【獣医師監修】愛犬のお腹にしこりを見つけたら。考えられる病気や必要な対処法について
愛犬とスキンシップを取っているときに、お腹のしこりを発見して不安になったことはありませんか?様子を見ているとどんどん大きくなってしまったり、悪性腫瘍だった場合には肺やリンパ節などに転移してしまう可能性もあります。
本記事では、犬のお腹にしこりがある場合に考えられる原因や病気、対処法について解説します。
犬のお腹にしこりができた場合に考えられる原因とは
しこりは医学用語では腫瘤(しゅりゅう)と呼ばれるもので「できもの」や「こぶ」「はれもの」「いぼ」と呼ばれることもあります。犬のお腹にしこりがある場合、次のような原因が考えられます。
考えられる原因【1】腫瘍
犬のお腹のしこりで最も注意すべき原因が、腫瘍です。腫瘍には硬いこぶのようなものやブヨブヨとした柔らかいもの、ドーム型のもの、赤くなるものなど様々な形状があります。
見た目だけで良性腫瘍か悪性腫瘍かを判別することはできないので、きちんと動物病院で診察を受けましょう。
考えられる原因【2】感染、炎症などによるもの
感染などが原因で皮膚の炎症が続くと、患部がコリコリと固くなることがあります。また、膿がたまることで膿瘍(のうよう)ができることもあります。
考えられる原因【3】その他
「ヘルニア」と聞くと腰のトラブルというイメージが強いかもしれませんが、犬ではおへそにあたる部分のヘルニア(臍ヘルニア・さいへるにあ)によってしこりが見られることがしばしばあります。また、内股の足の付け根がポコッと腫れている場合には鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)の疑いがあります。
犬のお腹にしこりができた場合に考えられる病気
犬のお腹にしこりができると考えられる代表的な病気といえば、腫瘍です。お腹にできる腫瘍には皮膚にできるものや脂肪組織が腫瘍化したもの、乳腺にできる腫瘍など非常にさまざまな種類があります。また、先述したようにヘルニアなどが原因でしこりができることもあります。
ここでは、お腹にしこりができたときに考えられる病気の一部を、症状別にご紹介します。
カリフラワーのようなしこりができる
乳頭のような見た目のしこりや、カリフラワー状に盛り上がったしこりができるときには、乳頭腫の疑いがあります。
乳頭腫
犬の場合、2つのタイプが知られており、若齢犬に発生する多発型と、高齢犬に発生する単発型があります。
若齢犬に発生するものは「パピローマウイルス」が関与していることが多く、頭部、まぶた、足先、口腔や唇に発生し、多くの場合は数ヶ月で自然に消失します。高齢犬に発生するものにウイルスの関与はほとんど無く、頭部やまぶた、足先、生殖器に多く発生します。
良性なので治療を必要としない場合が多いですが、口の中にできてしまった場合など、生活に支障が出る場合は切除を選択することもあります。
乳腺に沿って、一つもしくは複数のしこりがみられる
犬の左右の乳頭に沿って存在する、乳汁を分泌する分泌組織は乳腺と呼ばれますが、この乳腺組織が腫瘍化した状態が乳腺腫瘍です。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍の発生にはホルモンの影響が大きいと考えられており、避妊手術を受けていない高齢のメス犬に多く発生することがわかっています。
良性腫瘍と悪性腫瘍の割合はほぼ50%ずつで、診断には外科手術、病理検査が必要です。良性の場合、早期に摘出することで経過が良好な場合が多いですが、悪性の場合には再発したり、他の組織に転移することがあります。手術後は補助的に抗がん剤治療や放射線治療が行われることもあります。
おへそにしこりがあり、押すと引っ込む
犬のおへそは胴体の真ん中あたりに位置し、へその場所は毛が薄くなっています。おへその位置にポコッとしこりがある場合は、臍ヘルニアの疑いがあります。
臍ヘルニア
臍ヘルニアはおへその部分の腹筋が閉じておらず、穴が開いた状態となっており、そこから腹腔内の脂肪や内臓が脱出して皮膚の下が膨らみができる病気です。膨らみを押し込むと腹腔内に戻りますが、穴があるので再び出てきます。
通常、痛みなどはなく、子犬の場合は成長に伴い自然に閉じることがあります。穴が大きくて腸が出てくるような状態であれば、早めの手術が推奨されます。
犬のお腹にしこりができた場合の対処法
犬のお腹のしこりに気付いたら、まずはしこりの状態をよく観察しましょう。しこりが悪性腫瘍だった場合には、様子を見ているうちにどんどん大きくなり、肺やリンパ節に転移してしまうこともあります。なるべく早い段階で動物病院を受診しましょう。
対処法【1】しこりの状態や愛犬の様子を観察
しこりを見つけたら、大きさや色、形などをチェックしましょう。しこりの色が黒や赤黒い色の場合や境界が不明瞭でじわじわと周囲に広がっている場合、初めは小さかったしこりが急に大きくなった場合は悪性腫瘍の疑いが強いので要注意です。犬がしこりを気にして舐めていないか、触ったときに痛がらないかなど、愛犬の様子に変化が無いか観察することも大切です。
しこりが複数できていることもあるので、他にもできものがないか、全身を触りながらチェックしましょう。
対処法【2】動物病院を受診する
自宅で観察したしこりの状態や愛犬の様子を獣医師に伝えましょう。ポイントを簡潔に伝えることでスムーズに診療が進み、診断の手掛かりにもなります。
動物病院ではしこりの大きさや周囲の組織との固着性などを確認し、腫瘍であれば原因を特定するために、細胞診と言って細い針を刺して細胞を採取したり、しこりを手術で摘出して病理組織検査に出すこともあります。
臍ヘルニアを治療する場合には、整復するための外科手術が必要です。
しこりは早期発見が大切
犬のお腹にできるしこりは、様子を見ても良い良性の腫瘍から、対処が遅れると転移する恐れのある悪性腫瘍などさまざまです。
しこりは早期発見・早期治療が重要になりますが、犬は全身を被毛で覆われているために、発見が遅れてしまうこともあります。日頃からマッサージなどでスキンシップを取り、愛犬の小さな変化にいち早く気付いてあげられるようにしましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!