症状を発症することで知られていたパスツレラ症ですが、近年の調査では骨髄炎、外耳炎、敗血症、髄膜炎など全身重症感染症が現れることがわかり、死亡例も報告されています。
犬の唾液の機能を知っておこう
私たち人間と同様に犬の唾液にも、食物を今で届けるための潤滑剤の機能があります。しかし、人間の唾液と同じ機能もあれば大きく違う特徴もあります。犬の唾液の機能と人間の唾液の機能を比較してみましょう。
消化酵素がないことが特徴
人間の唾液にはアミラーゼと呼ばれる消化酵素が含まれ、咀嚼した食べ物を分解し消化を助ける働きをしています。しかし、犬の唾液には、このアミラーゼが含まれていません。犬の場合は、強力な胃液が消化を助ける働きをしているため、食物を胃に運ぶ働きだけをしていることになります。
犬の唾液の分泌量は体調と関係している
美味しいものを目の前にした時に、ポタポタとよだれが出ていませんか?犬の体調が良い時には、サラサラした唾液が大量に出ます。これに対して、粘り気のあるよだれが出ている時には、唾液の分泌量が少ないと考えます。シニアになって、たくさん水を飲むようになった、ドッグフードが喉に詰まってむせるなどの症状が出ている時は、唾液の分泌量が少なくなっているのです。
また、ストレス状態にある時も、唾液の分泌量が少なくなります。これは、私たち人間が緊張状態にある時に、口がカラカラに渇くのと同じです。唾液が少なくなり口の中が乾いてくると、細菌が繁殖しやすくなります。また、免疫力の低下にもつながるのです。
犬の唾液は体温を下げる機能がある
人間は汗をかくことで体温を下げることができますが、犬は汗をかくことができません。そのため、暑い時にはハァハァとパンティングをすることで体温を下げようとします。ハァハァと息を吐き出す時に唾液が同時に気化し、体温が下がるのです。ただし、あまりに激しいパンティングが続く場合は、体温を下げる機能が追いついていない場合があるので、涼しい部屋に入れる、身体を水で冷やすなどの対処が必要です。
犬の唾液が多いときはどんなとき?
人も犬も交感神経と副交感神経の働きによって唾液が分泌されます。副交感神経が優位となっているストレスがない状態では、サラサラした唾液が分泌されます。また、交感神経が優位となっているストレスがある時は、ネバネバした唾液となります。
唾液が多い時はどんな状態?
結論からいうと、どちらの状態でも唾液は多く分泌されます。美味しい匂いのする食べ物を目の前に置かれた時、暑い時、リラックスしている時などに多く出る唾液は犬にとって正常な反応と言えます。反対に、車酔いなど極度のストレス状態にある時、熱中症、胃捻転、口内の病気、内臓の病気、異物の誤飲など早急な処置が必要な場合もあります。常に唾液の状態をチェックしておくことで、犬の体調変化に気がつくことができます。
唾液が多い犬種がある
犬の唾液量はどの犬種も同じではなく、マズルの形状や犬の大きさによって異なります。大型犬の中でも、唇のたるみが大きい犬種は唾液の量が多くなります。特に、口角があいているゴールデンレトリバーやニューファンドランド、また短頭種であるボクサー、ブルドック、チャウチャウなどの犬種は唾液量が多いことで知られています。
どんなに可愛くても犬の唾液には要注意
犬が食事時をした後の食器がヌルヌルしていると感じたことはありませんか?このヌルヌル、こすって洗ってもなかなか落ちないのが特徴です。実は、このヌルヌルは、犬の唾液がアルカリ性であることから発生する細胞膜(バイオフィルム)というものなのです。酸性の唾液に比べてアルカリ性の唾液には細菌が繁殖しやすく、この細菌が食器に付着するとバイオフィルムを発生させるのです。私たちに人間にとっては病原菌ともなる細菌も常在している犬の唾液。可愛いからといって過剰な接触は避けた方が賢明だと言えます。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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