【獣医師監修】犬が膀胱炎になる原因は?初期症状と予防方法を解説
皆さんは、犬の膀胱炎についての知識はお持ちでしょうか?人間の膀胱炎については、ご自身や周囲の体験談などで知っている方も多いと思われますが、犬の膀胱炎については聞いたことがない方は多いのではないでしょうか。犬も人間と同じように膀胱炎になります。では、犬は何が原因で膀胱炎になり、どのような症状がみられるのでしょうか。今回は、犬の膀胱炎の原因や症状、治療法・予防法などについて解説していきます。
犬の膀胱炎の初期症状
膀胱炎は、その名のとおり膀胱に炎症が起きる病気です。犬の膀胱炎では、排尿時にさまざまな異常が見られます。
散歩中、犬が知らない間に排尿していたり、自由に庭などでさせているといった飼育方法の場合、犬の膀胱炎にはなかなか気づけず、発見が遅れてしまうことがあります。普段から愛犬の尿の回数や尿の色などをチェックしておくことが大切です。
初期症状とチェック項目
飼い主さんが気づきやすい症状は、血尿や頻尿です。散歩の時におしっこをするポーズは取るものの少ししか尿が出なかったり、何回も排尿したがるといった症状が見られ、動物病院で検査をしたところ病気が判明した、といったケースが多いようです。また、ペットシーツで排尿したときに血がついているといった症状で気付くことがあります。
犬の膀胱炎の主な症状
- 痛みを伴う排尿困難:排尿する時に痛みを感じ、痛みのために犬が鳴くこともあります。一度に少量の尿しか出ません。
- 排尿障害:尿が排出できなくなってしまう症状です。
- 尿が濁っている:膀胱内に炎症が起こっているため、排尿された尿に濁りが見られることがあります。
- 血尿:排尿されたときに血液が混じっていたり、排尿後に陰部に血液が付着していることがあります。
他の犬や人間にうつる?
膀胱炎の主な原因は、尿道から細菌(主に大腸菌)が侵入することによる細菌感染や尿路結石によるものです。膀胱炎を発症した犬から、その症状自体が直接、他の犬や人間にうつる心配はありません。
ただし、膀胱炎の症状の原因となっている基礎疾患が何らかのウイルスや大腸菌以外の細菌感染によるものであった場合、その病原体の種類によっては、他の犬や人間にうつる可能性はあります。
一例として、レプトスピラ感染症が挙げられます。
レプトスピラという細菌は、保菌動物の腎臓に保菌され、尿中に排泄されます。保菌動物は、げっ歯類をはじめ多くの野生動物や家畜、犬、猫などです。
犬同士で感染が起きる可能性もありますが、人間にもうつる可能性はあります。人間の場合は、保菌動物の尿で汚染された水や土壌、あるいは尿との直接的な接触によって経皮的または経口的に感染する可能性があります。(※1)
犬が膀胱炎になる原因は?
犬が膀胱炎になる原因には、細菌感染や膀胱結石、膀胱腫瘍、ストレスなどの要因が挙げられます。
原因|1.細菌感染
犬が膀胱炎を発症する原因の多くは、細菌感染によるものです。この細菌感染による膀胱炎はオスよりもメスに起こりやすい傾向にあります。その理由は尿道の構造の違いにあり、メスはオスよりも尿道と肛門の間の距離が短く細菌などの病原菌が外から入りやすい構造になっています。
通常であれば身体の防御反応により感染を防ぐことができますが、免疫力の低下や陰部を舐めるクセがあるなど、さまざまな理由により細菌の侵入を塞ぎきれなくなったときに感染を起こし、膀胱炎を発症します。
水分摂取量が少ないと細菌感染を起こしやすい
水分を摂取する量が少ないと、必然的に尿の量が少なくなります。そのため、尿が濃くなって排尿回数も減り、膀胱内に尿が溜まっている時間が増えてしまいます。
尿は濃くなればなるほど、膀胱内に滞留する時間が長くなればなるほど、膀胱内で細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎の原因となります。
原因|2.膀胱結石
膀胱内に結石ができると膀胱の粘膜が傷付き、そこから細菌感染が起こることで膀胱炎を発症することがあります。この場合、原因となる結石を排除できない限り、何度も膀胱炎を繰り返すことになってしまいます。
また、結石が尿道に詰まってしまうと体外に排出されるはずの老廃物が体内に蓄積されてしまい、急性の腎障害を引き起こし、尿毒症を発症する危険性があります。
結石には種類がある
結石にはその成分によってさまざまな種類がありますが、犬にできる代表的な尿路結石にはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石とシュウ酸カルシウム結石があります。この2種類の結石が犬の尿路結石の80%以上を占めています。
ストルバイト結石は、食餌療法により尿のpHを整えることで、尿の中の結石を溶かす効果がある程度期待できます。
シュウ酸カルシウム結石は、一旦形成されてしまうと、食餌療法を行っても完全に溶かすことは困難な性質を持っています。ただ、結石を形成しにくくなる効果はあるので、食餌療法を行うメリットはあります。
原因|3.ストレス
人間もそうですが、ストレスは免疫力を低下させることがあります。また、ストレスによりトイレを我慢する、飲水量が減るなどの行動につながる可能性もあります。
犬のストレスの原因には引っ越しなどによる環境の変化、ペットホテルに預けられる、長時間の留守番や運動不足などがあります。
原因|4.膀胱腫瘍
膀胱に腫瘍ができると、腫瘍の影響で排尿障害が起きやすくなる可能性があります。例えば、排尿の際、尿を全て出し切ることができずに尿が残ってしまうことがあります。この残った尿から菌が繁殖し膀胱炎になってしまうことがあります。
かかりやすい犬種や年齢は?
膀胱炎は若齢犬〜高齢犬までかかる可能性のある病気ですが、高齢犬や病気などで免疫力が低下していて細菌感染を起こしやすい犬は、膀胱炎にかかりやすい傾向があります。
また、犬種を問わず発症しますが、膀胱結石ができやすいミニチュア・シュナウザーやシー・ズー、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ダルメシアンなどの犬種は、比較的膀胱炎になるリスクが高いと言われています。
犬の膀胱炎の治療方法
細菌性の膀胱炎の場合は、細菌の種類に合った抗生物質を投与します。
結石が原因の場合は、結石を除去するため結石を溶かす、または形成されにくくなる療法食を与えたり、抗生物質などを投与します。
ほかには、飲水量を増やしたり、ストレスをためないような生活環境を整えることも大切です。
膀胱炎の検査
犬の膀胱炎が疑われた場合、まずは尿検査が必要になります。飼い主さんが採尿することはなかなか難しいのですが、排尿しそうな時にペットシーツを裏返しておくと尿が吸収されず、ツルツルの面に溜まった尿を採取することができます。
液体の状態の新鮮な尿を、きれいなプラスチック容器などに入れて動物病院に持っていくと尿検査を行うことができます。
また、動物病院に、尿を採取するための専用の器具が用意されていますので、それをあらかじめ購入しておくのが一番良い方法と言えるでしょう。
尿検査を行うことで、血尿は出ていないか、結石がないか、腫瘍細胞が検出されていないかなどを調べます。また、腹部レントゲン検査、腹部超音波検査で結石や腫瘍ができていないかなどを調べることもあります。身体の炎症や腎臓への負担が心配であれば、血液検査も実施します。
治療にかかる費用
診察料や尿検査、血液検査、腹部レントゲン検査、腹部超音波検査、抗生物質などの内用薬の費用として、一回の治療で5,000~20,000円くらいの費用がかかると考えられます。
また、膀胱結石が原因の場合は、結石に対応した動物病院専用の療法食を与えたり、場合によっては外科的な摘出が必要になるケースもあり、単純な細菌性膀胱炎よりも高額になる傾向があります。
犬の膀胱炎を予防するには
犬の膀胱炎の予防法には次のようなものがあります。
予防法|1.水分摂取量を増やす
摂取する水分が少ないと膀胱に尿を溜めている時間が長くなり、細菌が増殖する時間を与えてしまいます。水飲み場の数を増やすなどして、水分補給を促しましょう。
ただし、カルシウムやマグネシウムの含有度が高い「硬水」のミネラルウォーターは、結石の原因物質の過剰摂取につながるため、犬に与えないようにしましょう。
予防法|2.排便後は清潔に
犬の膀胱炎は、糞便に含まれる大腸菌が尿道口から侵入して膀胱で炎症を起こすケースが大半になります。
排便後、特にメスで下痢をした後などは汚れを拭き取るなどして清潔に保ちましょう。長毛種の犬は陰部の毛を短く刈っておくとお手入れしやすくなります。
予防法|3.排尿を我慢させない
先述のとおり、排尿を我慢する時間が長くなれば長くなるほど、膀胱内で細菌が増殖してしまいます。
外でしか排泄をしない習慣がついている犬は、散歩の間隔が長くなると排尿を我慢してしまいます。ペットシーツでも排泄できるようにしつけておくと、膀胱炎の予防につながるでしょう。
予防法|4.肥満に注意
肥満になると運動量が減って動きたがらなくなるため、水を飲みに行くことや排泄しに行くことが億劫になります。すると、ぎりぎりまで飲水や排尿を我慢してしまい、膀胱炎を発症することがあります。
おやつの与えすぎや食餌量には注意し、毎日適度に運動させて体重を管理しましょう。
再発する可能性
膀胱炎は、かなり再発しやすい病気です。症状が見られなくなったからといって、獣医師に処方された抗生物質を自己判断でやめてしまうと、膀胱に残っていた細菌により再発することがあります。処方された薬は指示通りに投薬し、完治するまできちんと通院することが大切です。
結石を溶かしたり、結石の再形成を防ぐための療法食を与える指示が出ている場合はその食餌だけを与え、その間ほかの食べ物を与えないよう注意しましょう。ただ、突然フードを切り替えると消化不良を起こすことがあるので、初めは1週間〜10日ほどかけて、徐々に療法食の割合を増やしていくと良いでしょう。
犬の膀胱炎は予防できる病気
膀胱炎はどの犬でもかかる可能性のある一般的な病気です。適切な処置を行うことで治る病気ではありますが、愛犬の快適な暮らしのためにも、まずは発症しないように気をつけていきましょう。
膀胱炎を予防するには、排尿回数を増やすことが大切です。たくさん水を飲むことで膀胱の中の尿は長期間溜まることなく外に出されます。寒い季節は特に飲水量が減ってしまう傾向があるため、積極的にお水を飲ませるようにして愛犬の膀胱炎を防ぎましょう。
また、普段から尿の量や回数、匂いなどに気を付け、膀胱炎になってしまった時には早期に発見できるようにして、疑わしい症状が見られたら、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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